チームワークマネジメントで「なんちゃってチーム」から脱却しよう
リーダーも現場も楽になる チームワークマネジメントを成功させる5つのポイント
ヌーラボが提唱する「チームワークマネジメント」を深掘りするコラムの第二弾。前回は「多少大げさだが、Backlogを導入すれば日本企業の悩みはだいたい解決する」として、自らの体験を元にチームワークマネジメントとBacklogの関係を探っていったが、今回はチームワークマネジメントを成功させる5つのポイントを考えてみた。
チームワークマネジメントがなければ、これからの企業は立ちゆかない
ヌーラボ ビジネスグロース部 部長 原田 泰裕氏との対談から構成した「課題だらけの日本企業がチームワークマネジメントに進む理由とは?」では、チームワークマネジメントの必要性やその考え方をお伝えした。異なる部署やチームでの共同作業を効率的に行なうための「チームワーク」と、個々の業務を可視化することで実現する「ワークマネジメント」を統合することで、日本企業の業務の進め方にどのような影響を与えるのか? まずはチームワークマネジメントの概念について、簡単におさらいしておこう。
まずチームワークマネジメントに必要なのは、「目的を設定する」「役割を明確にする」「リーダーシップを発揮する」の3つ。チーム全体としてなにを目指すのかを設定した上で、各人の役割を明確に定義する。その上で各人はその役割において主体的に業務を進め、周りのメンバーに対してもリーダーシップを発揮していく。
その上で、今まで個人で行なっていた業務をチームのタスクとして管理していく。個人利用で完結していたToDoリストをタスクとして共有し、マネージャーや他のメンバーは共有するタスクをベースにコミュニケーションを行なう。これにより、各メンバーは自らの業務やゴールが明確になり、マネージャーは業務の進捗やボトルネックを一目で把握できる。
今まで多くの日本企業は、業務が属人化されており、同じ組織の中でもサイロ化されていた。また、チームとしての目標や役割がきちんと設計されておらず、属人化された業務の成果が評価される仕組みとなっていた。つまり、チームと言いながら、単に「個別の業務を抱える人たちのまとまり」に過ぎなかったのである。同じチームでありながらこういう状況なので、異なるチームでの混成部隊であれば、さらにまとまりを欠くことになる。具体的には業務が漏れ、遅れ、品質にも問題が出てくる。
しかし、少子高齢化で人材不足が深刻になってきた昨今、こうした「なんちゃってチーム」での仕事はいよいよ限界を迎えている。少ないリソースで最大の効果を発揮する体制を構築し、必要に応じて外部のプロフェッショナルとコラボレーションしなければ、ビジネスの成長は見込めなくなっている。ここで重要になるのが、チームワークマネジメントという概念というわけだ(関連ページ:チームの力を最大化し、組織の競争力を高める 「チームワークマネジメント」by Backlogブログ)。
チームワークマネジメントの実践にまず壊すべき壁とは?
ここまで聞けば、「チームワークマネジメントを実践したい」という企業は多いはずだが、なにから始めたらよいかわからないという声も多いはずだ。実際、私も概念的には理解できるし、四の五の言わずにまずはBacklogから使ってみれば体得できるはずという考えもある(関連記事:多少大げさだが、Backlogを導入すれば日本企業の悩みはだいたい解決する)。そこでいくつかの事例取材や弊社の例を元に、チームワークマネジメント導入の5つのポイントを考えてみた。
1 ToDoリストがあるなら、目標や役割の設定は明文化すればいい
チームワークマネジメントで必要な目標や役割の設定は実は多くの組織で行なわれている。たとえば、顧客やパートナーを対象としたキャンペーン、イベントを行なう場合、売上やなんらかのKPIが設定されるのが普通だし、実現に必要な役割も担当ごとに設定されるはずだ。
問題は、これらが明文化され、共有されていないこと。そのため、チームワークマネジメントの第一歩としては、やはり目標と役割を明確に設定した上で、これらを明文化することが重要となる。従来からやっている会社であれば、決してハードルは高くないはず。こうした目標や役割の設定に関しては、異なる組織のメンバーで大型イベントを成功に導いたCMC_Centralの事例が参考になる。
関連記事:コミュニティイベントの回し方、CMC_Centralの舞台裏を運営チームに聞いてみた
2 タスクが属人化されている場合は、共有できる体制に
ワークマネジメントのハードルと言われるタスクの登録だが、実は個人レベルではToDoリストという形で行なわれている可能性が高い。ただ、問題はこれらが共有されないこと。ビジネス手帳や手元のツールで行なわれているため、外部からは業務が伺い知れない。「個人の仕事だから共有する必要がない」と考えるユーザーも多く、特に営業部門の場合、個人の成績に関わる情報ということで、共有するモチベーションが湧かないことも多いという。これではいつまでの業務は属人化のままだ。
こうした職場の場合は、まず業務がチーム戦であることを認識してもらわないと、先に進めない。ここではマネージャーのリーダーシップが重要になる。自らのタスクを共有することで、タスクを共有することで、メンバーに同士がフォローし合う体制が構築でき、チーム全体で成果を上げていく必要性をきちんと納得してもらわなければならない。また、導入初期段階においては、マネージャー自身がメンバーにヒアリングを行ない、タスクを起票した上で、役割をそれぞれ割り当てる必要がある。
3 チームワークマネジメントを導入しやすい業務とは?
チームワークマネジメントは期間を限定したプロジェクト型の業務でも、日常的に行なうルーティンワーク型の業務でも活用可能な手法である。プロジェクト管理ツールとして知られるBacklogも、ルーティンワーク型の業務でも活用されている。とはいえ、未導入の企業が試すのであれば、期限や納期が決まっているプロジェクト型の業務での利用がお勧めだ。具体的にはキャンペーン、サイトの構築、イベントなどが挙げられる。
理由はいくつかあるが、複数の部署や外部の業者が参加するプロジェクトの方がコミュニケーションの課題が大きい分、チームワークマネジメントのメリットを受けやすく、プロジェクトの「型」が決まっている分、導入しやすいというメリットがあるからだ。まずは自社の業務を洗い出し、プロジェクト型の業務からスタートしてはどうだろうか?
4 やっぱり重要なバックログスイーパーの存在
Backlogで課題を起票し始めると、当然ながら数多くのタスクが並ぶことになる。可視化したはいいが、優先順位を付け、緊急度やスケジュールに応じて着実にこなしていかない。手が付けられない「ゾンビタスク」が数多く生まれると、チームの足を引っ張り、納期やクオリティにも影響を与える。こうしたバックログ(残務)をなくしていくのが、原田氏の対談でも言及されていた「バックログスイーパー」である。
バックログスイーパーは残っているタスクを洗い出し、担当者をせっつくだけの業務ではない。それならツールにやらせればよいからだ。なぜタスクが詰まっているのか? 可視化されていないタスクはないのか? なぜタスクに手を付けられないのか?などをヒアリングし、ときには上司や他メンバーへの不満などを吸収したり、解決を導くために壁打ち相手にならなければならない。そのため、新人がいきなりやるのは難しいので、最初はチームリーダークラスの動きをトレースするのがよい考える。適性もあるが、チームに世話付きのベテラン社員などがいれば、お願いしてもよいのではないか。
関連記事:バックログスイーパーの恩田さんに、タスク管理成功の秘訣を聞いた
5 チームワークマネジメントでは会議を有効活用
チームワークマネジメントで特に重要だと考えられるのが、会議の有効活用である。Backlogで業務が可視化されているわけだから、マネージャーやメンバーはつねに進捗を追うことができる。それでもあえて会議を行なうのは、やはりチーム全員が定期的に意識合わせをする必要があるからだ。
実際に参加したわけではないが、Backlogが中心に据えられた会議はシンプルで、効率的だ。プロジェクト全体やタスク、進捗業況が見える化されているため、マネージャーは会議で担当者にヒアリングする必要がない。単純に進捗のブロック要因を洗い出し、解決策を全員で検討すればいいからだ。進捗の遅れを詰めるのでなく、人員をあてがったり、やり方をシェアしたり、チーム全体で問題解決に当ることができるわけだ。
チームワークマネジメントはリーダーにも現場にもメリットをもたらす
こうしたメソッドとともに、実は一番理解してもらいたいのは、チームワークマネジメントがリーダーだけではなく、現場のメンバーにもメリットをもたらすという点だ。
さまざまなSaaSの事例取材を経て、特に中小企業の課題は人一倍理解しているつもりである。この中でよく出てくるのが、業務の属人化とコミュニケーションの課題。コロナ禍でツールは増えたのに、かえってやりとりが減ったり、誤解やいさかいを生むようなコミュニケーション不全があちこちで起こったりしている。
Backlogを用いたチームワークマネジメントは、業務を可視化し、コミュニケーションを促進する。業務の進捗を見渡せるため、リーダーは管理負荷の軽減を得ることができる。また、現場のメンバーはチームワークを実感できるため、心理的な安心感を持って業務に邁進できる。もちろん「管理のための手間が増える」と考える人も多いだろうが、結局のところ余計なミーティングが減り、会議が効率的に回り、自分のやるべきタスクが明確になるのだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう