数々のkintoneアプリで社内データをつなぎ全体最適化
そして数々のkintoneアプリが開発された。「工数管理アプリ」では、打刻システムと連携することで、入力速度や正確性を向上させた。ユーザーの入力の手間を省けるよう、人事労務システムと連携させて、出退勤の時間を表示する工夫も凝らした。
手作業で転記していた予実管理は、kintoneアプリ化することで、入力速度が格段に上がり、打ち間違えもなくなった。工数管理アプリによる人件費のデータを連携することで、利益も自動算出。このように入力したデータを連携した他アプリでも活用することで、全体最適化を進めていった。
「営業案件アプリ」では、いつでも誰でも営業案件の売り上げ達成率を確認できる。「社内承認アプリ」で承認された契約事項や請求事項を連携しているので、契約漏れや請求漏れも起きなくなった。「可視化アプリ」では、経営情報やプロジェクト情報、予実管理などを見える化。「顧客・パートナー情報アプリ」では、関連レコードで過去の契約を一覧化できるようにした。
「データ連携構造など、エンジニアとして工夫した点はたくさんあります。このように大規模開発をすることで二重入力と使いづらいDXツールの課題を解決できました」と牧氏。最後に残ったのは、外国人社員がツールを使ってくれないという課題だ。
外国人社員向けの定着はスモールスタートで少しづつ
外国人社員がツールを使ってくれない要因は、運用ルールの未整備、文化や言語の違い、海外勤務とさまざまで、一機に解決することは難しかった。そこで、この問題に関してはスモールスタートで立ち向かう。まずは社内承認アプリから使ってもらおうと外国人社員向けに説明会を開いた。
「誤算だったのが、(海外にいる社員は)あまり交通費申請をしないので、アプリの利用機会が少なかったことです。そこで今度は毎日利用してもらうために、『出勤アプリ』を作りました。弊社は『freee人事労務』で出勤の打刻をしていますが、時差対応していません。そこで、打刻種類を選択して保存するだけというシンプルなアプリを作りました。このように、少しずつ少しずつ解決に向かって取り組んでいます」(牧氏)
牧氏の思い描いた通りに社内のkintone導入は進んだが、運用が始まると予想外の効果も出たという。IT未経験の総務担当が、「人事部との情報共有ができてないんだよね。でもこれkintone使えばできるんじゃない?」と言って、自ら「入社者対応アプリ」を開発したという。
「この方には、今ではkintoneの運用・保守もお願いしています。まだ3か月程度ですが、すでにJavaScript以外は任せれられるようになったので、DX担当の私はさらなる飛躍に注力できます。今後は、建設プロジェクトマネジメントシステムを作り、社外関係者との情報のやり取りもできるようにして、建設業界全体のDX活性化に貢献したいです」と牧氏は締めくくった。
kintoneで大規模開発するのに求められる条件とは?
プレゼン後にはサイボウズのパートナー第1営業部 沖沙保里氏から質問が投げかけられた。
沖氏:社長がなかなか首を縦に振ってくれなかった時に、「責任を持ってやるんでやらせてください」とはなかなか言えないです。そこまで言い切れた原動力は何だったのでしょうか?
牧氏:このプロジェクトを始める前に現場にヒアリングしたのですが、皆、社長が言うから(kintone導入前のシステムを)使っているけど、使いづらいと口を揃えていました。やっぱりこの現場の声を何とかしないと、という想いからです。
沖氏:私たち営業もkintoneを提案するときに「スモールスタートからどうぞ」と言ってしまうことが多いです。参加者に大規模開発のここが良いよとメッセージを送ってください。
牧氏:大規模開発するなら2つ条件があります。ひとつは全体構成が決まってること、もうひとつは実現可能性が高いことです。全体構成が把握できていないなら、スモールスタートで目の前の課題から始め、kintoneでできるか分からないなら、やっぱりスモールスタートで試してみる。その両方を満たしてる部分だけ大規模開発するのが重要だと思います。
2025年3月末までの限定公開です
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