週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史

2024年12月16日 12時00分更新

16年間に渡り不可欠な存在であったISA Busが廃れた2つの理由

 ISA BusはIBM-PC/ATが登場した1984年から、レガシーフリーをうたって積極的にチップセットから排除するようになった2000年頃まで16年間に渡り、PCになくてはならないものとなった。ただその後は急速に廃れていく。

 もちろん性能はそれほど高くない(というか低い)ため、特にビデオカードとストレージ向けにはEISAとVL-Bus、後にはPCIやAGPを経てPCI Expressがどんどん投入されていくが、拡張カードのすべてが高速な接続を必要とするとは限らず、また過去との互換性を考えるともう少し延命しても良さそうなものだったが、2つの理由でそれは適わなかった。

 1つがPlug&Play性の欠如。ISA Busはなにしろ1980年代(Datamasterの開発開始時期を考えると1970年代末、という方が正確だが)の技術なので、例えば拡張カードを差した時にIRQ(割り込み番号)をどこに割り当てるか、I/Oポートをどこに割り当てるか、あるいはDMAを行なうタイプの製品だったらどこにメモリーアドレスを割り当てるかといった機能を自動でできない。

 したがって拡張カード上のジャンパーピンやらDIPスイッチやらで設定することになるが、設定範囲がそれほど広くないし、中には調整不可能なものも少なくなかった。

 一方でPCそのものは、1995年からインテルとマイクロソフトが共同でレガシーフリーに向けた取り組みを活発化させており、特にWindows 95以降では拡張カードを含む周辺機器の設定を自動化していく流れの中で、ISAはこれに追従できなかった。

 PnP ISA(Plug&Play ISA)と呼ばれる拡張機能も用意されたが、これに対応した拡張カードはそれほど多くなく、しかも混乱を防ぐどころかむしろ混乱を助長するようなリソース割り付けをしてくれたおかげで、"Plug & Pray"(差して祈る)なんて揶揄されたほどだ。

 もう1つは過去との互換性が急速に不要になったことだ。ISAの拡張カードを利用するユーザーは、ほとんどがMS-DOS時代のアプリケーションを使っている人(それも主にゲーム)であったが、こちらはまずOSがMS-DOSからWindows 95以降に利用したことで、ゲームそのものもWindows 95以降に対応するように変わってきた。

 また特にビデオカードに関して言えば、より高速なPCIやAGP、PCI Express対応の製品が登場し、ゲームもこうした最新ビデオカードへの対応が進んだことで、もうISAの拡張カードを使う必要性が急速に薄れることになった。

 これに併せて、PCIが急速に普及したこともISAの衰退に拍車をかけた。過去の記事を探してみると、2000年頃にはまだISA Busを搭載したマザーボードの新製品がそれほど珍しくはなかったが、2004年11月の新製品の記事の冒頭は「すでに絶滅と思いきや、時おり新製品が登場しては意外な話題を呼ぶISAスロット搭載マザーボード。」だったりする。

 コンシューマー向けは2001年あたりから急速に衰退したISA Busであるが、業務用や組み込み機器用にはこの後も長らく生きながらえた。というのはPCIで代替できない特徴が1つだけあったのである。それは「多数のカードを装着できること」である。

 マザーボードからケーブルの形で拡張シャーシに接続し、そこに20枚などのISAカードを装着するという真似は、PCIには不可能だった(最大でも7つ)。測定機器(データそのものは別の方法で伝送するので、単に測定の制御だけを行なう)や制御装置(それぞれのISAカードにさまざまな制御用の回路が搭載され、それが製造装置などにつながる形。ISAはそれぞれの制御だけを行なう)向けにISAは非常に安価であり、性能を無視すれば拡張カードをかなり(がんばれば20スロットの拡張ボックスを2つ、ディジーチェーン式につなぐことも不可能ではなかった)の枚数接続できるということで、現在もまだ古い装置の制御などに使われているため、こうした用途に辛うじてISA Busは生き残っている格好だ。

 とはいえどんなシステムでも使っているうちに次第に壊れていくため、「もう少し延命させたい」というニーズに向けて、ぼそぼそと交換用となるISA Busの製品が製造されている。筆者が最後に見た「新製品」が下の画像である。台湾DM&Pの「CPUカード」である。

コロナ直前のCOMPUTEX TAIPEI 2019における展示。2023年以降はこれも見なくなった

 このISAカードの上にCPUとメモリー、チップセット類が全部搭載されている。このカードをISA Busのパッシブバックプレーンに装着するだけで、ISAベースのシステムができあがりというわけだ。ただこれは産業用であり、もうコンシューマー向けに関して言えば完全に絶滅したとしていいだろう。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事