kintoneユーザーによる事例・ノウハウの共有イベント「kintone hive 2024 nagoya」が開催された。
本記事では、3番手を務めた愛知県の山豊工建、高橋加奈氏によるプレゼン「キントーンで事務仕事を超効率化した話」をレポートする。
お金がない、誰もイメージできない状態から始めたkintoneでの効率化
山豊工建は、昭和57年創業の設計・建築事務所だ。愛知県および岐阜県にて、個人住宅をメインに、注文住宅の新築やリフォーム、外構、解体・造成などを手掛ける。
kintone導入前の同社の課題は「とにかくお金がない」に尽きたという。営業がメインの会社であるため、実際にお金を生み出さないと経費を使わせてもらえない。もちろんシステム開発のための予算もなく、パソコンに慣れている社員も少なくて、新しいシステムの導入に否定的な社員も多かった。なにより効率化を誰もイメージできていない状況だった。
そんな中で、パソコンに一番強かった高橋氏は、「とりあえず効率化しよう!後はよろしく」と、上司から無茶振りをされる。文句を言ってもしょうがないということで、高橋氏が挑戦したのが、kintoneによるアプリ開発だ。
「kintoneは『Excelをシステムにできますよ』という触れ込みだったので、ひとまず、よく分からない属人化されたExcelをシステム化してみようと思いました」(高橋氏)
他の社員は「私には無理無理」と手伝ってくれないため、高橋氏は孤独にブレストを繰り返した。
高橋氏がアプリ作成で心掛けた3つのこと
こうしてkintoneアプリ作成に着手した高橋氏。すると、「覚えるのが面倒」といった批判的な意見から、「こういうことも出来る?」といった建設的な提案まで、意外にも多くの反響が得られたという。「一人でこれらに対応しなければでしたが、効率化を考えることすらしてこなかった“当たり前をぶち壊すことができた”」と高橋氏。
社員の意見も聞きつつ、会社の課題にもあわせて、高橋氏がアプリ作成で心掛けたことが3つあるという。
ひとつ目は「分かりやすい見た目」だ。パソコンに慣れない社員から、「『どこにあるか分からん』『使いにくい』と言われるだろうなぁ」と想像しながら構築した。
具体的には、ポータルサイトのトップ画面にて、よく使うアプリをアイコンで配置。その隣には、各部署や利用用途に応じた「スペース(コミュニケーションやアプリを集約できる場所)」も用意した。ポイントはアプリのアイコンを「canva」というフリーソフトで自作したこと。アイコンの色味やスタイルを分けることで、色や形で覚えやすいようにした。
また、会議資料の一覧などは量が多くて探すのが大変なため、スペースに“リンクを貼る”ことで視認性を高めた。文字のリンクだけ並べるだけではなく、表やグラフなどが分かるアイコンを添えたり、スレッドで年度や担当者ごとに分けたりと、どこを見たらよいか一目で把握できる工夫を凝らしている。
心掛けた2つ目は、とにかく「作業効率」を高めることだ。効率化を進める上で、「全部入力しなくてもいいや」「俺が分かればいいよ」と言う、入力が苦手な社員をどうにかしたかった。
そこで、入力項目は最小限に留め、「文字入力は最終手段」であることを念頭にアプリを作成。ある申請フォームでは、文字入力は1回のみという徹底ぶりだ。キーボードに慣れていなくても、ルックダウンやプルダウンであれば、入力が早くなる。
もうひとつ問題だったのが、「報連相」を怠る社員が多かったことだ。同僚にも担当案件について何も言わないことがままあったという。そのために、レコード通知やプロセス管理を積極的に利用。その際、ChatworkやLINEなどに通知させると埋もれてしまうため、“kintoneの通知はkintone”で統一した。
心掛けたことの最後は、「お金を掛けない」ことだ。前述の通り予算がなかったため、有料プラグインは使わず、出来るだけ自身でカスタマイズした。すると「意外にメリットも多かった」と高橋氏。
「限られた方法でアプリを作るので、kintoneにめちゃくちゃ詳しくなりました。段々プログラミングにも興味を持ち始め、今では自分でカスタマイズもできるように。新しいことに挑戦して、できることが増えると、kintoneがもっと楽しくなっていきます」(高橋氏)
高橋氏は、最初はどう学べばよいか戸惑ったが、最終的には「Progate」というプログラミング学習アプリを活用。ゲーム感覚+実践方式で学べるアプリで、約3か月でプログラムの基礎を身に付けられたという。
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