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SORACOM Discovery 2024の基調講演は新サービス「SORACOM Flux」で持ちきり

ローコードツールと生成AIでIoTのイノベーションを加速させるソラコム

2024年07月19日 10時30分更新

 2024年7月17日、IoTプラットフォームを展開するソラコムは年次イベント「SORACOM Discovery 2024」を開催。基調講演には、代表取締役社長の玉川憲氏を始めとしたソラコムの面々がローコードツール「SORACOM Flux」をはじめとした新サービスやアップデートを発表。ゲストの声も交えて、IoTと生成AIが一気通貫にビジネスの価値を作り出す時代の幕開けを宣言した。

ソラコム 代表取締役社長 玉川 憲氏

売上の1/3はすでにグローバルから 生成AIはIoTの追い風に

 今年で9回となるソラコムの年次イベント「SORACOM Discovery」。3月に東証に上場して初となるSORACOM Discoveryは、会場を東京ミッドタウンに移し、展示ブースを大きく充実させた。「変える、今ここから-IoTとAIでつなぐ未来-」をテーマにしたイベントの基調講演には多くの聴衆が詰めかけた。

 基調講演に登壇したソラコム代表取締役社長の玉川憲氏は、創業以来掲げる「世界中のヒトとモノをつなげ、共鳴する社会へ」というビジョン、テクノロジーの民主化を目指すミッションを改めてアピールした。

 ソラコムは長らくIoTを簡単に使うためのプラットフォームを提供してきた。現在では200種類以上のパートナーデバイス、セルラーからLPWA、WiFiまで含めたさまざまなネットワーク、データの可視化やリモートコントロール、メンテナンスを容易にするクラウドサービスという3つの柱でサービスを提供している。

 現在、グローバルでのソラコム回線は600万回線を突破し、つなげるエリアは182カ国・地域、通信キャリアも417に拡大した。契約ユーザー企業はいよいよ3万を突破し、スタートアップや新規事業のほか、グローバルではIHIや三菱電機のような日本企業、現地企業の利用も増えた。「グローバルの売上はすでに1/3を超えるようになった」(玉川氏)とのことで、グローバルスタートアップとして着実にその地位を固めつつある。

600万回線を突破! つなげるエリアが182カ国・地域、キャリアは471へ

 活用事例は製造、ヘルスケア・介護、エネルギー、建設、店舗・小売、倉庫、コネクテッドカー、一次産業などあらゆる業界に渡っている。新事例としては、製造業のTHKはAIを用いた部品の故障予知ソリューション「OmniEdge」に、システックは燃料やCO2削減に寄与するトラック用の太陽光パネル「ロジソーラー」の監視に、Shizen Connectは蓄電池やEV充電池を束ねた仮想発電所を管理するエッジ端末の管理に、それぞれSORACOMを用いている。

 また、エアコンの温湿度管理を行なう「MELCLoud」で利用する三菱電機ヨーロッパ、スクールバスの乗り降りのカメラで見守るBusPatrolなど、新たな事例も紹介された。「米国ではスクールバスが法律で守られており、もし乗り降りの途中で車が通り過ぎたら、カメラの動画から車を検出して、罰金を送りつけている」と玉川氏はBusPatrolの事例について説明した。

スクールバスの乗り降りを監視するBusPatrolの事例

 事例を振り返った玉川氏は、「われわれのビジョンは、お客さまやパートナー様によって実現されていることを、この10年ずっと感じていて、感激している」とコメント。その上で、ソラコムのミッションであるテクノロジーの民主化が、デバイス、通信、クラウドに生成AIが加わることで、お客さまのイノベーションがますます加速するとアピールした。「リアルタイムに集まってくるデータでリアルタイムに意思決定し、世界がよりよくなってくる部分に、生成AIがはまりつつある。生成AIとIoTを組み合わせれば、さらにお客さまのイノベーションが加速すると確信している」と玉川氏は語る。

衛星通信プランを開始 いよいよ圏外がなくなる?

 続いて登壇したソラコム 上級執行役員 CEO of Japanの齋藤 洋徳氏は、ユーザー事例の共通点として、「現場とクラウドをつなぐために、通信だけでなく、プラットフォームを使っている」ともはや通信だけの事業者だけでないことをアピール。IoTのシステム開発を迅速に構築するために、ソラコムはデバイス、コネクティビティ、クラウドの3分野で必要な機能を22のサービスとして用意している。ユーザーは技術の再開発なしに、これらをレゴブロックのように組み合わせサービスを構築でき、本来集中したい自社の強みや価値創出に注力できるという。

ソラコム 上級執行役員 CEO of Japan 齋藤洋徳氏

 齋藤氏は、417キャリア、182カ国・地域で利用できるSORACOMのカバレッジの広さ、顧客のニーズに基づく迅速な開発サイクル、サービスローンチ以来2週間に1度のペースで行なわれる機能追加や改善などをアピール。顧客からのフィードバックやそこから得られた知見を3つのアプローチとして深掘りした。

 1つ目のキーワードは「あらゆる場所をつなぐ」。ソラコムは創業以来、顧客のさまざまな声に応え、コネクティビティを進化させてきた。「電力消費を減らしたい」という声には省電力通信のLTE-Mのプラン、「小さいデータに特化したい」という声にはLPWAやSigfox対応、「無線経由でプラン変更したい」という声にはサブスクリプションコンテナといった具合だ。その他、小型化のニーズに応えた組み込み型のSIM、無線/有線LAN、マルチキャリア、5Gなどへの対応も行なってきた。

コネクティビティ進化の歴史

 通信のカバレッジに関しては、2017年は120だったが、現在では182もの国・地域で利用できるようになった。とはいえ、国と地域という観点とは異なるカバレッジも求められてきたのも事実。たとえば「海の上でコンテナを監視したい」「人のいない荒野、砂漠など人のいないところで車をトラッキングしたい」「広大な場所にいる牛や羊の状態を管理したい」など、人がいないからこそ必要なIoTのニーズだ。

 こうしたニーズに対して、今回発表されたのが衛星経由での通信を可能にするSORACOM IoT SIMの新たなプラン「planNT1」になる。こちらは昨年7月に協業を発表したSkyloのNB-IoTネットワークを用いており、既存のセルラーモジュール(3GPPリリース17)で衛星にもつながる。SORACOM IoT SIMのサブスクリプションコンテナ機能を用いて、OTA(Over The Air)でサブスクリプションを追加できる。利用可能なエリアは北米、ヨーロッパ、オセアニアで、日本や他の地域については順次拡大する予定。「あらゆる場所でつながる世界に一歩近づけた」と齋藤氏は語る。

衛星通信のプラン「planNT1」をいよいよ投入

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