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【対談後編】マカフィー栗山憲子社長×ITジャーナリスト高橋暁子氏

AIは自転車。転んだときのためにセキュリティという名のヘルメットを被れば良い

2024年12月26日 11時00分更新

文● せきゅラボ
提供: マカフィー株式会社

「自分のデータを誰にどこまで渡すか?」の判断が重要に

栗山 最近、食べているものを毎食入力することで、ダイエットするための食物バランスをサポートしてくれるアプリが人気ですよね。

 あのようなアプリは、自分のデータを渡すことで成り立っていますから便利な反面、「渡しても大丈夫なデータはどれか? 要望されても渡してはいけないデータはどれか?」といった、守るべき情報を理解しておくことが大切です。

 また、公式ストアにもウイルス入りのアプリが並んでしまうことがあります。いつの間にか課金されたり、アプリを買収してウイルスを混入させる手口も存在します。しかし、キャリアも公式ストアも責任を負いません。「あなたはOKしましたよね?」という話になってしまいます。

 ですから私たちは、自身でアプリが参照するデータを確認したうえで導入する必要があるわけです。パソコンやスマホにセキュリティ対策製品を導入しておくことで、ある程度は「このアプリはあなたのこんなデータを採ってますよ」という情報を受けとれます。

 今後は、裏で動くAIが、私たちの身体のデータを含むさまざまな個人情報を採っていくことが予想されますから、「誰にどのデータまでなら渡しても大丈夫か?」という判断はますます重要になるでしょう。

「どこまで自身の個人情報を差し出すのか、その判断が今以上に大切になるでしょう」(栗山社長)

── しかも政府はサイドローディング義務化に動いていますから、一層自衛する必要があります。

高橋 一方で、さまざまな管理をAIに担わせることで、利便性だけでなく、「代替できない自身の健康」を向上できる可能性が見えてきました。今後は本当の意味で秘書のようにAIを使える日が来ると思いますので、プライバシーの面を考慮したうえで、多くの人に使ってほしいです。

栗山 あくまでもコンシェルジュのようなかたちで使うべきです。AIに使われてはいけません。世間では「AIはアシスタントとして使えます」と言いますが、具体的にどう使えば良いのかを、たとえば学校で若いうちから教えておくべきでしょう。もちろん、私どももプライバシー保護の啓蒙活動をさせていただきます。

 AIを十全に使うことで、たとえ日本の人口が半分になっても、多分快適な経済活動ができると私は信じています。今はちょうど過渡期かなと。

日本ではAIのリスクが自分事になりにくいが……

青木 現在、米国ではAIに関する言説がさまざま飛び交っています。その理由は……。

栗山 大統領選挙でしょう。

青木 はい。対して日本ではそういった懸念についてあまり反応がありません。

栗山 まだ他人事だと思っているからでは。とは言え、先日WBSさんが取材でいらっしゃった際、日本政府もだんだんナーバスになってきた、みたいなお話をされていましたね。

 確かに日本人は安全神話と性善説に則っているので、もしかしたら(危機に対して)ちょっと鈍いかもしれません。ただ、AIは選挙戦での懸念よりも、生活に及ぼすインパクトのほうが(最終的に日本では)大きくなるわけです。

 つまり、日本では特定個人への投票を呼び掛けるためにテレビコマーシャルを作るといったメディアを巻き込む選挙戦をしないので、AIをあまりリスクと考えていないのです。

 ただ、今後の生活に与える影響は大きいので、日本ではポジティブな面を見せつつ「上手く使いましょう」という啓蒙を進めていくほうが向いているのかな、と思います。

高橋 リスクを感じないと「自分事」として感じられませんよね。日本では政治が遠いですし、ディープフェイクも国内ではポルノの問題に収束しがちです。

 あとは教育でしょうか。今は「子どもがAIを気軽に使って、能力を伸ばさずに作文を書いちゃうのが嫌だ」みたいな言説が主流ですけれども、実は若い親御さんたちには「AIを上手く使えるような子に育てたい」という意識があるんです。

 「使わせない」ではなく、「使いこなせるようにしたい」という親御さんの思いをアシストしていければ、将来的に人材が育っていくのかなと。

AIは自転車。転んだときのために
セキュリティというヘルメットを被れば良い

栗山 学校には「やっちゃ駄目」ではなく「学習方法を指導」してほしいです。ある程度の許容範囲の失敗は良いと思うのです。下手に禁止すると、裏で何をやるかわからないので。

高橋 こっそり悪いことをするかもしれない。しかも、親御さんのリテラシーはおおむね子どもより低いので、発見できません。

栗山 「やってごらん」と言った結果、「やらかしちゃった」「引っかかっちゃった」ということもあるかもしれません。そういうことも早いうちから経験させることで、AIを使いこなす人材に育ってほしいです。

 自転車に乗るのと同じだと思うんですよね。転んで怪我もするでしょうが、致命的なケガをしないようにヘルメットを被せるわけです。ITもセキュリティ対策を備えたうえで、「やってごらん」と。

高橋 それですよね。小さく失敗しながら、成功体験を積み重ねてほしい。大きな怪我をしないようにヘルメットは被せておく。このヘルメットがIT的にはマカフィーさんのソリューションなので、パソコンやスマホにしっかり被せておきましょうと(笑)

栗山 まったく怪我をしないというのも逆に怖いんです。さっき申し上げたように、人間は失敗から学ぶので体験も必要ですから。

―― 転んで覚える必要はあるけれども、致命的な怪我を負わせたくないのが親心なので、マカフィーさんのようなヘルメットがあることで安心できる、ということですね。

栗山 ヒザを擦りむいたらサービスデスクがあります(笑) 私どものアシスタントがあることで、安全に自転車に乗れるように、AIを使いこなせるようになれば良いかなと思います。

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