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それはASCIIオオタニ、ジョイゾー四宮社長が登壇したトヨクモkintoneフェスの一コマ

システム障害への対応、トヨクモクラウドコネクトの田里氏が問い詰められる

2024年07月25日 07時00分更新

 2024年7月5日、サイボウズの日本橋オフィスにて「トヨクモkintoneフェス2024」が開催された。対面開催となった3日目の基調講演はkintone+トヨクモ製品の失敗事例がテーマ。ASCII編集部の大谷が、失敗事例についてトヨクモクラウドコネクトの田里友彦氏を問い詰め、ジョイゾーの四宮靖隆氏を交えて、サービスの安定運用に向けてのkintone SIの役割を引き出すというユニークなパネルとなった。

最初はわりとほんわかスタートしたパネルだったが……

基調講演のテーマはなかなか聞けない「失敗事例」の話

 FormBridgeやPrintCreator、kViewerなどトヨクモのkintoneプラグインの活用や事例を披露する「トヨクモkintoneフェス」は今年で4回目。7月3日・4日はオンライン、5日はサイボウズオフィスでリアル開催となった。

 3日目の基調講演の「四宮社長とオオタニがトッティに吠える~失敗しないトヨクモ製品の運用方法~」では、ジョイゾー代表取締役社長の四宮靖隆氏、角川アスキー総合研究所 TECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ、トッティことトヨクモクラウドコネクト代表取締役社長の田里友彦氏が登壇した。

 まずは自己紹介。トヨクモフェスに毎回登壇している四宮氏は、「昨年のオンライン登壇は、あまりにもぐだぐだすぎて撮り直したので、今回はぐだぐだにならないようにしたい(笑)」と前向きなのかよくわからないコメント。TECH.ASCII.jp編集長の大谷はkintoneメディア「kintone三昧」をアピールしつつ、「今回のような失敗事例の話は、kintone hiveでは意外と聞けない。ぜひいろいろ持って帰っていただきたい」とまじめに語る。

 田里氏が代表を務めるトヨクモクラウドコネクトはトヨクモ製品とkintoneの安定運用を支援する。BPO(Business Process Outsourcing)やあるいはBPaaSを志向しているが、「人さえいればいいというBPOから、システムを核としてきれいな業務を作り、その前後もいっしょにやる」とサービスイメージを披露した。

「アクセス集中」「設定ミスやルール不備」「緊急時の備え不足」

 セッションの冒頭は、田里氏がkintoneやトヨクモ製品の失敗事例を披露する。田里氏は、「よくある失敗事例と書いてありますが、そんなにないです(笑)。でも、柔軟にアプリを作れるということは、想定外の使い方をされることがあるので、全体では1~2%くらいはある。全体で1万ユーザーくらいあるので、大変な数」と語る(どっちやねん)。

 その上で、失敗事例として田里氏は、「アクセス集中」「設定ミスやルール不備」「緊急時の備え不足」などを挙げる。

「アクセス集中」「設定ミスやルール不備」「緊急時の備え不足」

 たとえば、アクセス負荷による障害は、kintoneのAPI同時接続数の上限に起因するもので、トヨクモのFormBridgeやkViewerもおのずと影響を受けるという。「トヨクモの名誉のために言うと、kintoneの同時接続数の制限があるから、FormBridgeやkViewerのアクセス上限もある。別に限界とかじゃなくて」と田里氏は語る。ただ、実際にコロナ禍にワクチンの申し込みや抗原検査キットの申請にトヨクモ製品を利用した自治体では、アクセスが集中。障害が発生したり、データの登録に時間がかかってしまったという。

 これについて田里氏は、「これまでトヨクモは中小企業に向けて製品を提供しているつもりでいました。しかし、2020年以降のコロナ禍を経て、自治体やエンタープライズ企業がばんばん使うようになり、ありがたいことなんですが、想定していない使い方をするお客さまも増えてきたんです」と言い訳。とはいえ、エンタープライズや自治体でなくても、数千~数万の顧客にkintoneと連携したメールを送ると、接続制限がかかってしまうこともあるという。

 また、設定ミスやルール不備に関しては、自身の思った範囲を超えて、情報を公開してしまったというパターンが多い。ワクチンの申し込みで外部に情報を見せるためのkViewerの設定ミスで、個人情報が漏えいする状態になったこともある。「私たちもあとから聞くと、仕様通り動いているとしか言えないのですが、事前に相談いただければ、そういう作り方は危ないですよというアドバイスはできた」とこちらも言い訳風。いずれにせよ、Form BridgeやkViewerのURLを記載ミスしたり、ルックアップの絞り込み条件を設定しておかないと、個人情報が見えてしまう可能性があるという。

何を言っても言い訳がましくなっていくトヨクモの田里友彦氏

 では、問題が起こるとなにが必要か? 「自治体の場合は、お詫びやプレスリリースを出さなければならない。この労力を考えれば、どれだけ準備しても、準備し足りないことはない」と田里氏は指摘する。ユーザーやパートナーにもさまざまな影響を与えてしまうし、調査にも時間がかかってしまう。たぶんこれは事実だ。

アクセス集中はもはや想定外ではない 危機管理体制はやっぱり重要

 こういったネガティブな話を基調講演としてあえて時間をとって取り上げた田里氏。「どうですか?」と聞かれた四宮氏は、「トッティー(田里氏)の講演を目の前で聴いて終わるのかと思った(笑)」とコメント。「目の前に棒があったら、叩くしかないけど、iPhoneが目の前にあったら、いろんなところに情報を送りたくなるじゃないですか」(田里氏)というなぞのたとえ話に、四宮氏も、大谷も首をかしげる。

 それでも四宮氏は、「アクセス集中は大企業だけに限らない。量が大量なのか、瞬間のアクセスなのかの違いはあれど、中小企業でも大量アクセスを受けることはあり得る。そのときに、kintoneがボトルネックになりがちだが、FormBridgeはそれを前提とする設計にはなっているかなと。とはいえ、設定するのは人なので、単にフォームを作ってよかったね、だけではなく、どれくらいのアクセスを前提とするのか設計する必要がある」とコメントをひねり出す。

田里氏のなぞのリアクションに即時対応できるジョイゾー代表取締役社長の四宮靖隆氏

 その上で、「フォームの場合、コピーして、そのままテストもせずに運用してしまったがために、気がつくとデータが入ってこないとか、リリース直前にちょっとフォームをいじってしまったら、その項目のデータが入ってこないといったことをありえる。設定が簡単だからこそ、こういったことは気をつけなければいけない。データが入ってしまうと、リカバリ大変なので、運用前のテストはめちゃくちゃ気を遣わないと」とエンジニアならではの指摘を披露する。

 「そういう失敗事例って、実案件でけっこう起きます?」という田里氏に対して、四宮氏は「起きる前に提案やアドバイスでカバーできるよう、うちのメンバーも気をつけている」と安心のコメントだ。

 一方、大谷は「IT記者の観点からすると、アクセス集中って、本当はそんなに多くない。クラウドに最初に飛びついたゲーム会社はゲームの立ち上げでいきなりアクセススパイクするし、最近だと紅白歌合戦はテレビ観ながら、スマホ片手に視聴するので、やっぱりアクセスは集中する。ただ、今までは予想できるアクセス集中に対応することが多かった。今回の話だと、一般企業でもアクセス集中に対応しなければならない時代が来たということが興味深い。数千万~数百万じゃなく、会社によっては数千や数万でもアクセス集中。だから、みなさんはまずこうしたアクセス集中を想定外ではなく、起こりえると考えることが重要」とコメントする。

 その上で、「一言で障害対応と言っても、自ら対応できること、メーカー(ここではトヨクモ)に対応をお願いしなければならないこと、そして技術だけでは解決できないことの3つをしっかり分ける必要がある。製品の仕様や限界だから、自分ががんばっても対応できないこともあるし、ほかの人に対応をお願いした方がいいこともある。そこはkintoneもいろいろなパートナーがいるので、きちんと探した方がいい」と指摘。特に、事故が起こったときにどうするかといった危機管理体制は、kintoneやトヨクモ製品とは関係なく、きちんと準備した方がいいとアドバイスした。

前半はおとなしかったASCII編集部 TECH.ASCII.jp 大谷イビサ

フォーカスされてきた「継続的に安全なシステムを運用できるか?」

 続くテーマは、どうやれば継続的に安全なシステムを運用できるかという改善案。四宮氏は、「特に継続的には難しい。kViewerで見せていけないデータに印を付けておき、設定しておくことはできるけど、担当者が変わったり、フォームが増えちゃったら、ふとしたときに出ては行けない情報が出てしまうことは全然起こりうる」と指摘する。そのため、起こりそうなリスクを想定しておくのは重要だが、起きたらどうするかをつねに考えておかなければならないという。

 たとえば、FormBridgeを使って、顧客向けの見積もりシステムを作るといった場合、ふとした設定を間違えて、仕入れ値が出てしまうミスがあるかもしれない。「リスクを考えて、そもそもkintoneやFormBridgeを使わないとか、フォームを作らないといったところから検討している」と四宮氏は語る。

 田里氏が「お客さまに危機管理体制の話を提案したら、納得してくれます?」と聞くと、四宮氏は、「正直、システム39ではそこまでの提案はしないです。なぜなら、そこまでいくと経営者の判断が必要になるので。いきなりそこまでやりましょうは言えないけど、『そういうリスクはありますよね』『運用のドキュメントを整備した方がいいですよね』といったアドバイスはします」とコメント。

 システム39ではドキュメント整備まではやっていないが、使いやすいツールは紹介する。また、ジョイゾーに開発をすべて依頼する案件は基本的にはお断りしているとのこと。「ユーザーが自ら使えるようになるのが最終目的なので、言われたものをただ作るという案件はお断りしている」と四宮氏は語る。

ラストの7分、詰められた田里氏が語るトヨクモクラウドコネクトの価値

 ラスト7分、大谷は「セッションタイトルは『吠える』になっているのに、ここまで全然吠えてない」と指摘し、失敗事例について田里氏を詰め始める。以下は、セッションのラストまで対話形式でお送りする。

ほんわかしたパネルだったのに後半からいきなり殺気立つ

大谷:アクセス集中の失敗事例があったという話ですが、これってトヨクモさんの体制はどうだったんですか?

田里:おっ? うちのせいですか?

その日はうちのサービスがめちゃくちゃ遅くなっていると、朝に電話がかかってきて、調べてみたら特定のお客さんであることがわかり、何度か再起動させて動かしました。その結果、障害で止まるのではなく、遅延で済んだんですけど。えっと、なんと言えばいいんですかね。

大谷:これってお客さまとの連絡や連携はとれていたんですか?

田里:当日、知ったことが多いので、事前に知っていたことはあまりないですね。

四宮:吠えるというか、責めてますね(笑)。これって田里さんが連絡したんですか?

田里:別のメンバーが担当してましたね。

四宮:そのとき田里さんはなにやっていたんですか?

田里:座って休んでました(笑)

四宮:それは社内的にはどうなんですか?

田里:これがですね。確かに製品をご活用いただいて大変ありがたいんですけど、トヨクモって、メーカーなんです。今はFormBridge、kViewerともにこういうことは起こらないようになっています。ただ、お客さま1人1人になにかをするのではなく、私たちが想定したお客さまに対してサービスを提供するのがトヨクモです。

一方で、私がいま所属しているトヨクモクラウドコネクトは、お客さまの業務を成功させたり、課題を解消するというのを、まるっと請け負う会社です。アクセス集中や問い合わせフォームについてわからないとか、冒頭にBPaaSと言いましたが、なんらかのシステムを核にして、なんかしらキャンペーンを受付したい場合に全部まるごと請け負います。先ほどの回答でできなかった部分は相談してもらえば、できるようになります。これが答えです。

ドヤ顔でトヨクモクラウドコネクトの業務について語る田里氏

四宮:ここで拍手が欲しいんですよね(笑)

大谷:いや、目の前の参加者もなんだか疑わしい目線なんですよ。だって、先ほど全部請け負うとか言いましたが、全部なんて難しくないですか? なにができるのかをもう少しきちんと説明してほしいです。

田里:トヨクモクラウドコネクトの強みとしては、kintoneやトヨクモ製品を活用した速さ、専門性、お客さまとリスクを分散して、業務をどのようにデザインするかをいっしょに決めていきたい。

たとえば、万博や助成金の案件は、いきなり国や親会社から振ってきたりします。受付のシステムをあと3週間で作らなければいけないといった場合、トヨクモクラウドコネクトであれば、ハガキの配送から受付けサイトの構築、フォームの設置、メールの配信、受付け表まで、全部やることは可能です。もちろん、人員が豊富なわけではないので、外部とも連携しますが、トヨクモクラウドコネクトに言っていただければ、決められた範囲でいろいろやらせてもらいます。

四宮:うちもトヨクモクラウドコネクトとは、いろいろ協業し始めてます。正直、失敗をいっぱいしているので、ノウハウはめちゃくちゃ溜まっているはず。なのでトヨクモクラウドコネクトであれば課題に対して、いち早く的確に対応できると思っています。

じゃあ、ジョイゾーが競合するのかというと、そこは観点が違う。たとえば、先ほどの話だとトヨクモクラウドコネクトが情報の入力みたいなフロントをうまく作ってくれる。われわれは入ってきたデータをどのように業務に活かすのかというステップにいいノウハウを持っている。そういう意味でいい組み方ができると思ってます。

田里:はい。正直、話し足りないのですが、そろそろ時間に。

大谷:そもそもこのセッションの時間が短いのが失敗事例だったのでは?

田里:最後、バタバタしましたが、タスキ掛けていますので、会場でお声がけください。このあともトヨクモkintoneフェスをお楽しみください!

ほのぼのと殺伐が同居したパネルのグラレコ!

後半の議論もきちんとまとまってる!すごい!(登壇者目線)

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