ベースの性能は高くないが日常使いに不満はない
続いて性能面を確認してみよう。チップセットはMediaTekのミドルクラス向けとなる「Dimensity 7300」で、メモリーは8GB、ストレージは256GB。SIMトレイにmicroSDのスロットがあるので、ストレージは2TBまで拡張することが可能だ。
実際の性能はどうか。いくつかのベンチマークやゲームで確認してみたが、性能はミドルクラス相応といったところ。それゆえ操作性に不満を抱くことはなく、またディスプレーの解像度がFHD(1080×2400ドット)で、120Hzのリフレッシュレートに対応していることもあり、性能は低いながらも、ゲームは比較的快適に遊べた。
スマートフォンでもう1つ、重要な要素となるカメラはどうか。CMF Phone 1のカメラは、背面のメインカメラがソニー製のイメージセンサーを搭載した5000万画素/F値1.8の1眼構成で、もう1つカメラを備えているがこちらはポートレート撮影用のセンサーとして活用がなされているようだ。
望遠カメラだけでなく、超広角カメラも搭載していないため撮影シーンの幅は広くないが、5000万画素という画素数を生かしてデジタルズームで10倍までの撮影は可能。もちろんポートレート撮影やナイトモードなど、基本的な撮影機能は対応しているのでスナップショット用途であれば十分だろう。
フロントカメラは1600万画素/F値2.0(EXIF値より)。こちらも機能・性能はベーシックなものだが、ポートレート撮影やビューティーモードなど基本的な機能は押さえている。
他の機能・性能を確認すると、バッテリーは5000mAhと大容量だが、急速充電は33Wまでの対応となり、ワイヤレス充電にも対応していない。また防水・防塵性能はIP52と生活防水レベルで、FeliCaはおろかNFCにも対応していないことから、スマートフォン決済はQRコード決済一択ということになる。
プラチナバンド非対応の影響をKDDI回線で試してみたが
案外にもつながらない場所はあまりなかった/h2>
CMF Phone 1を日本で利用するうえで、非常に気になるのはモバイル通信である。CMF Phone 1は5Gに対応しており、物理SIM(nanoSIM×2)のデュアルSIMで、1つのSIMスロットはmicroSDとの排他使用という形が取られている。
だが最大の問題点は対応する周波数帯(バンド)だ。ドコモが使用している5G向けの4.5GHz帯(n79)に対応していないだけでなく、4GでもドコモとKDDIのプラチナバンドである800MHz帯(バンド19、バンド18/26)にも対応していない。
800MHz帯は、2社が全国を最も広くカバーするのに使用していることから、この周波数帯が使えないということは2社、それに加えてKDDIの800MHz帯をローミングで活用している楽天モバイル回線の利用に大きな制約が生じるということだ。
では実際のところ、日常利用にどの程度制約が出るのだろうか。筆者が2回線(UQ mobile、povo)保有しているKDDI回線を対象として、プラチナバンドでしか通信ができなさそうな場所で実際に通信ができるのかどうかを、800MHz帯非対応のCMF Phone 1と、対応しているスマートフォン(Pixel 7)を用いて比較した。
まずは長距離を移動する新幹線だが、ここ最近の出張で筆者が乗車した東海道新幹線(東京~浜松)と北陸新幹線(金沢~大宮)で確認したところ、どちらの端末もKDDIの800MHz帯であるバンド18をほぼ掴むことはなく、2GHz帯(バンド1)や1.7GHz帯(バンド3)、そしてもう1つのプラチナバンドである700MHz帯(バンド28)でカバーがなされていた。
長いトンネルの中などでやや通信しづらくなるタイミングは生じるものの、沿線は800MHz帯以外でのカバーがしっかりなされており、CMF Phone 1でも通信品質に大きな差は生じなかった。
続いてKDDIのエリアマップから、2GHz帯や1.7GHz帯でカバーがなされておらず、800MHz帯でのカバーが主と見られるエリアを探し、そちらで通信ができるか比較してみることとした。具体的には東京都の東大和市、より分かりやすく言えば埼玉西武ライオンズの本拠地「ベルーナドーム」の南側にある多摩湖周辺のエリアだ。
こちらは緑地や森林の公園が多く、森林内では高い周波数帯の電波が入りにくいと想定されることから、800MHz帯に対応しないCMF Phone 1には不利……と思われたのだが、実際には大半のエリアで問題なく通信できた。その理由は700MHz帯でのエリアカバーが意外と進んでいたためで、800MHz帯非対応だからといって完全に圏外になることはなかった。
では、都市部でも電波が届きにくいとされる地下はどうか。地下街が多い神奈川県・横浜駅で実際に試してみたが、こちらも800MHz帯だけでなく2GHz帯でカバーされているエリアが多く、古いビルの地下の奥などではやや厳しいケースも見られたが、それでも圏外になることはなかった。
以上の結果から、少なくともKDDI回線では、都市部や主要鉄道の沿線であれば800MHz帯が利用できなくても、他の周波数帯でカバーできる体制が整っていることから大きな不満を抱くことはなかった。ただNTTドコモ回線の場合は異なる結果となる可能性があるし、800MHz帯のみでカバーされている場所が多い地方や山間部、離島などで比較した場合は状況が大きく異なることも考えられる。
それゆえ、都市部からほぼ出ることがないというのであれば話は別だが、CMF Phone 1をどこでも安心して利用したいのであれば、プラチナバンドの900MHz帯に対応しているソフトバンク回線一択であることは間違いないだろう。
【まとめ】着せ替えコンセプトは面白いが
日本のスマホユーザーが利用するには不満が残る
まとめると、CMF Phone 1はデザイン面での特徴が非常に際立っており、カバーを変えて外観を変えられるというコンセプトが面白いことは確かだ。現状ではカバーやオプションの選択肢は限られているが、もっと多様なカバーが登場すれば着せ替えの楽しさが一層増すだけに、今後オプションが追加されることに期待したい。
ただ一方で、日本人が利用するのに適したスマートフォンか? という点には疑問が残る。プラチナバンドへの対応がなされていないだけでなく、横幅が広くデザイン的にも片手で持っていて疲れやすい点は、片手持ちでの利用が多い日本人が利用するうえでマイナスポイントといえる。
やはり国内向けカスタマイズをしていないことが、少なからず影響している。Nothing側も低価格とスピーディーな製品投入を重視し、日本での使い勝手はある程度割り切ったのだろうが、それだけに日常使いのスマートフォンとしてはオススメしづらいと感じてしまうのが残念だった。
「CMF Phone 1」の主なスペック | |
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ディスプレー | 6.67型有機EL LTPO 120Hz対応 |
画面解像度 | 1080×2400 |
サイズ | 約77×164×8mm (ヴィーガンレザーは9mm) |
重量 | 197g(ヴィーガンレザーは202g) |
CPU | MediaTek Dimensity 7300 |
内蔵メモリー | 8GB |
内蔵ストレージ | 256GB |
外部ストレージ | microSDXC(最大2TB) |
OS | Android 14(Nothing OS 2.6) |
対応バンド | 5G NR:n1/3/5/7/8/20/28 /38/40/41/66/77/78 4G LTE:1/3/4/5/7/8 /20/28/38/41/66 W-CDMA:1/4/5/8 4バンドGSM |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
カメラ画素数 | 5000万画素+測位センサー イン:1600万画素 |
バッテリー容量 | 5000mAh(33W対応) |
Qi | × |
NFC | × |
防水/防塵 | ×/△(IP52) |
生体認証 | ○(画面内指紋) |
SIM形状 | nanoSIM×2 |
USB端子 | Type-C |
イヤホン端子 | × |
カラバリ | ブラック、ライトグリーン、オレンジ |
価格 | 4万4800円 |
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