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kintoneで事務の“職人技”をデジタル化、バーコードによる入出庫も連携

マニュアル作ってもダメなモノはダメ 名古屋の整備工場が試したのはメリットの共有

手入力はひとつのアプリに入力するだけに 代車の場所もバーコードで把握

 まずは代車の行方不明問題に手を付けた。約200台の代車すべてにバーコードを貼り、ドライバーにAsReaderを使って読み取ってもらい、代車の所在地(〇〇工場、出庫中など)を把握できるようにした。この代車の入出庫状況はkintoneと連携させる。

AsReaderで代車の入出庫状況を把握

 そして、スケジュール管理は「作業管理アプリ」を通して登録する。作業する工場や使用する代車、作業日時などをアプリに入力すると、カレンダーアプリにも自動登録される。予定に変更があった場合も、アプリのデータを変更するだけで済む。

 カレンダーアプリでは、kintoneに高度なカレンダー機能を追加するプラグイン「カレンダーplus(ラジカルブリッジ開発)」を用いて、工場や代車、トラックなど複数軸でスケジュール確認できる。代車の入出庫状況も、カレンダー上で、一目で分かるようにした。

作業アプリに登録すると、カレンダーに複数レコードが自動生成され、作業区分ごとにスケジュール管理できる

 最後に入出庫カードの紛失問題だ。入出庫カードも作業管理アプリから入力できるようにして、帳票を出力するプラグイン「レポトン(ソウルウェア開発)」を用いて、工場でも印刷を工場できるようにした。さらに、画面を見るだけで、作業や売上のステータスが確認できる。

作業管理アプリの一覧画面、売上待ちになっている車両が一目で分かる

 「これが、私達が本当にやりたかったこと」と今井氏。これらの仕組みは、サイボウズのオフィシャルパートナーであるウィルビジョンと協力して構築した。手作業で行なっていたものが、ひとつのアプリに入力するだけで完結し、全てが解決したと思われたが……、最後の問題が立ちふさがる。

ベテラン整備士・ドライバーがkintoneを使ってくれなかった理由

 最後の壁となったのは新たな仕組みの定着だった。ベテラン整備士が、kintoneで入出庫カードが印刷できるようになったのに、古いカードを手書きで使い続けていた。マニュアルを渡して、使い方も一緒に勉強したのに……。

 なぜだろうと理由を聞いてみると、kintoneで印刷する入出庫カードには整備士に必要な情報が印刷されていなかったことが分かった。「事務員主導でアプリを作成したため、事務員にとって使いやすくても、整備士には使いにくかったのです」(大久保氏)。この反省を踏まえて、早速、整備士の意見をアプリに反映した。

ベテランの正則氏もkintoneを使えるようになった

 これで解決したと思った矢先にまた問題が発生。やっぱり工場に代車がないという連絡が。kintoneのアプリを見てみると、確かにその工場に代車がある。いろいろと確認してみるとドライバーがAsReaderで代車の場所を登録していなかった。マニュアルを渡して、使い方も一緒に勉強したのに……。

やっぱりなくなる代車

 話を聞くと、使い方は分かっていても、登録するメリットが理解できなかったという。代車の場所が正確になると、ドライバーの運行予定も正確に立てられると改めて説明。これで納得が得られて、ドライバー達に登録してもらえるようになった。

 「使う人全員に意見を聞くことが大事だと分かりました。どんなすごいアプリでも、どんな素晴らしいマニュアルがあっても、どう楽になるかを知っていないと使われない。今回のkintone導入の秘訣は、アプリを使う人全員にメリットを共有したことです」(大久保氏)

フジ自動車工業 FLフロント課 大久保利春氏

 今では整備士は、毎朝の朝礼でkintoneでスケジュールを確認するように。作業の状況が一目で分かるようになったことで、自主的に事務員に報告するよう意識も変わった。

 今回のkintone導入で、目標だった年間14日を大きく上回る、48日の工数削減につながり、職人の技をデジタル化しよう作戦は「大成功」を収めた。

パソコンを手にとってもらうところから寄り添う、それでも必要なメリットの共有

 プレゼン後にはサイボウズ 名古屋オフィスの三谷菜穂美氏から質問が飛んだ。

三谷氏:kintoneの導入はパートナーと一緒に進められました。今でも何かあったらベンダーにお願いしているのでしょうか。

今井氏:できることは自分達でやるようにしています。例えば、YouTubeで設定の仕方を勉強しながら、レポトンやFormBridgeなどは使えるようになっています。それでもできないことをパートナーに相談していますが、いつも快く支援してくれます。

プレゼン後のアフタートークの様子

三谷氏:メリットを全員に共有するという話がありましたが、どんな風に寄り添ったり、声をかけたりしたのでしょうか。

大久保氏:私は、もともと現場出身なので、トラックドライバーや整備士にもよく接していて、携帯電話やパソコンを使えない人が多いことは知っていました。パソコンを手に持って、隣で教えるというのを、分かってもらえるまで繰り返して、最後はどれだけ楽になるかを説明することで、皆使ってもらえるようになりました。

 

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