行政機関のガバメントクラウドへの移行状況がAWSの発表会で明らかになった。(関連記事:移行期限迫るガバクラ、自治体・支援事業者の現状は? 300の自治体で利用されるAWSの場合)。名古屋市が「単独利用方式」を選択した背景やベンダーである日立システムズの支援体制など興味深いトピックが多かったが、注目したいのはやはりガバクラにおけるAWSのシェアの高さだ。検証事業で採択されている早期移行団体463団体のうち、300を超える自治体がAWSを採択しているという。これはもはや「一人勝ち」とも言ってよい状況だ。
なぜAWSなのか? 発表会に登壇した日立システムズはAWS採用の理由について「ドキュメントの充実」と「IaC(Infrastructure as Code)による作業の自動化」を挙げている。先日、JAWS FESTAで聞いた東広島市の講演でも、ガバクラへの移行を阻む課題の1つとしてエンジニア不足が挙げられており、作業の自動化はベンダーにとってもきわめて重要な要素。AWSはこの要件を満たしていたというわけだ。
ご存じの通り、現在パブリッククラウドの主戦場は生成AIに移っているが、Microsoft AzureやGoogle Cloudに比べて、AWSは生成AI分野を必ずしもリードしている立場ではない。しかし、それ以外はほぼ揃っている。シェアNo.1の実績と利用ユーザーの多さはやはり圧倒的だし、共有されている知見やドキュメントも豊富。また、AIへの注力をアピールする北米のAWS re:Inventに対し、日本で開催されたAWS Summitでは数年前から自治体へのフォーカス、クラウドの教育プログラムなど地味なトピックを取り上げてきた(関連記事:4年ぶりのリアルAWS Summit 基調講演は生成系AIとパブリックセクター)。AIよりも重要な要件が多いガバメントクラウドの領域においては、その取り組みがきちんと成果に結びついているように見える。
文:大谷イビサ
ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。
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