愛嬌があり、信頼できる相棒であること
山野社長は、VAIOの目指すべきPCの姿を、映画「スターウォーズ」のR2-D2に例える。
R2-D2は、宇宙船を操縦し、機械の修理も行い、空間に立体映像が表示する最新機能を搭載し、敵の情報を収集し、保存することも可能だ。「重要なのは、賢いロボットというだけでなく、愛嬌があり、信頼できる相棒であること。VAIOが作るPCも、R2-D2のような存在になることを目指す」と語る。
VAIOは2023年3月に、商品理念として、「カッコイイ(Inspiring)」、「カシコイ(Ingenious)」、「ホンモノ(Genuine)」の3つを掲げた。R2-D2もこの考えに共通したものだと、山野社長は位置づける。
VAIOが仕事や生活における信頼できるパートナーとなることが、目指す将来のPCというわけだ。
VAIOは、10周年に迎えたのにあわせて、「あなたと進化する。VAIO」のメッセージを打ち出した。ここにも、信頼できるパートナーとしての役割を、より強固なものにしたいという意思が込められている。
「PCだけが進化する時代は終わった。ユーザーと一緒に、VAIOも進化させてほしいという思いを込めている」とし、「これから市場投入するVAIOのPCは、このメッセージに沿ったものになる。『これをやってきたか』といってもらえるような世界初を実現したい」と意気込む。
かっこ悪いものを作ってはいけない
VAIOでは創業10周年を迎えたのにあわせて、世界最軽量のモバイルディスプレイ「VAIO Vision+」を発売した。約325gという軽さは持ってみると感動を覚えるほどだ。そして、工夫を凝らした専用カバーは、外出先でもノートPCとの組み合わせで、上下2画面表示が可能なスタンドにもなる。ここにもVAIOらしさがある。
「目的は、世界最軽量のモバイルディスプレイを発売することではなく、外出先でも気持ちよく使ってもらえるための環境を実現することである。その結果として、世界最軽量を実現している」
発売1カ月前には、山野社長自らが、カバースタンドの作り直しを命じた。開発時点でも口を出すことがある山野社長だが、こんなにぎりぎりのタイミングで駄目出しをしたのは初めてのことだ。
理由は、VAIOが出す製品としては「カッコワルイ」ということだった。3つの商品理念のひとつに反するものだったのだ。社内には発売が間近なこともあり、これで行きたいという雰囲気もあったというが、山野社長は、そうした雰囲気を一蹴。奮起した開発陣は、新たなカバースタンドの形を作り上げてみせた。その結果、VAIOらしいモノづくりによる新たなモバイルディスプレイとカバースタンドが完成した。
7月1日に発売して以降の反響は予想以上で、早くも品薄となり、安曇野の工場では増産を始めているところだという。
10年の感想は、やっと離陸した
山野社長は、現在のVAIOの状況を「やっと離陸した」と比喩する。
「負のスパイラル」によって、このままでは生き残れないという状況からは脱却し、定番PCも事業もスタート。法人市場における評価も上昇している。
2023年度の国内PC市場全体が過去最低の出荷台数に落ち込んだが、そのなかでもVAIOは、2年間で2倍という売上成長を達成してみせたのは、その成果の表れだ。
山野社長は、「水平飛行のままでは、目の前にある山にぶつかってしまう。また、急上昇すると一気に失速してしまう。着実に上昇していくことを目指す」と語る。
VAIOでは、今後の成長に向けた企業体質の強化に取り組むほか、海外事業の拡大、周辺機器事業の展開、サービス事業の広がり、そして、2025年以降には、VAIO認定整備済PCによるリファービッシュ事業も本格化させる考えだ。
離陸したVAIOの次の成長戦略が楽しみである。
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