ディーアンドエムホールディングスは8月21日、プレミアムクラスの完全ワイヤレスイヤホン「Pi6」と「Pi8」を発表した。価格はオープンプライスで、店頭での販売価格は4万5000円強、7万円台前半になる見込み。
カラーはPi6の場合「ストーム・グレー」「クラウド・グレー」「グレイシャー・ブルー」「フォレスト・グリーン」の4色、Pi8では「アンスラサイト・ブラック」「ダブ・ホワイト」「ミッドナイト・ブルー」「ジェイド・グリーン」の4色が選べる。
販売は8月下旬から9月中をめどに順次開始。ただし、フォレスト・グリーンとジェイド・グリーンのモデルは少し遅い12月下旬の販売開始を計画しているという。
ハイレゾ伝送対応の最高級ワイヤレスイヤホン
最高のフィット感と快適性、卓越した音質、高性能なノイズキャンセリング機能、プレミアムなデザインを兼ね備えた新型イヤホンとアピールしている。両モデルともBluetooth 5.4に対応、クアルコム製のチップを搭載し、aptX Adaptive(96kHz/24bit)に対応。フラッグシップモデルの「Pi8」はaptX Losslessにも対応している。
ダイナミック型ドライバーの口径はどちらも12mmと大きめ。ただし、Pi6がバイオセルロースを配合したものであるのに対して、Pi8はより硬質なカーボンコーティングの振動板となっている。ここは市場で評価が高いヘッドホン「Px7 S2e」と「Px8」の関係性に似ている。
また、Pi6はBluetoothのSoCが内蔵するDAC、アンプ、ANC機能を利用するのに対して、Pi8は高音質化のために独立したDAC、アンプ、ANC機能を採用している(いずれもアナログデバイセズ製)。
外観上はよく似ており、サイズも変わらないが、フェイス部が透明樹脂をガラスコートしたものとなり、その周りもゴージャスな雰囲気のフレームで囲っている。本体は7g+7gと非常に軽く、充電ケースもコンパクト。耳に触れる部分にラバーバンドを持ち、そこで支える装着の仕組みは快適で、長時間の使用でも負担が少なそうだ。
機能面では、Pi8は充電ケースにBluetooth送信機能がある。USBデジタルもしくはアナログ(3.5mm端子)経由で入力した音声信号を充電ケースでaptX Adaptive(96kHz/24bit)に変換して、Pi8に再送信できる。つまり、通常ではBluetoothで音楽が聴けない飛行機のイヤホン端子やハイレゾ品質でワイヤレス伝送ができないiPhoneなどでもハイクオリティに音楽を楽しめるということだ。
また、細かいがアプリで設定できるEQのバンド数がPi6が高域と低域の調整のみであるのに対して、Pi8は5バンド(0.5dB刻み)になっている。逆にTRUE SOUND MODE(ピュアモード的なもの)でEQの効果を切る設定も選べる。Pi8はケースのバッテリー残量も分かる仕組みだ。
既存のPi7 S2やPi5 S2との比較でもデザインが大きく刷新され、ドライバーなども変更。aptX Adaptiveの伝送も48kHzから96kHzにアップしている。内部の性能も大きく向上している。具体的には最大2台のマルチポイント接続、IP54準拠の防塵防滴性能(従来はIPX4)、バッテリー時間の延長などだ(ANCオンでPi6は8時間、Pi8は6.5時間)。充電ケースのサイズは幅65×奥行き29×高さ52mmとややコンパクトになっている。Pi8はワイヤレス充電にも対応する。
通話用のマイクは、Pi6とPi7 S2は同じ通話ノイズ除去プラットフォーム、Pi8はフラッグシップ・オーバーイヤー・ヘッドホンPx8と同じ技術を採用している。Pi8はBowers & Wilkinsが独自に開発したANCアルゴリズムを含む新しいノイズキャンセリング機能も搭載しており、Pi7 S2から大幅な性能向上を果たしたポイントだという。この技術ではPx7 S2やPx8と同様、音楽再生の品位に影響を与えることなく、不要なノイズだけを可能な限り取り除く設計思想を守ったものとなる。
細かな話にはなるが、Made for iPhone(MFi)のサポートにより、iOSデバイスとの接続やBowers & Wilkins Musicアプリにイヤホンを追加する手順がシンプルになったという。加えて、Googleの「Fast Pair」(GFP)にも対応予定だが、そのためには発売後のアップデートが必要とのこと。国内ではPi7 S2とPi5 S2ともに終了し、販売は流通在庫のみとなるそうだ。
確実な音の進化を感じる、特に透明感がすごい!
短時間であるが、Pi8を中心に、Pi6、Pi7 S2と比較試聴する機会を持てた。まず操作感だが、本体がコンパクトとなり、装着しやすくなった。すべてのアンテナとマイクの配置を刷新し、安定したワイヤレス通信と優れた通話性能を実現したという。また、充電ケースが小型になったため、ポケットに簡単に滑り込ませられるようになった。
タッチで操作する機種だが、静電容量式のタッチボタンも触れられる面積を大きくとり、かつ高精度なセンサーを採用することで、タッチ操作の反応性と信頼性を向上させたほか、赤外線式の新しい近接センサーを採用し、従来よりも信頼性が高く、応答性の高い装着検出ができるようになっているそうだ。
実機では試せていないが、アプリを通じて「タップ&ホールド操作」のカスタマイズも可能。「音量調整」と「ノイズキャンセリング&音声アシスタント」のいずれかに割り当てられる。左側のタッチボタンの長押しで、ノイズキャンセリングとアンビエントパススルー(外音取り込み)を瞬時に切り替えられるようになったのは便利だ。
音については、ひとことで言うと「より一層クリア」になった。特にPi8は硬く反応のいいカーボン系の振動板を最小しているためか、エッジがかなりくっきりしており、硬質で付帯音の少ない充実したサウンドを聴かせてくれた。Pi7 S2もクールでHi-Fi的な再現が楽しめるのだが、Pi8と比較すると音が少し遠く距離感を意識させる音になる。ここは聴く人によって感じ方に差が出る部分かもしれないが、筆者は音の傾向がかなり違うように思えた。遠い音というのは能率が低めのヘッドホンなどでたまに感じる傾向と言い換えてもいい。
例えば、2Lのアルバム『stille grender』の1曲目「Carol of the Bells」では、空間に浮き上がるピアノの硬質なタッチ、コーラスの解像感などが非常に高く、かつ中域から高域まで歪み感をほぼ感じず、清潔で澄んだ音色を感じられるのが印象的だった。また、J-POPやロックなどの再生もよく低域寄り、高域寄りなど、際立った偏りのない、バランスの取れた再生音が好ましかった。
Pi6は音の追い込みがまだの状態の試作機とのことだが、Pi8よりは少し甘く柔らかい音の再現で、中域中心にふくよかに聞かせる方向性だった。ただし、輪郭が鋭く、付帯音も抑えている点は同様。音作りの方向感は近いものと言えそうだ。もっともPi6が下位モデルであるとは言っても、4万円台中盤の各社ハイエンド機と同クラス製品なので、クオリティはかなり高く、多くの人はこちらの機種でも十分に満足できるのではないだろうか。
実機を試して、音の進化が確実にあると思ったが、同時に装着感の良さも印象に残った。軽さに加えてラバーガードのフィット感も良好。そのデザインは民族、性別に相関関係がない人間の耳の形状を広く調査し、人間工学的なものに基づいて最適化したもので、多数の試作を経たものということだが、かなりよくなったと思う。ドライバーサイズが9.2mmから12mmに大型化(ただしPi7 S2はBAを含むハイブリッド構成)こともあり、音導管のデザインなども変わっているが、ここは6.5mm程度あったものが5.5mm程度に細くなっているという。カラーリングを選ぶ楽しさも含めて、より多くの人にアピールできる仕上がりになったのではないだろうか。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります