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クラウドが普通になった市場をベテランはどう見るのか?

実は寝てなかったサーバーワークス大石社長 クラウドビジネスの洞察すごかった

G-genのGoogle Cloud事業は順調 AIやモバイル、アプリ案件で強み

大谷:マルチクラウドというトピックだと当然、御社のグループ会社であるG-genのGoogle Cloud事業についても聞きたいと思います。

大石:おかげさまで順調に伸びているのですが、基本はAWSとGoogle Cloudを組み合わせて使うという領域です。政治的な理由でAWSを入れられない小売のお客さまの受け皿としてスタートしたのですが、今ではメインはAWSだけど、GoogleのBigQueryは使いたいというお客さまのニーズを満たせるようになっています。

ただ、最近はGoogle Cloud前提でシステム構築するスタートアップも出てきましたね。ここらへんはエンジニアに向けたGoogle Cloudの神通力が効いている気がしますね。

大谷:こちらも具体的な事例を教えてください。

大石:Google Cloudだと、カーテンを製造しているサンゲツさんの事例は面白いですね。カーテンって、めちゃくちゃ型番があるんです。だから、お客さまは古い生地を持ってきてこれがほしいと言っても、社員は一瞬わからないみたいとのことでした。そこで、サンゲツさんはVertex AIを用いてデータベースを構築して、お客さまが写真をくれたら、型番がわかるようにしています。

大谷:実に美しい「ザ・AIな事例」ですね。

大石:あと、風月フーズさんはkintoneからGoogle AppSheetにリプレースした事例ですね。kintoneってとてもいいサービスなんですけど、データとビューが一体化しているので、作った人以外がわかりにくいというデメリットがあります。でも、AppSheetはデータとビューを分離できるので、データはプロフェッショナル、ビューは現場の人が作るみたいな役割分担を実現しています。

やっぱりGoogle Cloudだと、AIやモバイル、アプリに近い案件が多いです。インフラだったらAWSで問題ない。だから、いい意味で使い分けだなと思います。

エンタープライズの世界では、これからもAWSが選び続けられる

大谷:現状、AWSとGoogle Cloudの案件はどれくらいの割合なんでしょうか。

大石:9対1の割合で、AWSの方が多いです。ただ、伸びしろが大きいのでGoogle Cloudの成長は高い。8:2、7:3くらいにはなるかもしれません。

大谷:Google Cloudを積極的に選ぶ理由って、どう分析していますか?

大石:Firebaseがあるので、生産的なモバイルアプリを作りやすいというのはありますね。

あと、先日AWSの資格12冠のG-GenのCTOが言っていたのは、AWSは歴史が古い分だけ、セキュリティ機構がアドホックになっているということです。AWSって最初IAMというIDベースの管理システムから構築されて、その後AWS Organizationsのような組織管理に移ってきています。

でも、Azureは最初からActive Directoryだし、Google Cloudも組織全体でセキュリティを管理する仕組みが備わっています。ゼロからスタートするのであれば、複雑なIAMやAWS Organizationsを覚えるよりもシンプルでわかりやすいと話していました。

大谷:なるほど。歴史の厚みがあだになっている部分があるんですね。

大石:とはいえ、AWSとGoogle Cloudを比べれば、サービスの安定度や運用品質はAWSの方が圧倒的に上です。ですから、エンタープライズの世界では、これからもAWSが選ばれ続けると思うし、当分ひっくり返らないと考えています。

インテグレーターの役割は「航空機を作る」のではなく、「運航すること」

大谷:クラウドに関してはユーザー事例も増え、ユーザーコミュニティも盛んになっていますが、ユーザー側の選択眼は磨かれてきたんでしょうか?

大石:うーん。そんなに選球眼が磨かれてきたとは思えないですね。というのも、これはわれわれの反省でもあるのですが、AWSしかやってなかったときは、選球眼はありませんでした。Google Cloudのことなんて知らなかったので。

でも、G-GenでGoogle Cloudをやるようになって、違いを理解できるようになりました。こういうワークロードはGoogle Cloudの方が向いていると感じる一方で、改めてAWSのよさやすごいところも理解できました。

大谷:その観点はあるかもしれませんね。しかも後発ですし。

大石:ゲーテの言葉に「母国語しか知らない者は、母国語すらしらない」というのがあるのですが、まさにそんな感じ。Google Cloudをやることで、よりAWSのことがわかるようになったというのはありますね。

大谷:AWS御三家と呼ばれるところも、Google Cloudやり始めているので、同じ感想持つかも知れませんね。

大石:お客さまもわれわれに相談しやすくなったと思います。AWSしかやってなかった今までは、AWSを使うことを決めているお客さましか来なかった。今はもっとフワッとした相談も増えてきていますね。現場で使っているメンバーの目利きは、当分インテグレーターの方が強いと思います。

大谷:SaaSの導入が増えていることもあり、クラウドを使うことにフォーカスが当っているような気がするのですが、そんな中でクラウドインテグレーターの役割って改めてなんでしょうか?

大石:「クラウド作る」に比べると、「クラウド使う」って簡単なように見えるのですが、単に技術の方向性が違うだけで、クラウドをきちんと使いこなすのは簡単ではないと思っています。

私はこれを航空機メーカーとキャリアとの違いで例えています。ボーイングは航空機を作っていますが、ANAやJALのように航空機を運航できるわけではないはずです。クラウド作るのはAWSに任せ、きちんと使いこなせるようにするのは僕らのようなインテグレーターの役割だと思っています。

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