Xで災害時に情報を集めるのはもう無理?
ASCII.jpのYouTubeチャンネル特番からスピンアウトした「思わずヒヤッと/ホッとした、ネットにまつわる怖い話」を紹介する連載第40回。
今回は「SNSのインプレ稼ぎのせいで災害対応ができなくてヒヤリ、いやイラリ!」というお話をお届けします。
災害時にSNSはもう信用できない! ヒヤリからの失望
先日の大雨で私の住んでいる地域でも川が氾濫するなど被害が出ました。
親戚や友だちとはLINEで連絡できましたが、X(Twitter)で周辺情報を得ようにも、絵文字を羅列しただけのツイートが山ほど流れてきて役に立ちませんでした。SNSはデマが怖いと言いますが、デマ以前の問題です。もうだめですね。
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今回のヒヤリ案件は、災害時にできれば活用したいSNSなのに、デマと意味のない投稿が増えていて活用できないという、ヒヤリな現場における嘆きの投稿です。
XやInstagram、TikTokやFacebookといった代表的なSNSは、災害時に有益な情報発信をするユーザーがいて、そういった情報を収集することで周辺の災害規模を知ったり、それによって対策・行動ができます。
しかしながら、有事のSNSの投稿には、多数のデマが紛れ混んでいることが指摘されています。
2024年1月に発生した能登半島地震では「倒壊した建物に挟まれています。住所は××」などといったデマ投稿が横行する事態となり、さらにそのデマ情報をリポストしたり通報したりするユーザーが多数いたために現地の消防や警察は苦労したとのこと。
デマ投稿に加えて、さらに問題となるのは「インプレッション稼ぎ」「インプ稼ぎ」「インプレゾンビ」と呼ばれる悪質なユーザーたちの投稿です。
Xでは「クリエイター広告収益分配プログラム」が開始され、ポストのインプレッション(表示された回数)に応じて広告表示に応じた報酬が得られることになりました。
そのため、多数のユーザーが殺到する有事の際は、災害情報など注目を集めるであろう単語を挿入した無意味なポストを大量に投稿することでインプレッションを稼ぐ、つまりは不正な収益を得ようとする悪質なユーザーが後を絶たないのです。
悪質なインプレッション稼ぎのユーザーのなかには、そもそも日本語を理解していない海外ユーザーも少なくありません。明らかにデマとわかるポストをコピペして拡散したり、有益な情報に無意味なリポストをしたりなど、インプレッションを稼ぐためには手段を選びません。
今回の投稿者さんのように「これは有用な情報では?」と閲覧したポストが、単にニュース動画のコピペで、しかもリポストが絵文字で埋め尽くされていることもあります。
場合によっては、コピペされている情報や動画が、過去の災害映像(たとえば東日本大震災の津波映像)だったりすることも。
統計によると、Xの利用時間が世界で最も長いのが日本なのだとか。だからこそインプレ稼ぎやインブレゾンビといった悪辣なユーザーが日本における有事の際に殺到するわけです。そしてインプレゾンビには、日常的にアラビア文字やサンスクリット文字を使っているユーザーが目立つという統計もあります。
一刻を争うピンチの際に、そんな投稿は目にしたくありません。まずは投稿者の素性、投稿内容のソースを確認することがとても重要です。またXではインプレゾンビ対策の1つとして、日本語以外の言語を表示しないよう設定するという手法があります。
Xの設定画面で、「プライバシーと安全」→「ミュートとブロック」→「ミュートするキーワード」の「単語やフレーズを入力」で、アラビア文字やサンスクリット文字を登録すれば、インプレゾンビを効率的にブロックできます。
投稿者さんが不快に感じた絵文字については、登録することで一般のポストがブロックされる可能性もあるので痛し痒しではあるのですが……。
そして最終的には、災害時はSNSの投稿を信用しないことも重要です。代わりに情報のソースがはっきりしている、たとえば「NHKニュース・防災アプリ」から自分の住む地域の情報を得るのはいかがでしょうか。
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