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日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU

2024年11月18日 12時00分更新

レジスターやメモリーのほとんどがシングルポート
ソフトウェア制御だからこそできた珍しい構成

 MN-Coreのチップ構造が下の画像である。基本になるのはMAB(Matrix Arithmetic Block)である。こちらはPE(Processing Element)×4とMAU(Matrix Arithmetic Unit)から構成される。

MAB×16にL1 Block RAMを合わせたものがL1Bで、そのL1B×8+L2 Block Memoryを組み合わせたものがL2Bとなる。1つのダイにL2Bが4個あり、4つのダイが相互接続されており、結果としてチップ全体ではMABが2048個、PEは8192個ある計算となる

 MAUは行列専用のアクセラレーターであり、PEからデータを受け取って行列演算をして、その結果を再びPEに戻す仕組みである。ではPEの中身は? というのがこの下の画像。

これはMN-Core 2のホワイトペーパーからの抜粋なのでMN-Coreではないのだが、大きくは変わらない。強いて言えば、2nd GRF(GRF1)はMN-Core 2で追加されたようだ

 ALUに汎用レジスター(GRF)とローカルメモリー(LM)、それと一時データ保持用のTレジスター、演算結果のフラグを保持するフラグレジスターなども搭載される。LMはそれぞれ36KBの容量を持つが、特徴的なのはこれらのレジスターやメモリーのほとんどがシングルポート構成ということだ。

 通常レジスターやキャッシュ、ローカルメモリーはマルチポート構成になっていることが多い。複数のユニットから同時に読み出したり、あるいは書き込みと読み出しを同時に行なったり、といったことが可能な構成になっている。ただこれは当然その分回路が複雑になるし、レイテンシーと消費電力も増える。

 MN-CoreではGRF0/1のみR/Wが同時に可能だが、その他のSRAMはすべてシングルポート構成である。これは、通常のコアだとしばしばメモリーアクセスの競合が発生して性能低下の要因になりえるが、MN-Coreの場合はそもそもそうしたメモリーアクセスすらもソフトウェアから制御するので、競合が起きないようにプログラミングすることで無駄なトランジスタ数を減らし、効率を引き上げられる。

 ここまででわかるように、PEもMAUも独立して動作する。したがってプログラミング次第であるが、SIMDのようにPEとMAUを並行して同時に動かすことも可能だし、その際の性能予測も容易である。なにしろハードウェア側がなにもしないから、正確に性能を推定できるわけだ。

 データ移動も同様にプログラムで管理できるため、きちんとプログラミングできれば非常に効率的に動作する。逆に言えば、プログラミングの難易度は高い。そもそもMN-Core、設計段階でのコード名はGRAPE-PFN2(初代のGRAPE-PFNは冒頭で触れた、NEDO向けの開発プロジェクトのチップの模様)という名前からもわかるように、GRAPEシリーズとかなり似通った命令構成になっている。GRAPEシリーズのプログラミングの経験者であれば、それほど難しくはないという割り切りがあって、こうしたスタイルになったものと考えられる。

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