Silent-Master NEO Z890をレビュー
「静音とは何か」を真剣に考え抜いたゲーミングPC、265KもRTX 4070 SUPERもNoctuaで冷やす
定評があるNoctua製ファンで徹底的に静音化
静音性を高めるには、大きく2つのポイントがある。1つは、そもそも騒音を出さないようにすることだ。騒音源になるのは主にファン。CPUクーラー、ビデオカード、PCケースに搭載しているファンが高回転になると、どうしても動作音が大きくなってしまう。
Silent-Master NEO Z890は、低回転ファンを採用し、静音化を実現している。とはいえ、単純にファンを低回転にしてしまうと今度は冷却性能が下がり、CPUやGPUが高温になってしまって本来の性能を発揮できなくなる場合がある。この熱問題対策が静音ゲーミングPCの要だ。早速、PCの内部を見てみよう。
まず目につくのが、大きなヒートシンクの空冷CPUクーラー。静音性を重視するなら水冷CPUクーラーのほうがいいのではないかと思われがちだが、一般的に高性能なCPUを冷却するには240mmサイズ以上のラジエーターが必要になることが多い。つまり、ファンが2つ以上になってしまうということだ。
ファンの数が増えれば、それだけ騒音源が増えてしまう。そのため、Silent-Masterシリーズでは120mmファン1基で運用するNoctuaの静音空冷CPUクーラー「NH-U12S」を採用。5つのヒートパイプを備えるサイドフローモデルで冷却力と静音性のバランスに秀でており、PC自作市場でも定番になっている。
また、CPUは電力効率が高いCore Ultra 200Sシリーズなので、空冷CPUクーラーでも十分冷却できるだろう。また、PCケースファンはCPUクーラーとほぼ同じ高さのすぐ後方にあり、すばやく熱風を外に送り出せる構造になっている。
前面の吸気ファンの位置も絶妙で、ちょうどCPUクーラーとビデオカードの両方に、冷たい外気を送り込めるようになっている。140mmと大型のファンなので、低回転でも十分な風量を稼いでくれている。
ここまで見て気づいた人も多いと思うが、CPUクーラーはもちろん、背面、前面のPCケースファンまで、すべて静音性と冷却力のバランスに優れたNoctua製のファンを採用している。1つ1つのファンにこだわることで、騒音をなるべく発生させないような構成になっているわけだ。
高性能と静音性を両立した独自ビデオカード
CPUに次ぐ騒音源はビデオカード。特にゲームプレイ中は負荷が高く、温度が高くなりがちだ。つまり、ファンが高回転になり、動作音が大きくなる。このビデオカードの静音化のために、サイコムは「独自ビデオカード」を開発した。それが静音ビデオカード「Silent Master Graphics」シリーズだ。今回の試用機はGeForce RTX 4070 SUPERを採用したモデルが入っていた。
ファンは静音性に優れたNoctua製を採用し、ファンカバーの製造は金属加工に長けた長尾製作所に依頼。これらを組み合わせることで、既存品ではまず実現が難しい静音性を確保している。以前から「欲しいパーツがなければ作る」という、BTOパソコンメーカーの枠に収まらない活動をしている同社ならではの取り組みと言える。
遮音材を貼った音が漏れにくいPCケース
静音性を高めるもう1つのポイントは、音を外に漏らさないこと。とはいえ、エアフローが重要な空冷PCでは完全密閉できないため、どうしても限界がある。この音漏れの影響を可能な限り抑えるため、PCケースにはCooler Masterの「Silencio S600」を採用。サイドパネルや天面に遮音材が貼られており、音の反響や漏れを軽減。さらに、振動によるビビり音を抑えることで、新たな騒音源とならないような工夫が施されている。
また、フロントパネルの内側にも柔らかな吸音・遮音材を備え、前方向への音漏れを軽減している。なお、フロントには着脱可能な大きなフィルターを装備。ホコリの侵入を防いでくれるだけではなく、掃除がしやすくなっている点もうれしい。しっかりとしたエアフローを確保しながら、その効力を長期間維持しやすくできるような工夫も施されていると言える。
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