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1万5000以上のチップレットを数分で構築する新技法SLTは従来比で100倍以上早い! IEDM 2024レポート

2025年01月06日 12時00分更新

サイズの異なるチップレットを積層する新手法
Selective Layer Transfer

 基礎となるのは、すでに利用されている技法である。2つのダイを接着するにあたり、あらかじめILRF(IR Laser Release Film)と呼ばれている非常に薄い(1μm未満)フィルムをウェハー製造時に挟み込んでおき、最後にドナーウェハーを分離したい際に赤外線を当てることで簡単に分離できる仕組みだ。

1aと1bを、Bonding Oxideが向き合うように貼り付ける。その後、赤外線レーザーをシリコン越しに照射すると、このILRFが消えてしまい、ドナーウェハー(作業用に利用しているシリコンウェハー)を簡単に分離できるというもの

 オーストリアのEVG(EV Group)はこれを利用したIR LayerRelease Technologyと呼ばれる解決策を提供しているし、このフィルムについてもさまざまなものがすでに提供されている。これを利用して、サイズの異なるチップレットを積層しよう、というのが今回の内容だ。

ここではダイ #1だけだが、モノによってはここで複数のダイをまとめてレシーバーウェハーの方に移行することも当然可能である

 まず一番左がチップレットを構築したウェハーであり、#1~#4の4種類のダイがある。真ん中がそのチップレットを載せるレシーバーウェハーで、ここでは#1のチップレットを載せる用意がなされている。

 右が実際に載せる際の手順で、ドナーウェハーをひっくり返してレシーバーウェハーの上に被せる。この状態で、ドナーウェハーの上からダイ #1の底の部分にだけ赤外線レーザーを当てると、そこだけフィルムがなくなり、ダイ #1がレシーバーウェハーに残る。

 あとはレシーバーウェハー #1を取り外し、同じように今度はダイ #2を別のウェハーに載せるという形で、チップレットを全部転送できることになる。

あるいは、ウェハー #1の異なる位置にダイ #2~#4を載せるということも考えられる。この場合も手順は同じである

 この方式のメリットはいくつかあり、当然スループットが早い(位置合わせの手間がチップレットの種類の数だけで済む)し、小さなチップレットであっても問題なく積層できる。

これまでWoWでは異なるサイズのダイをチップレットとして積層できなかったため、これができるようになったことでWoWを利用できる範囲が大幅に広がったことになる

 この後は、普通に誘電体を充填し、その上層にインターコネクトを積層することで完成である。これをもう少し応用すると、右側のように大規模なAIアクセラレーターを組み合わせたチップにしたり、あるいはIoT向けのチップをチップレットで作ったりすることも可能になる。

ここではインターコネクトを後から積層しているが、例えばもう一度ひっくり返してシリコンインターポーザーに載せる選択肢もあり得る。このあたりは製造するチップによって変わってくる

 そもそも現在チップレットではあまり小さなサイズのダイを組み合わせることがない。これはダイサイズがある程度小さくなると、モノリシックで製造する方がトータルコストが安くなることに起因する。

 ダイサイズを小型化することによる歩留まり向上や、最適なプロセスを使うことによるダイサイズの最小化に起因するコスト削減より、チップレットを構築、検査するための追加コストの方が大きくなるからである。

 検査はともかくとして、製造に関しては今回の手法を使うと大幅に下げられる可能性が出てくる。実際、簡単な試算ではあるが、例えばIoTなどに向けたRFフロントエンドでは50%以上の面積削減が可能だし、AI向けアプリケーションプロセッサーでもSRAMをどんどん積層することで大幅に面積削減ができる。

左はインダクタンスをこの技法を使ってスタックする手法、右はSRAMをスタックする方法である。製造コストが大幅に下げられるので、SRAMスタックが比較的容易ということである

 前回も触れた検査コストをどうするのか? という問題は残る(この論文はそこには踏み込まず、あくまで製造工程にフォーカスしている)ものの、大幅にチップレット構築のコストを下げられる可能性があるというのは、よりチップレットの普及を促進する要因になるだろう。

前回の記事から再掲。チップレットの数が増えると検査コストが大幅に上昇する

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