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もうAFMF 2の好きにはさせない

Smooth MotionでGeForce RTX 5070 TiはRTX 4080を完全撃破!?

2025年02月27日 10時00分更新

Smooth MotionでGeForce RTX 5070 TiはRTX 4080を完全撃破

 2025年2月20日より、「GeForce RTX 5070 Ti」(以下、RTX 5070 Ti)の販売が解禁された。RTX 5090騒動を受け、どのショップもネット抽選販売を採用した(関連記事)。しかし、初期入荷量は少なく、NVIDIAの予想価格(14万8800円)に準拠したMSRPモデル(筆者は“いいわけモデル”と呼んでいる)もなく16万円台からになるなど、初手から購入希望者の心を折りにかかってくる残念なスタートになった。

 前回はRTX 4080やRTX 4070 Ti SUPERなどと、クリエイティブ系アプリやAIにおけるパフォーマンスを検証した。SM(Streaming Multiprocessor)が多いRTX 4080に負けるシーンもあれば、メモリー帯域で25%上回るRTX 5070 Tiが優越するシーンもあった。では、ゲームではどうだろうか? というところが今回の検証ポイントである。

 ゲームにおいては、RTX 5070 TiはDLSS MFG、すなわちMulti Frame Generation(マルチフレーム生成)が利用できるという強みがある。DLSS FGは連続する2フレームに1フレームを挿入するだけだが、DLSS MFGでは連続する2フレームに最大3フレームを挿入できる。

 DLSS MFGに対応するゲーム(参照:NVIDIAのブログ)はまだ限られている。しかし、NIVIDAが当初発表していた「Day 0タイトル」(すなわち、RTX 5090やRTX 5080発売日においてDLSS MFGに対応している75本のゲーム)以外でも、DLSS MFGをサポートしたゲームが登場しはじめている。DLSS MFGはローンチフェーズから拡大フェーズへ軸足を移しつつあるのだ。

 さらに、RTX 50シリーズにはNVIDIAが積極的に発表していない機能「Smooth Motion」がある。これはAMDのAFMF 2(AMD Fluid Motion Frames Technology 2)に相当する機能で、GeForceドライバー側でフレーム生成を行える。これまでDLSS FGに対応しないゲームでは、RadeonのAFMF 2がもたらすフレームレートの高さに手も足も出なかったGeForceだが、Smooth Motionによってようやく互角に戦えるようになったわけだ。

Smooth MotionでGeForce RTX 5070 TiはRTX 4080を完全撃破

Smooth Motionを利用するには「NVIDIA App」を開き、ゲームごとに「オン」にするだけでいい。グローバル設定で一律オンにすることもできるが、DLSS FGやMFGと重なった際は、Smooth Motionが優先される感じ(筆者が少し試した限りではの話)なので、グローバル設定よりも有効にしたいゲームごとに指定したほうがよい

 前置きが長くなったが、早速RTX 5070 Tiの検証を始めよう。なお、前回の予告では「ゲーム14本」と記したが、実際には15本のゲームで検証することになった。

Radeonも含めた5種類のGPUで比較

 今回の検証環境は、前回と同じ。比較対象にはRTX 5080のほか、ZOTAC製RTX 4070 Ti SUPER搭載カード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti SUPER Trinity OC White Edition 16GB GDDR6X」と、Ada Lovelace世代のRTX 4080 Founders Edition(以下、FE)。さらに、Ampere世代のRTX 3070 Ti FEも用意した。

 Radeonついては、機材トラブルにより期待するGPUが利用不可になったため、ASRock製のRX 7900 GRE搭載カード「AMD Radeon RX 7900 GRE Steel Legend 16GB OC」を準備。RX 7900 GREだと若干パワー不足であることは否定できない。

 しかし、一応メモリーバス幅256bit、VRAM 16GBという構成において、RTX 5070 Tiと近しい位置にあり、さらに実売価格にはだいぶ安いというメリットがある。Radeonに対し、よく最適化されたゲームでは、RTX 5070 Tiと互角以上の戦いになる可能性も捨てきれない。

 また、GPUドライバーはGameReady 572.43およびAdrenalin 25.2.1を使用している。Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性やHDRなどはひと通り有効化。ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。

検証環境
CPU AMD「Ryzen 7 9800X3D」 (8コア/16スレッド、最大5.2GHz)
CPU
クーラー
EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」
(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザー
ボード
ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.18.AS02)
メモリー Crucial「Crucial Pro CP2K16G56C46U5」(16GB×2、DDR5-5600)
ビデオ
カード
NVIDIA「GeForce RTX 5080 Founders Edition」(16GB GDDR7)、
Palit「GeForce RTX 5070 Ti GamingPro」(16GB GDDR7)、
NVIDIA「GeForce RTX 4080 Founders Edition」(16GB GDDR6X)、
ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti SUPER Trinity OC White Edition 16GB GDDR6X」(16GB GDDR6X)、
NVIDIA「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」(8GB GDDR6)、ASRock「AMD Radeon RX 7900 GRE Steel Legend 16GB OC」(16GB GDDR6)
ストレージ Crucial「T700 CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)、
Silicon Power「PCIe Gen 4x4 US75 SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe 4.0)
電源
ユニット
ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)

 ちなみに、本稿におけるフレームレートの検証条件は以下の通り。

(1)PCI Expressのリンク速度はGen 4に固定
(2)「CapFrameX」でフレームレートを計測
(3)フレームタイムは「MsBetweenDisplayChange」を基準とする
(4)AFMF 2環境のフレームレート計測はRadeon Softwareを利用

 まず、(1)については、ベンチマーク中に消費される電力を正確に把握するため、「Pownetics v2」を接続しているためである。PCI Express x16スロットから供給される電力はさほど大きくない(今回検証したカードでは多くても2〜12W程度)が、ビデオカードの設計ごとに差異があるため無視することはできない。

 そのため、ライザーカードを利用して電力を計測することになるわけだが、その都合でCPUとビデオカードのリンク速度をPCI Express 5.0(Gen 5)ではなく同4.0(Gen 4)に落とす必要がある。ちなみに、RTX 50シリーズをGen 4接続で運用してもグラフィックパフォーマンスの下落は小さい(0〜2%程度)。

 (2)および(3)については、フレームレート算出の基準になるフレームタイム(1フレームの処理時間)が、最低フレームレート(正確には1パーセンタイル以下のフレームの平均値。グラフ中では「1% Low」と表記)の計算に大きく影響するため。DirectX 12登場以降、GPUに処理を投げるインターバルで集計する「MsBetweenPresents」が使われてきたが、フレームの表示間隔重要になるDLSS MFGでは、「MsBetweenDisplayChange」を使用して、画面が実際に更新されるインターバルで集計することが適切とされる。これはCapFrameXの最新β版を利用することで解決できる。

 (4)については、検証時点におけるCapFrameXでは、AFMF 2で生成されたフレームを正しく評価できないためだ。ゆえに、AFMF 2環境のみRadeonドライバーのログ機能を利用し、フレームタイムの生データからフレームレートを求めている。

 それでは次ページから各ゲームの検証をはじめる。解像度はフルHD(1920×1080ドット)、WQHD(2560×1440ドット)、4K(3840×2160ドット)の3種類。画質は最高、あるいはそれに準じる設定とした。まずはラスタライズベースのゲームを中心に見てみよう。

「Overwatch 2」

 まずOverwatch 2では画質「エピック」をベースにレンダースケール100%、フレームレート上限600fpsに設定。最近DirectX 12にも対応したが、筆者の環境では不具合を観測しのでDirectX 11のままで検証している。マップ「Eichenwalde」におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。

Smooth MotionでGeForce RTX 5070 TiはRTX 4080を完全撃破

Overwatch 2:1920x1080ドット時のフレームレート

Smooth MotionでGeForce RTX 5070 TiはRTX 4080を完全撃破

Overwatch 2:2560x1440ドット時のフレームレート

Smooth MotionでGeForce RTX 5070 TiはRTX 4080を完全撃破

Overwatch 2:3840x2160ドット時のフレームレート

 RTX 5070 TiとRTX 4080の平均フレームレートに注目すると、フルHDではRTX 4080が完全に上だ。しかし、WQHDではほぼ互角(とはいえ、RTX 4080がわずかに優勢)になり、4Kになると今度はRTX 5070 TiがRTX 4080を上回る。

 つまり、メモリー帯域があまり必要とされない低解像度領域では、SM数の多いRTX 4080が単純な計算力でRTX 5070 Tiより有利だが、4Kのようにメモリー帯域頼みな状況になると、GDDR7でメモリー帯域を太くしたRTX 5070 Tiが輝き出すということだ。

 一方で、RTX 5080はRTX 5070 TiよりもSM数が多く(84基対70基)メモリー帯域も太い(960GB/sec対896GB/sec)。そのため、どの解像度でもRTX 5080に対しては、15%程度負けている。

 また、RTX 4070 Ti SUPER基準で平均フレームレートを見ると、RTX 5070 TiとはフルHDで8%差とあまり大きくない。フルHD程度の解像度ではメモリー帯域の太さが決め手にはならないようだ。

 ただし、RTX 3070 Tiと比べると、どの解像度でも68〜86%平均フレームレートが上昇する。RTX 40シリーズをなんらかの理由でスキップしたRTX 30シリーズユーザーが乗り換える先、と考えるならRTX 5070 Tiは強力無比な選択肢となるだろう。

Smooth MotionでGeForce RTX 5070 TiはRTX 4080を完全撃破

Overwatch 2:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(左3つ。単位:W)、および10Wあたりのフレームレート(右3つ。単位:fps)

 上の表はベンチマーク時に観測したTBP(Total Board Power)と、10Wあたりのフレームレート、すなわちワットパフォーマンスの一覧である。全般にRTX 5070 Tiの消費電力はRTX 4080よりやや下〜ほぼ同等レベルで、ワットパフォーマンスもほぼ同じ。旧世代のRTX 3070 Tiと比較すると、RTX 5070 Tiのワットパフォーマンスはほぼ2倍である点にも注目してほしい。

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