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ウイングアーク1stの「Updata Now 24」基調講演パート1

生成AI導入の壁 超えるには脱プロンプトと認識型AIの活用が必要

2024年11月08日 09時00分更新

 「生成AIを活用し、DXを成果に結びつけよ」。2024年11月7日に開催されたウイングアーク1stのビジネスイベント「Updata NOW 24」の基調講演に登壇した同社 代表取締役 社長執行役員CEO 田中潤氏は、満員となった会場でそう訴える。課題だらけの日本で、いかに生成AIを取り込んだDXを進めるか。ウイングアーク1st流の生成AIへの向き合い方をアピールした。

マクロの視座で見た日本の課題 生成AIを活用したDXで打破せよ

 Updata NOWは、帳票とBIを中心に手がけてきたウイングアーク1stの年次イベントで、ビジネスパーソンの関心に沿った講演を数多く揃えているのが見どころとなっている。基調講演に登壇した田中氏は、まず同社が今年の3月24日で20周年を迎えたことをアピールし、聴衆に謝辞。その後、「Data Empowerment Company」を標榜する企業として、例年と同じくデータから日本の現状を聴衆と共有する。

ウイングアーク1st代表取締役 社長執行役員CEO 田中 潤氏

 まずは人口の減少だ。総人口が減少に転じて久しい現在、再雇用や定年延長などの施策を打ってきたものの、来年からは労働人口も一気に減り始める。すべての都道府県で人口増は東京都のみ、横ばいは沖縄県のみで、残りの都道府県は人口減少が加速している。一方で、在留外国人は全国で増えつつあるが、それでも約300万人しかないため、労働力不足を補うには厳しい状況だ。

 続いて経済状況。GDPも下がり続けているが、物価は昨今5~6%レベルで上がり続けている。そのため、賃金が上がっても、物価の上昇に追いつかない。一方で、1世帯あたりの貯蓄額は増え、年収の3倍程度に拡大した。まだまだ現金と預金の割合は多いが、他の先進国と同じく個人投資も増加している。実際、NISAで運用されている総資産は45兆円以上なるという。「企業だけではなく、個人の考え方も大きく変わっている。われわれは大きな変化の中にいる」と田中氏は語る。

日本の人口と労働人口の推移

下がるGDPと上がる物価

 企業を取り巻く環境で、大きく変化したのは労働時間。1990年代からおおよそ半分になっているため、ある意味で生産性は上がっている状況だ。ただ、ITエンジニアの給与水準はまだまだ低く、国際比較では26位に甘んじており、すでに中国に抜かれている。また、DXの原動力となるデジタル人材に関しても、3000万人以上いる労働人口のうち8.5%しかおらず、圧倒的に少ないのが現状。95%近い企業がDXへの取り組みをなんらかしら進めているが、なかなかうまく行っていない現状が伺える。「企業は変わらなければならないということで、いろいろやっている。しかし、それを支えるデジタル人材はごく少数しかいないのが実態」(田中氏は語る。

労働時間は大きく短縮。ただ、ITエンジニアの給与は低い

95%近くの企業がDXを志向しているが、DXを支えるデジタル人材は少ない。

認識型の生成AIは、業務プロセスにAIを一体化しやすい

 こうした変化に対応すべるためには「もっとDXを推進し、成果に結びつけるべき」と田中氏は指摘する。そのために重要になるのが生成AIだ。「昨年のイベントでは生成AI元年という話をしたが、今やすっかり実用フェーズになっていると思う」(田中氏)。

 しかし、生成AIの活用はまだまだ。多くの企業が生成AIを使おうとしているが、データ分析や社内文書の作成など、具体的に生成AIを活用している企業はまだ1/4に足らず。多くは取り組み中や活用の検討、あるいは未着手というステータスにとどまっている。

 生成AIの導入における課題はなにか? 多くのユーザーは「プライバシーやセキュリティの懸念、法的リスクの懸念」や「技術的な知識やスキルの不足」を挙げる。理想は意思決定のサポートツールとして高度な機能を持ち、特別な知識がなくても誰でも使えること。「生成AIは使いたいけど、業務に適用しにくいという現実が存在している」と田中氏は指摘する。

 田中氏によると、一言で生成AIと言っても「生成型」と「認識型」の2つがあるという。前者の生成型は、いま生成AIと言って思い浮かぶ、テキストや画像、動画生成やRAG(検索拡張生成)などの技術。ただ、この生成型は結果が「不定」であるため、組織展開が難しく、実装の難易度を見誤りやすいのが課題。また、自然言語でプロンプトを作成するため、言語能力によってインプットに差が生じてしまうという問題もある。

生成AIの課題は「プライバシーやセキュリティの懸念、法的リスクの懸念」「技術的な知識やスキルの不足など」

生成AIといっても「生成型」と「認識型」があるという

 そのため、プログラムの作成や顧客窓口などでも用いられるが、多くは代筆や体裁修正、プレゼンや議事録作成など個人利用に向いた用途だ。「完璧な結果が戻ってこなくても、かなりいいところまで行ったら、自分の手助けになる。だから、個人的な業務に向いている」と田中氏は説明する。

 後者の認識型は、画像や映像解析、データ分析などの技術を指す。文字認識や不良データの抽出、データクレンジング、消し込みなどで、人をアシストするユースケースが多い。「インプットが決まっているので、精度が高く、アウトプットが強い。業務でも使いやすいはず」と田中氏は語る。

全製品に生成AIを組み込むウイングアーク1st

 「生成型と認識型をうまく使いこなさなければならない」「いろいろなAIの中で、どれがよいかを考えなければならない」「プロンプトを使いこなさなければならない」。これがウイングアーク1stが考える生成AIの壁だ。

 こうした課題意識から、ウイングアーク1stでは生成AIの利用において、「プロンプトを意識しない利用」と「認識型利用を最適化」という2つのアプローチをとる。同社のバーチャルアシスタントである「dejiren(デジレン)」は、1つのエージェントから複数のAIを使いこなし、社内のアプリケーションと連携し、チームでの業務を支援する。もちろん、同社の帳票系サービス「SVF Cloud」受発注サービス「invoiceAgent」、ダッシュボードの「MotionBoard」、BIツールの「Dr.sum」とも連携できるので、業務のハブとして利用することで、ワークプロセスがすべて集約されるため、業務プロセスと一体化しやすいという。

ウイングアーク1stが考える生成AIへのアプローチ

生成AIをチーム化して業務に活かす。ハブとなるdejiren

 たとえば、現場で商品を撮影し、画像認識で情報を収集。対象商品の情報をRAGで引き当て、社内で在庫を確認。あとは帳票管理をSVF Cloud、見積もり作成をinvoiceAgentで行ないつつ、見積もりの承認を経て、取引先へ見積もりを送付する。商品のピックアップと承認など人間がやるべき処理以外のワークフローを、一気通貫でdejirenがコントロールする。これがウイングアーク1stが考える生成AIの埋め込まれた業務のイメージだ。

 SVF CloudやinvoiceAgentでは、企業間を飛び交う帳票を管理するデジタル基盤を構築。保管、配信、受領、社内システムへの連携までを提供し、企業特性にあわせて、帳票業務全体の最適化を目指す。また、Motion Boardに関しても、生成AIを機能に大きく取り込んだ「Motion Board re:Act」のプレビュー版を12月から提供する。

 田中氏は、「生成AIの業務適用は効果的なDX実現の1つの解だと考えている」とコメント。「データとテクノロジーで世界を変える」を掲げ、企業の効果的なDX実現を支援するためにさまざまなプロダクトを提供するとアピールし、続く4人のゲストを迎える立場に回った。

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