SMTの廃止によるCPU性能への影響は?
G-Master Spear Z890に搭載しているCore Ultra 200Sシリーズの大きな特徴は、SMT(ハイパー・スレッディング)を廃止し、Pコアでも1コア1スレッドになった点だろう。特に、マルチスレッド処理が有効な用途……、例えばCGレンダリングや動画エンコードの性能が落ちてしまうのではないか、と危惧している人も多いはずだ。
ただし、Core Ultra 200SシリーズのPコアは、従来よりもサイクルあたりの命令実行数(IPC=instructions per cycle)が9%ほど高くなっている。また、EコアのIPCも32%強化しており、トータルで見るとSMTの廃止がマイナスになっていないのではないか、と予想される。
とはいえ、試してみなければわからない。ということで、定番のCPUベンチマークソフト、「CINEBENCH R23」と「CINEBENCH 2024」を試してみよう。なお、比較対象は過去データからCore i7-14700K搭載PCの結果を掲載する。OSやドライバーのバージョン、メモリー速度・容量、CPUクーラーなどは異なるため、厳密な比較ではない点をあらかじめお断りしておく。とはいえ、おおまかな傾向を見るのであれば十分だろう。
ちなみに、CINEBENCHはCGレンダリング速度からCPU性能を調べてくれるベンチマークソフトで、結果は「pts」という独自単位のスコアーで表示する。この値が高ければ高いほど高速なCPUとなる。ただし、CINEBENCH R23とCINEBENCH 2024はテスト内容が異なるため、同じ単位のスコアーだが比較できない点は注意してほしい。
結果は、全コアを使って計算するMulti Coreテストが33509pts、1コアだけ使うSingle Coreテストが2236ptsとなった。過去データからCore i7-14700Kのスコアーを見てみると、Multi Coreテストが31564pts、Single Coreテストが2154ptsと、どちらもCore Ultra 7 265Kのほうが優秀だった。SMTが廃止され、電力制限で無理せずとも、前世代から順当に性能が向上している、と考えて良さそうだ。続いては、CINEBENCH 2024の結果も見てみよう。
こちらは、Multi Coreテストが1922ptsで、Single Coreテストが135ptsという結果だ。一方で、Core i7-14700KはMulti Coreテストが1772ptsで、Single Coreテストが125pts。負荷がCINEBENCH R23よりも高くなっているためか、どちらのテストでも性能上昇幅は約8%ほどと高くなった。
続いて、「3DMark」の「CPU Profile」テストを試してみよう。これは1、2、4、8、16、最大と、同時実行スレッド数ごとにテストを繰り返し、その時のCPU性能をスコアー化してくれる。こちらのCore i7-14700Kのテスト結果は過去データということもあり、CPU Profileのバージョンが異なる。テスト内容が変更されている可能性もあるが、今回は同じものとしてそのまま比較した。
1~8スレッドの結果を見ると、Core Ultra 7 265Kのほうが約6~11%くらいスコアーが高い。コアあたりの性能が高くなっているぶん、スコアーが増えていると考えられる。また、2つのCPUはどちらもPコア×8+Eコア×12という構成。8スレッドまでのテストではPコアが優先的に使われているようで、ほぼリニアに上昇しているのだろう。
面白いのが16スレッド時。Core Ultra 7 265Kでは8スレッド時と比べ60%近くアップしているのに対し、Core i7-14700Kは30%くらいしかアップしていない。これはSMTによる論理コア、もしくはEコアが使われるようになってきたからだろう。SMT廃止とEコアの改良による性能アップは、かなり効果が高いようだ。
ただし、最大スレッド時には、2つのCPUの性能差は約18%まで縮まる。Core Ultra 7 265Kの最大20スレッドに対し、Core i7-14700KはSMTを含め最大28スレッドの同時実行が可能となるため、差が縮まったと考えられる。とはいえ、SMT廃止の影響は小さく、Core Ultra 7 265KはCore i7-14700Kとマルチスレッドもシングルスレッドでも、優位に立てるポテンシャルを秘めていることがわかった。
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