キヤノンUSAがスタートアップエリアに出展、その理由は?
ラスベガスで開催中のテックイベントCES 2025は街を丸ごと使用した大規模なイベントであり、会場もラスベガスの街中に分散している。
そのうち、The Venetian Expoという展示会場で開かれているのが「Eureka Park」と名付けられたエリア。主には世界のスタートアップ企業が集い、新規性の高い技術や企業の特色などをイベント参加者に伝え、新たな取引や、出資者とのマッチング、協業の可能性を探る意味合いを持った場所だ。
そんなEureka Parkに、意外な企業のブースを見つけた。キヤノンのアメリカ現地法人、米キヤノンUSA(Canon U.S.A.)だ。
キヤノンといえば、光学機器メーカーとしてのイメージが多くの人に根付いているだろう。しかし近年、同社はその枠を超え、医療機器や産業用装置の分野でも存在感を強めている。(もちろん同社が、いまも変わらず世界的な技術を持つ光学機器メーカーであることに違いはないが)。
ブース内で象徴的だったのは、キヤノンUSAに属する組織であるCanon Americas Labによる、バイオマス/バイオファイナリー技術だ。
展示された技術は2種類。ひとつは、天然のタンパク質であるカイコの繭を液状に加工し、この液を元にフィルム、パウダー、あるいはポリマーと混合して樹脂状に仕立て上げる技術。もう一つは、木材から「リグニン」と呼ばれる高分子化合物を抽出し、ペレット状に仕上げる技術だ。
それぞれは、使用できる分野に明確な特徴を持つ。カイコから作られた原料は、極めてアレルギーが起きにくく、臭いと味を持たず、かつ生物に対する細胞毒性も限りなく低いという性質を持つ。この特性を生かして、食品パッケージのコーティングや、食物関連、被服関連のソリューションに使用しやすい。
木材から生まれたペレットは、極めて硬質で工業製品のパーツなどへの使用に向いている。他のペレットに混ぜ込んで、カーボンフットプリントを下げるような使い方もできる。
カーボンフットプリントの抑制や、プロダクト生産時のCO2の排出量の抑制は、世界的に大きな課題になっているだけあって、こうしたバイオマス素材を求める顧客は、近年増加傾向にあるようだ。
環境負荷が小さく、不要になれば地中に埋めることで土に戻っていける──そんな素材は、今後10年、20年で徐々にプラスチックを置き換えていける可能性を持っているだろう。
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