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「kintone AWARD 2024」レポート中編は、関西および北海道・東北代表が登場

洗脳アプリで基幹システム移行の下地を作ったワイドループ、ワイガヤで職人気質の匠を巻き込んだ北斗型枠製作所

2024年12月12日 09時00分更新

北斗型枠製作所:論破は禁止!職人気質な匠との“ワイガヤ”がkintoneでの改善の鍵に

 続いては、4番手である北斗型枠製作所の渡邊克史氏によるプレゼン「人を巻き込みながらの業務改善」だ。

 北斗型枠製作所は、福島県郡山市(本社)と岡山県長船市に工場を持つ、コンクリ型枠を手掛ける製造業だ。型枠とは、コンクリート製品を作るための鋼製の枠であり、これにコンクリートを流し込むことで、側溝や縁石、テトラポットなどが出来上がる。

 同社には大きく分けて、営業と製造、総務・経理の3部署があるが、kintone導入前、各部署でシステムの問題を抱えていた。

北斗型枠製作所 型枠営業部・システム担当 渡邊克史氏

 例えば営業では、見積もりは表計算ソフトで作っており、資料を見つけるまでに1回あたり57.3秒も費やしていた。製造では、進捗状況が可視化されずに経験と勘で仕事をしており、進捗の把握には1回あたり620秒かかっていた。加えていちいち現場に走って確認する必要があった。総務・経理では、営業や製造と異なるソフトを使っていたため、二重入力が発生。入力作業には1回あたり194秒費やしていた。

情報を一元管理できていないので、あちこちで無駄な作業が発生

 これらの無駄を払拭すべく、社長から、システムを根本的に変更しようというミッションが発動される。社長のオーダーは、「一気通貫できるシステム」「二重入力の禁止」「早い数字報告」「資料作りに時間をかけない」という4つだ。既に営業と製造には最適化したソフトを入れていたため、渡邊氏は「また一から作り直しか」と思ったものの、イエスと返事するしかなかった。

 渡邊氏は、まず社内アンケートをとって、自社の強みは社員が若くて、元気だというのを再確認。そこで進めたのが“ワイガヤ文化の醸成”だ。部署や役職関係なく、意見を出し合い、その都度チャレンジして、ダメなら別の意見を試すというのがワイガヤの考え方だと渡邊氏。

 以前は、問題が発生すると“役職者”が集まっていたが、現在は“現場担当者”が集まり、時間を決めてワイガヤを実施。みんなの意見を尊重する場なので、論破は禁止で、忙しいから話し合いは無駄という考えもなしだ。これにより「決められたプロセスではなく、自分たちで決めたプロセスを実行する」(渡邊氏)という文化を醸成できた。

論破禁止でわいわいガヤガヤするワイガヤを導入

 kintoneアプリの構築や改善に関しては、2018年のkintone Awardでグランプリを獲得した矢内石油の矢内哲氏に協力を仰いだ(関連記事:人口5000人の村で燃料屋が始めたリフォーム事業をkintoneが支える)。「矢内さんと出会った際に、忘れられない一言となったのが『次のランナーに丁寧にバトンを渡すようなフローを組みませんか』という言葉です」(渡邊氏)

 そこで、渡邊氏は、各部署の“匠”をkintone改善のキーマンに設定。匠にヒアリングをして、その内容をもとに矢内氏とアプリの構築・改善を進め、匠を介して現場に戻すというフローを組んだ。匠とは、腕や技術に優れた、「職人気質のめんどくさいおじさんたち」(渡邊氏)である。匠は、頭の中で常に改善を続けているが、それを外に出す機会がなかった。匠とワイガヤすることで、その知見が活用できるようになったのだ。

 その効果を発揮した例が、kintoneのプラグイン「KANBAN」(アーセス開発)を使った製造管理アプリだ。匠からの「進捗が移動するタイミングがわかり辛い」というヒヤリングから、「次の部署が着手できるようになったらステータスを移す」という通常のカンバンとは異なる運用に変えた。進捗率のゲージを付けたり、完了済みの工程を管理するチェックボックスを用意するなど、とにかく現場がわかりやすくなることを優先して、ワイガヤで仕様を決めていったという。

「KANBAN」を利用し進捗状況を見える化

 最終的にはkintoneをベースに各部署の課題を解決して、情報を一気通貫でつなぐことに成功。全社で年間1440時間かかっていた業務時間は290.4時間にまで短縮、80%もの削減を実現した。年間の利益率に換算すると25%アップとなる。

 渡邊氏は、「自分だけの知識や経験、アイデアには限界があります。孤軍奮闘するのではなく、人を巻き込みながらアプリを作ることが重要です。衆知を結集すれば、業務改善は加速します。プラグインを駆使すれば、一気通貫するソフトを作れます」と振り返る。

 そして、「私はアプリの構築が得意なわけではありません。その代わり、社内のルール決めに注力しました。kintoneは作るのが目的ではなく、運用することが目的です。そのために社内で合意形成をして、kintoneアプリを作るプロセスの中でチームワークを構築できたことが成功につながったと感じています」と締めくくった。

 次回は、終盤に登壇した日本エアコミューターと成田デンタルのプレゼンをお届けする。

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