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CMC_Centralで聞いた経営者から見たコミュニティ

コミュニティを運営してないクラメソとさくら でもコミュニティは事業の根っこにある

2024年10月20日 16時00分更新

どんなにいいコミュニティを作っても、事業成長しないこともある なぜ?

 続いて事業成長にコミュニティはどう役立つのか? 横田氏は、「20年やって思ったのは、どんなにいいコミュニティを作っても、事業が成長しないこともある」と断言。例に挙げたのは、横田氏が小島氏と出会ったAdobe Flexの例。「コミュニティはすごくいい感じに仕上がったんでですけど、いかんせんマーケットが小さすぎて、しぼんだときに、コミュニティもしぼんでしまった」と振り返る。あくまで「成長マーケットにあるプロダクトやサービス」が前提としてあることが大事だという。

 これに対して田中氏は、「成長しないマーケットでプロダクトを作り続けるのは、経済合理性の観点からできなくなることの方が多い。そんなときにコミュニティやっていたら、『次のバージョンはいつ出てくるんだ』とか、『なんでサービスやめたんだ』という話になる」とコメント。伸びている分野でコミュニティを作り、フィードバックを得ることで、LTVを高める機能強化を得ることが重要」とコメントする。

 もちろん、なかなか成長しない市場もある。田中氏は、「ユーザーのロイヤリティが高ければ、『今伸びてなくても、将来伸びるのでは?』という気配は醸し出されることがあるかもしれない。そう言う意味では、コミュニティマネージャーはカナリヤのような役割がある。この先、会社がつぶれるようなことになるのか、希望が待っているのか、(コミュニティマネージャーは)プロマネにフィードバックできるといいのかもしれません」と語る。

コミュニティは経営者にお客さまのウェットな声を届ける役割もある

 とはいえ、横田氏や田中氏のようなコミュニティに理解のある経営者は世間的にはまだまれ。そもそもコミュニティの存在を知らなかったり、コミュニティに不安を持つ経営者は多い。これに対して横田氏は、「それはコミュニティに対する不安ではなく、事業に対する不安」とコメントする。「経営者も葛藤している。このままアクセルをべた踏みしていいのか、バーンレートを抑えて、長く事業を続けるためにはコストは抑えたい。だから、コミュニティ活動はできれば手弁当でやってもらいたいと考えが見え隠れする」(横田氏)

 一方で、経営者にとってコミュニティはユーザーの声を吸い取る仕組みでもあるという。田中氏は、「経営者はある時期から数字しか見えなくなる。お客さまのある意味ウェットな声が聞こえなくなってしまう。だから、コミュニティマネージャーのみなさまは、経営者にそうしたウェットな部分をフィードバックすることで、数値しか見えなくなっている状態から開放させてあげる意味合いもあるのではないか」と語る。

 横田氏も「参加者の声を経営者に継続的に伝えると、経営者も自信につながる」とコメント。田中氏も「そうなんです。数字で自信をなくしても、お客さまのフィードバックをいただければ、このプロダクトはもっとアクセル踏めるかもしれないと思う。数字だけで経営するなら、誰だって経営できる。伸びる会社と伸びない会社がいて、数字以外で成り立っているとしたら、その多くの部分をコミュニティマネージャーが担なってもおかしくない」と指摘する。最後は経営者がなぜコミュニティにフォーカスすべきか、その理由をがっちり押さえてきた。

 フリーダムな2人の30分強のセッションは、予想通りあっという間に終了。決してきれいなまとめがあったわけではないが、豊富なエピソードの中に持ち帰るべき考えは多かったと思う。サービスやプロダクトのユーザーにとらわれない幅広いコミュニティの定義、お客さまの声を得るための仕掛けとしてのコミュニティなど、経営者ならではの意見が面白かった。両社はあえて自社でコミュニティを運営しないのも、事業の根っこにすでにコミュニティ的な発想が埋め込まれているからではないか。そんなことを思わせられたユニークなセッションだった。

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