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FSR 4はRDNA 4専用として実装

RDNA 4世代の新GPU「AMD Radeon RX 9070XT/ RX 9070」の詳細が明らかになる

2025年02月28日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

FSR 4はRDNA 4専用、Day 0対応ゲームは30本を予定

 ゲーマーが高い期待を寄せているFSR 4についてもより具体的な情報が開示された。FSR 4はFSR 3の実装にAI(機械学習)を組み込み、高画質化を計った「アップスケーラー」だ。FSR 4はRDNA 4に組み込まれた新しいAI向けコア(AI Accelerator)向けに設計されているため、RX 7000シリーズをはじめ既存のRadeonは動作対象外となる。

この資料ではFSR 3.1のAPIを拡張してFSR 4を実現していると読める。RTX 50シリーズに対抗したのか、ニューラルレンダリング対応という表記にも注目だ。DirectXにおけるニューラルレンダリング実装である協調シェーダー(Cooperative Shader)はRTX 50シリーズ以外のGPUでも動くので、ここの表記に関しては“トレンドだから入れた”感が強い

 FSR 4はFSR 3の拡張として実装される。FSR 4に対応したゲームではAMD Software上(ゲーム側の設定画面にも入るかは不明)で専用のオン・オフスイッチがあり、これを有効にすることでFSR 4が有効化され、AIを用いたアップスケール処理が実行される。

 これはNVIDIAがDLSS MFG(Multi Frame Generation)を実装したやり方に非常によく似ている。AMDはFSR 3からFSR 4へ「APIをアップグレードする」と表現しているが、つまるところFSR 3のアップスケーラーの部分をAIベースにオーバーライドする機能なのだ。

 そのためかFSR 4はDay 0、つまりRX 9070シリーズの発売日時点で30本以上のゲームが対応するという。RTX 50シリーズのDLSS MFG対応75本スタートに比べればだいぶ少ないが、初日に買ってもすぐ試せるようにゲーム開発側と調整しているという点は高く評価したい。

 話題の「Monster Hunter: Wilds」のFSR 4対応について言及はなかったが、AMD製CPU/ GPU、もしくはAMD製ハードが搭載されたBTO PC購入でゲームが貰えるバンドルキャンペーンを始めた力の入れ方を考えれば、FSR 4に対応しないはずはない。今後の発表を待ちたいところだ。

FSR 4対応ゲームはDay 0において30本以上(図はその一部)。この表を見る限りソニー傘下の企業が開発しているゲームが多い印象だ

FSR 4の処理の流れ。左上の「Custom Game ML Models」と右隣の「AMD FSR 4 Upscaling Algorithm」の部分がFSR 4で新たに加わった部分がFSR 3にないAIの学習モデルを生み出すプロセスだ。中央下、RX 9070 XTカードの下に「Up to 779 Tops」の表記について先のスペック表におけるAI TOPS値(1557)のほぼ半分である点だが、これはFSR 4ではFP8を利用することに起因する

FSR 4はAMDハードをフル活用してRX 9070シリーズのために設計された、というAMDのアピール。AIのトレーニングにはEPYC+Radeon Instinct環境が使われているという

 FSR 4を利用するメリットは細部の再現性が向上することにある。FSR 3に対しFSR 4がパフォーマンス的に優位であるという主張は一切ない。FSR 4はFSR 3の機能をすべて包含する技術であり、その中にはFSR 4 FG(Frame Generation)もあるが、FSR 4 FGはアップスケール部分が違うだけでFSR 3と同じ。そしてFSR 4 FGはマルチフレーム生成ではない。

 FSR 4 FGのマルチフレーム生成非対応についてAMDは「マルチフレーム生成をしてもE-Eシステムレイテンシーは向上するわけではない。そこよりもE-Eシステムレイテンシーを縮めてゲームを快適にする術を模索している」と説明している。

 連続する2フレームの描画時間はGPU性能で決まるため、そこを中割りしても見た目には滑らかでもE-Eシステムレイテンシーが短縮するわけではない。純粋なフレームレートを稼ぐ方がE-Eシステムレイテンシーが短くなりユーザーのQOL向上に貢献するというのがAMDの主張だ(これはNVIDIAがRTX 50シリーズで素の性能を大きく引き上げなかったことやDLSS MFGに対する皮肉のようにも聞こえる)。

 だがFSR 4のマルチフレーム生成は「やらない」と断言したわけではない。新アーキテクチャー上でFSRにAI処理を実装するフェーズとマルチフレーム生成を実装するフェーズは別にしたい、というのが本当のところではないだろうか(注:筆者の推測である)。

4K解像度における「Warhammer 40000: Space Marine」での画質比較。中央のFSR 3.1では塔から生えているアンテナ状の物体が消えかかっているが、FSR 4ではネイティブレンダリング以上のディテールが得られる

こちらもWarhammer 40000: Space Marineでの比較。囲みにある草木や岩肌の表現よりも、背景にある火炎地獄的な風景の描写の方が判りやすい。FSR 3.1では炎の竜巻にアーティファクトが多数出てしまっているが、FSR 4では解消され、ネイティブレンダリングに近い出来になっている

RX 9070 XTとWarhammer 40000: Space Marineでのフレームレート比較。ネイティブ4KとFSR 4(パフォーマンス)とFGを組み合わせることでフレームレートは3.5倍に跳ね上がる

 FSR 3はDLSSに比べアーティファクトやモアレなどが発生しやすく、画質的に今ひとつだった(例:Cyberpunk 2077のベンチマーク最終シーンで出現するビルの描写)、だがFSR 4でAIを導入したことで細部の表現が強化され、ネイティブ描画でもアンチエイリアスの処理などで潰れてしまいがちなディテールも画面に描き出すことが可能になる。

 こうしたディテール向上はEPYCとRadeon Instinctを組み合わせた環境でゴリゴリとAIをトレーニングした結果なのだが、これはNVIDAがRTX 20シリーズより続けてきたことの後追いであり、ネイティブよりも再現性が良いという視覚上のメリットもDLSSと同じである。

 ただしFSR4にまったく独自性がないわけではない。FSR 4の学習モデルは“Hybridモデル”であり、CNNやTransformerとの良い所を合体させたものであるとAMDは説明しているので、この点をもってFSR 4にはAMDならではの知見が盛り込まれていると言えるだろう。

さまざまなゲームにおけるネイティブ4K/ FSR 4/ FSR 4 FGの効果。FSR 4 FGを使えばネイティブレンダリング時の 2.1〜3.7倍にフレームレート伸びるという。FSR 3やFSR 3 FG比のデータは出ていない

AFMFは画質を向上しバージョン2.1へ

 ゲーム側がFSR 3/ 4のFGに対応していなくても、ドライバーレベルでフレーム生成を実行する「AFMF 2(AMD Fluid Motion Frames Technology 2)」もバージョンアップし、「AFMF 2.1」となる。対応GPUはこれまで同様にRX 6000/ RX 7000/ RX 9070シリーズの各GPUとRyzen AI 300シリーズの内蔵GPUである。利用するためのUIも初代AFMFと同じである。

 AFMF 2.1での改善は生成されたフレームで発生するゴースティングの低減や細部の再現性の向上、オーバーレイされた文字に対する処理の改善である。特にゴースティングの低減はアクション性の高いゲームにおいては非常にうれしい改善といえる。

AFMF 2.1の設定はAMD Software上のスイッチ、もしくはホットキー(デフォルトではAlt+Shift+Gキー)でオン・オフできる。この軽快さはGeForceのSmooth Motionにはない部分だ

AFMF 2.1における改善点3つ。左と右は不要な残像やアーティファクト発生を抑えられることは一目瞭然である。中央は濃いグレーの部分が白線を越えて青の領域にはみ出しているように見えていたものが、AFMF 2.1だとはみ出しが抑制されているというもの(この例は非常にわかりにくい)

さまざまなゲームをネイティブ4Kでレンダリングした場合と、HYPER-RXを通じてAFMF 2.1を通した時のフレームレート比較。アップスケーラーで負荷をさげAFMF 2.1でフレーム生成を挟むことで最大3倍のフレームレートが期待できるという

 AMDはHYPR-RXについても強化すると予告した。HYPER-RXとはRSR(Radeon Super Resolution)やFSRのアップスケーラー、Radeon Boostで実現するVRS(Variable Rate Shading)、Anti-Lag(E-Eシステムレイテンシー低減)に加えAFMF 2.1といったゲーマーに嬉しい機能をワンアクションでまとめてオン・オフできる機能だ。

 さらにAMDはHYPER-RXに関し「近日機能追加の用意がある」とアナウンスした。それが何かというヒントすらなかったが、ひょっとしたらマルチフレーム生成はこっちから来るのかもしれない(注:筆者の妄想にすぎない)。

HYPER-RXに新たな機能を追加するともAMDは予告したが、どんな機能なのか具体的なヒントはなかった。左下の1.5x→2.7xというのはHYPER-RXを利用した際のフレームレートの伸び幅が2年で1.5倍から2.7倍へ80%向上したという意味で、その爆発力の源泉はAFMFの実装によるものだ

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