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ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」

2024年09月02日 08時00分更新

国内の業務用空調機器は日立GLSが一貫して提供、オフィスに加えデータセンターも

 今回のボッシュによる買収後も、国内の家庭用ルームエアコンは、事業体制がそのまま継続されることになるが、その一方で、JCHの業務用空調機器の開発および製造拠点である清水事業所は、日立GLSが取得することになる。

 これにより、国内の業務用空調機器は、日立GLSが開発から製造、販売、保守、サービスまでを、一貫して提供することになる。

 また、日立GLSに移管した清水事業所の新たな役割として。ボッシュによる新会社の世界各地における開発、製造拠点をサポートする。

 「ボッシュは、欧州をはじめとして、世界中に広範囲なフットプリントを持つ。これを活用して、日立GLS、ボッシュ、そして新会社が、競争力が高い日立ブランドの空調機器のグローバル展開を強化し、さらなる成長を実現できると考えている。研究開発についても、新会社と日立GLSが協業を進めていく」と語る。

 業務用空調機器を日立GLSに移管することは、日立製作所にとっても、大きな意味がある。

 日立GLSでは、ビル用マルチエアコンや、店舗・オフィス向けエアコンのほか、データセンター向けの設備用パッケージエアコン、冷温水を生成する空調機であるチラーユニットを提供しており、さらに、空調IoTソリューションである「exiida」などによる空調管理システムでも差別化を図っている。

 そして、この事業は、日立製作所が成長戦略と位置づけるLumadaにも大きな効果を与える。

 Lumadaは、照らす、解明する、輝かせるの意味を持つ「Illuminate」と、Data(データ)を組み合わせた造語で、日立製作所が取り組む「社会イノベーション」事業の推進役に位置づけている。名称の通り、顧客が持つデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための先進的なデジタル技術を活用したソリューションやサービスを指している。

 先ごろ発表した2024年度第1四半期(2024年4月~6月)決算では、全社売上収益に占めるLumadaの売上比率は27%。将来的には、全社売上の過半を占めるまでに成長させる計画で、「Lumada事業は全社利益創出の中心になる」(日立製作所の小島啓二社長兼CEO)と位置づける。

 ビル用マルチエアコンや店舗・オフィス向けエアコンを遠隔監視したり、予兆診断したり、さらには空気質を管理し、最適なビル空調やオフィス空間を実現するソリューションを提供するといったことが、業務用空調と連携したLumadaの取り組みとなる。さらに、日立が持つ人流ソリューションやAIとの連携により、人の流れに則した最適な空調管理を行うといったことも可能になる。

 さらに、日立製作所では、2024年度の重点投資領域のひとつに「データセンター」を掲げているが、ここにも業務用空調機器が重要な役割を果たす。

 生成AIの急速な普及に伴い、データセンターに対する需要が高まるとともに、GPUなどの高性能化により、冷却技術がますます重視されているからだ。

 日立製作所 執行役副社長 コネクティブインダストリーズ事業統括本部長の阿部淳氏は、「Global Boiling(地球沸騰化)に加えて、生成 AI の急速な普及や電力不足に伴い、データセンター、グリーンビルディング、コールドチェーンなど、あらゆる産業分野で Heating & Cooling に対する需要が高まっててる。空調事業は日立グループにとって戦略的に重要な位置付けにある。日立ブランドの高効率、低環境負荷の空調機器とデジタル技術を組み合わせた Lumada ソリューションをグローバルに展開し、地球環境の保全に貢献していきたい」とする。

 日立製作所は、2021年度までに大胆な構造改革を実施し、社会イノベーション事業を推進するためのポートフォリオ変革を進めてきた。その結果、2009年3月には22社だった国内上場子会社はゼロとなり、ABB のパワーグリッド事業の買収や、GlobalLogicの買収といった大型投資も相次いで行った。

 このときの事業再編の基本方針は、社会イノベーション事業を推進するための体制であること、コア事業にLumadaを据え、それを軸とした事業ポートフォリオにすることに加えて、高成長が見込め、高付加価値の提案ができ、一定のプレゼンスを維持できる市場であることを判断基準とした。

 日立製作所の加藤知巳執行役専務 CFOは、「その事業にとって、なにが企業価値を最大化できるかを前提にした」と述べ、今回の業務用空調機器を日立GLSに取り入れたのも同様の考え方であることを強調。「主に、データセンター向け空調ソリューション事業の拡大を目指す」と述べた。

 日立製作所にとって、業務用空調機器事業は、社会イノベーション事業やLumada事業の拡大において、不可欠なピースと判断したというわけだ。

 これまでとは変わらない日立製作所の基本姿勢に則った空調機器事業の再編といえる。

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