普及しなかったMultibusとVME Bus
ほかになにもなかったのか? と言えば、インテル自身が1974年にMultibusと呼ばれるI/O Busをすでに出しているし、1979年にはMotorolaがVME Busの前身となるVersa Busをリリースしている。
ただMultibusはワークステーションなどには広く使われた(なぜかMC68000シリーズを搭載したSun-2がMultibusを採用している)し、VME Busは制御/計測機器や、やはりワークステーションなどでは広く使われたが、なぜかPCの市場には降りてこなかった。
VME BusやMultibusはカードサイズが大きかったのが一因ではあるのだろうが、Multibusも最初にリリースされたMultibus-IはISA Busのカードと大差ない大きさだったことを考えると、なぜMultibusがPCに降りてこなかったのか? は少し不思議である。
IBM PC/ATに搭載されたXT(AT) BusがISA Busの起源
ではISA Busがどこから湧いてきたのか? であるが、これはIBM-PCのご先祖様である、IBM System/23 Datamasterにさかのぼる。IBM System/23、あるいはIBM Model 5322と呼ばれる機種を開発していた。これはCRTモニターや8インチFDD、キーボードまで一体化したオールインワンな機種であり、プロセッサーとしてはIntel 8085を利用していた。IBM-PCではこのDatamasterの回路を可能な限り流用する形で開発されている。
そのDatamasterはIBM独自の開発によるもので、CPUを載せた基板に4つのI/O拡張スロットと2つのメモリー拡張スロットが配されているのがわかる。
メモリー拡張スロットは、本当にアドレスバスとデータバスだけで、割り込みその他のラインが配されていないようで、一方I/O拡張スロットの方はほぼ8085の全部の信号線が配されている(割り込み線は8259経由だろう)格好だが、このI/O拡張スロットがIBM-PCに搭載されたXT Busの元になったものと考えられる。
このDatamasterのI/O拡張スロットとXT Busの差はごくわずか(B4にIRQが追加され、逆にB8のAdvance Storage Readが廃された。またB26にDACK2が追加されている程度。Datamasterはバンク切り替え式メモリーなのでアドレスバスは16bitで、上位4bitにPage 0~3の信号が来ているが、XT BusではA16~A19が配された)でしかない。
ちなみにこの拡張スロット、当時はこちらがISA Busと呼ばれていた。ISAはIndustry Standard Architectureの略で、要するに業界標準バスである。ただその後IBM-PC/ATが出た時に16bit拡張され、当初こそAT Busなどと呼ばれていたものの、次第にこちらがISA Busと呼ばれるようになったこともあり、オリジナルの8bit BusはISA-8やXT Bus(IBM-PCと続くIBM-PC/XTがこの8bit Busを装備していたことに起因する)と呼び変えることになった。
XT BusとISA Busの技術的な違いや基本的な転送方式などは連載106回で説明したので今回は割愛する。
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