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アマゾン「Alexa」が生成AI対応に進化! 特徴と課題を徹底解説

2025年02月28日 18時45分更新

 アマゾンのパーソナルアシスタントAlexaが、生成AIによる自然会話などに対応する新しい「Alexa+(アレクサ プラス)」に進化します。

 2月26日(現地時間)に、アマゾンがニューヨークで開催した記者発表会で、Alexa+の詳細を深掘り取材してきました。

Alexa

アマゾンがニューヨークで開催したAlexa+の発表会を取材。生成AI対応の新しいパーソナルアシスタントの特徴と課題を解説します

自然会話対応に挑戦を続けてきたAmazon Alexa

 Amazon Alexaといえば、音声操作に対応する「AIアシスタント」の元祖です。2014年にはスマートスピーカーのAmazon Echoシリーズに搭載される形で、米国でサービスを開始しました。その後、日本では音声操作の言語対応などを完了して、2017年に当時のEchoシリーズの最新モデルとともに上陸しました。

 アマゾンは2019年から英語オンリーではありますが、実験的に自然会話によるユーザーとのコミュニケーションを実現するためのトライアルを重ねています。

 2023年頃には米国で販売するEchoシリーズのスマートスピーカー、およびEcho Showシリーズのスマートディスプレイなどで独自の大規模原簿モデル(LLM)をベースにした生成AIチャット機能「Alexa, let's chat」もスタートさせています。

Alexa

2023年、アマゾンが第2本社を置くワシントンDCで開催したEchoデバイスの新製品発表会で、Alexaによる生成AIチャット機能「Alexa, let's chat」が紹介されました

 今回発表したAlexa+は、アーキテクチャの基礎をすべて新しく作り直した生成AI対応のAlexaです。今年3月下旬頃までに、米国英語からサービスを開始します。

 サービス単体では19.99ドル(約2900円)という価格を設定していますが、Amazon Prime会員であれば追加料金無しで利用できます。Alexa+の登場にともない、Echo Showシリーズのデバイスはホーム画面のデザインをリニューアルしたり、大きめのソフトウェアアップデートを実施します。

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21インチのスマートディスプレイ「Amazon Echo Show 21」は、Alexa+のサービス開始とともに対応するデバイスの1つです

 Alexa+を日本国内&日本語を使って試せる時期については、残念ながらまだ明らかにされていません。続報が待たれます。

AIチャットからのショッピング連携も実現

 Alexa+はさまざまな生成AIモデルと連携できるパーソナルアシスタントです。アーキテクチャのベースを支えるのはAWS(Amazon Web Service)が開発した基盤AIモデルのAmazon Novaと、ハブ機能を持つ外殻としてAWSとサードパーティーの基盤AIモデルをつなぐAmazon Bedrockです。

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発表会に登壇したアマゾンのプレジデント兼CEO、アンディ・ジャシー氏が生成AIモデルのハブとして機能するAmazon Bedrockの特徴を解説しました

 アマゾンがアピールするAlexa+には「3つの強み」があります。1つは自然会話によるチャットが得意なこと。最初は英語対応からですが、自然会話の機能の一部はAnthropicの基盤AIモデルであるClaudeとつなぎ込むことで実現しています。

 2つめはチャットの先に、Amazon.comでのショッピングや外部サービスからスポーツの観戦チケットを買ったり、料理のレシピを検索して足りない食材を買い集めたり、Uberの配車サービスを予約する、などなどのAlexa+とつながるサービスを実行できることです。

 そして3つめはAlexa+がユーザーと会話を繰り返すほどに好みや習慣を覚えていくほどに、まさしく「あうんの呼吸」でコミュニケーションが交わせるようになることです。

Alexa

家族の「食の好み」をAlexa+は記憶して、次に「家族とのディナーにおすすめのレストラン」を聞いた時に回答に反映してくれます。ユーザーに最適化されたAlexa+の個人情報はクラウド上でセキュアに管理され、ユーザーがデバイスやアプリから「残したくないもの」を選んで消去することもできます

多様なデバイスやアプリでAlexa+が使える

 以下は発表会に参加して、ハンズオンコーナーでさまざまなデモンストレーションを体験した筆者がAlexa+に対して持った印象です。

 Alexa+は現行のパーソナルアシスタントであるAlexaがスキルを追加したり、AWSのサービスとつながりながら沢山の仲間を囲い込んできた戦略をそのまま受け継いでいます。だからこそ、あらゆる観点で「間口が広い生成AIプラットフォーム」になる期待があります。

 たとえば、Alexa+が使えるデバイスは一気にその数が増えそうです。

 来月のサービスイン当初はアマゾンのスマートディスプレイ「Amazon Echo Show」シリーズ(21/15/10/8インチ)に限られますが、将来的には2017年以降にアマゾンが発売したEchoデバイスを広くサポートする計画があるそうです。

 画面の有無にも制限を設けていないので、たとえば音声のみで応答するEchoシリーズのスマートスピーカーも対象に含まれます。またAlexa+の生成AIモデルによる処理はおおむねクラウドで実行されるため、デバイス側にかかる負担が抑えられます。

 記者発表会のプレゼンテーションでは、米国で展開するキッズ向けのEchoシリーズのスマートスピーカーでAlexa+が動く様子も紹介していました。

Alexa

Alexa搭載のさまざまなデバイスにおいて、Alexa+がアップデートで対応する計画があります

 アマゾンは世界最高のパーソナルアシスタントであるAlexaによる心地よい体験を、あらゆるユーザーに届けることをビジョンに掲げてきました。そのコンセプトはAlexa+にも継承されます。

 その究極系とも言えるのがiOS/Androidに対応するモバイルアプリの「Alexa」です。スキルを使ってスマートホーム機器を動かしたり、アマゾンのスマートデバイスと同じことがモバイルアプリ上でできます。

 そしてAlexaのパソコン(=ウェブブラウザ)対応も復活します。以前に「Alexa for PC」という名称でWindows PC向けに実施していたサービスが形を変えて、Alexa+がウェブブラウザ上で実行できるサービス(https://www.amazon.com/dp/B0DCCNHWV5)が立ち上がります。

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モバイル版AlexaアプリもアップデートによりAlexa+アプリになる予定

 OpenAIのChatGPTには体験に最適化した専用ハードウェアがありません。アップルのApple Intelligenceは、Appleシリコンを搭載するアップル製デバイス上で動く生成AIプラットフォームなので、Alexa+に比べると恩恵を受けられるユーザーは限られます。今のところ、強いて言えばGoogleのGeminiが、比較的Alexa+に近い存在になりそうです。

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