週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

CMC_Centralで聞いた経営者から見たコミュニティ

コミュニティを運営してないクラメソとさくら でもコミュニティは事業の根っこにある

2024年10月20日 16時00分更新

コミュニティ運営していない両社 2人が考えるコミュニティの価値

 若い頃からコミュニティに触れてきた横田氏と田中氏。しかし、実は両社ともコミュニティ自体を運営していない。当然ながらコミュニティマネージャーもいない。両者の社員がいろいろなコミュニティに出入りしているのは知っているが、「自社サービスのユーザーコミュニティ」という点では確かに自ら運営しているわけではないのだ。

実は両社ともコミュニティ自体は運営していない

 「厳密に言うと、沖縄の拠点や今度の大阪のウメキタ地域にできる拠点やコミュニティを運営する人はいますが、いわゆるネット系の人が想像するようなコミュニティマネージャーはいません」と田中氏は付け加える。横田氏も「クラスメソッドのコミュニティはないです。それぞれの社員がいろいろ勝手にやっています」と語ると、田中氏も「そうですね。それに近いです」と応じる。

 では、両社はどのようにコミュニティと付き合っているのか? 横田氏は、「私にとっては会社もコミュニティ。ステークホルダーも全部コミュニティ。会社組織の枠を外れ、社員とかお客さまとかみんなグラデーションの中でコミュニティを形成している」とコメント。小さいときからいろいろな形でコミュニティに関わってきた横田氏からすると、人が集まるところそれはコミュニティなのだ。

 田中氏は、「私もJAWS-UGには最初よく出入りしていました。(AWSは)完全にコンペティターで、屋台骨をとられるかもしれないという考えはなく、なんなら私も『AWS万歳!』と乾杯の挨拶もしていました(笑)。だから、コンペティターも含めて、社会全体がコミュニティ」と語る。社内、取引先、業界、社会まで拡がるコミュニティの枠。2人のコメントで、コミュニティの定義はどんどん揺るがされていく。

 そんな2人のコメントにおののきながらも、河村氏は「コミュニティ自体は運営していないけど、コミュニティのパーツや要素を取り入れながら、組織の運営に活かされていと思うのですが、コミュニティで一番で大事な要素はどこですか?」と質問する。横田氏と、田中氏はそれぞれこうコメントする。

「お客さまと自社との対立関係、社員との対立関係、上司と部下の対立関係というより、同じ目標に向かって、横に並んでお互いに刺激を受けながら前に進んでいこうというのがコミュニティ。自社の製品や事業、興味関心のあるテクノロジーなどいろいろあるが、これを世の中に拡げて行こうという活動だと思う」(横田氏)

「立場を超え、壁を壊していく存在なのかなと。社長と社員、部署、製品単位など、会社の中でも壁は作られやすい。壁があると居心地がよくなるので、基本的にはグループになる。食事するときも100人より、2~3人の方が気心が知れている。でも、(コミュニテイは)その壁を壊し、グループを無理なく融合していける存在。精神的には壁を作ってしまう人でも、がんばらず、なんとなく壁を崩していける場所がコミュニティだと思います」(田中氏)

コミュニティは課題解決の場 LTVだって自社だけの指標じゃない

 横田氏は、コミュニティはあくまで課題解決の場であり、会社やサービスが中心になるわけではないという考え方。「なぜ事業をやるのか。金持ちになりたいとか、自社だけうまくいくのがゴールかと言われるとそうではないはず。事業を通じて、なにかをよくしたい、負の解消やクリエイティブなものを提供したいというもの。コミュニティ運営も、自らのKPIを達成するためにやるのはおかしいよねと。参加した人たちの課題をなんかしら解決しなければならないのではないか」と横田氏は語る。

 田中氏は、「最近あったうれしかったこと」として、競合にあたる会社の方からさくらのカスタマーサポートの担当とコミュニティを通じて仲良くなったという事例を紹介。「ずっとLTVの重要さを語っていました。カスタマーサポートがLTVを考えるって素晴らしいですね」と言われたと披露した。

「実はLTVの話は全社的に言っていること。要は10年、20年、長く使っているお客さまをサーバー屋として、大切にしましょうという話。この話をうちの社員がコミュニティで話してくれてうれしいし、そういうフィードバックが返ってくるのもコミュニティという触媒を通じてなんだろうと思う。自社を客観的に見ることができる」(田中氏)

 横田氏はこのコメントの中で、特にLTVという言葉に注目。「みなさんが使うLTVって、自社の数字でしか見てなくないですか? 自分のプロダクトを長く使ってもらうのが、LTVだと思うんですけど、コミュニティは20年以上やっていますが、自分のプロダクトやサービスがなくなっても、その人の課題の解決や業界の成長を実現するにはどうしたらいいか追求していきたいんですよね」と語る。

 田中氏は、「プロダクトに限定してしまうと、確かにLTVはよくないけど、さくらインターネットという会社やその周りの人たち、業界まで対象を広げて言うならば、特定の製品に押し込めることにはならないと思う」とコメントすると、横田氏は、「それってさくらインターネットがなくなっても実現したいことですか?」と質問すると、田中氏はこう答える。

「さくらインターネットという会社がなくなっても、そこで働いていた方やサービスを使ってインフルエンスしてくれた方が、(LTVを高める活動を)やってもらうことは期待したい。会社や製品はあくまで箱。アメーバのように離れたりくっついたりするし、社長だってコロコロ変わる。それより、そこにいた人たちが実現するモノがLTVだと思います」(田中氏)。

 ここで、なぜさくらインターネットにはコミュニティがないのか? という河村氏からの質問。これに対して田中氏は、「あったらあったでよかったかもしれない。でも、さくらインターネットの社是は『やりたいことをできるに変える』なので、社員が自らやりたいという話が出たらどうぞだし、コミュニティマーケ担当を置くのとはちょっと違うかな」とコメント。あくまで社員の自発性が前提というわけだ。

 一方、横田氏はなぜコミュニティに熱意を持って参加する人が多いのか?について持論を披露する。「コミュニティって、無償で、なんの報酬もなくて、リターンないと思うじゃないですか。でも、それくらいの方がたぶん協力者が増えるし、信頼してもらえるし、続けていくと、仕事の相談がめちゃくちゃ増えるんですよ。営業みたいな活動は相手も引いてしまうので、あくまで活動は利他。周りの人のための活動をやればやるほど、ぐるっと戻ってくるという成功体験を持っている人は、当たり前のように貢献する。『無償の愛』ではなくて、結局グルッと回ってくるからです」は語る。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります