第234回
JACの整備部門をつないだkintone、心がけたのは業務とアプリのシンプル化
日本エアコミューターはkintoneで「世界一の整備チーム」を目指す
まずはkintoneに慣れるところから、そして生まれる「ホームラン」事例
晴れて整備部門に導入されたkintone。まず中井氏は、「はじめましてkintone」というアプリを作った。自己紹介をただ入力するだけだが、主要機能を満遍なく体験できる、kintoneに慣れるためのアプリだ。たとえば、名前には「ユーザー選択」、出身地は「ドロップダウン選択」、朝ごはんに食べるものは「チェックボックス」、好きな歴代飛行機は「ルックアップ」が使用されている。
こうして活用のスタートを切ったkintoneだが、さっそく革新派と保守派、2つの派閥が生まれる。部長の中井氏は、革新派を支えつつも、保守派を排除せずに温かく見守ったという。
ほどなく、革新派のひとりが手をつけたのが、情報の分断がチームワークの崩壊を生んでいたクリティカルパーツオーダーのアプリ。kintone化で、分散されていた情報は一か所に集約され、進捗状況は色分けされ一目瞭然に。整備士の起票と同時に、関係者にすぐ伝達されてメールでの連絡も不要になり、気になった点はオーダーに紐づきチャットでやり取りする。進捗で争うのではなく、kintoneで把握できるようになった情報を基に、ひとつ上のレベルで議論できるようになった。
「月の問い合わせ件数も100件から10件程度に減り、月の残業時間も60%削減できました」と、臼﨑氏もコールセンター業務から解放された。
情報の分散というわかりやすい課題を解決する“ホームラン”事例が生まれたことで、「kintone=便利」という図式ができ、保守派も「意外といいね」という空気に。ここからkintoneの利用が広がっていく。
心掛けたのは「業務のシンプル化」と「標準機能を使うこと」
kintoneアプリの作成が進む中で、整備部門は2つの方針を決定する。
ひとつは、kintone化する前に、まず業務をシンプル化することだ。「そのプロセスが本当に必要かどうか考えるチャンス」と臼﨑氏。クリティカルパーツオーダーでいうと、不要だったのは、ミス防止や情報共有のために重複していた承認フローだった。
この無駄なプロセスの簡略化には、kintoneの各機能が活躍した。添付忘れには「必須項目」の指定で、入力ミスには「自動チェック」や「計算機能」、情報共有は「条件通知」の機能で解決できた。
2つ目の方針は、できるだけ標準機能でアプリをつくること。「必要なのは“すごい”アプリではなく、“持続可能な”アプリ。作った人がいなくなると直せないアプリは、いずれ使われないくなる」と西上氏。kintoneの標準機能に合わせて、業務プロセスを見直した。
業務をシンプルにして、kintoneの標準機能にあわせるということは、無理をしない、楽な仕事に変えることにつながる。kintoneをきっかけに、DXの前向きなサイクルが生まれてきた。
このようなサイクルの中で、さまざまなアプリが生まれ、整備部門は変わっていく。安全には影響しない美観などの気になる事象を共有するアプリでは、小さな問題点も共有して解決する流れが生まれ、安全衛生や作業不具合予防をデータベース化するアプリでは、JALグループにとってもっとも大切な、安全性の層を厚くすることにつながった。
「業務がシンプルになり、さらに安全性の層が厚くなる。これを自分たちで考えて、自分たちで作ったという自信の積み重ねが、当初求めていたチームワークの強化に結びついた」と西上氏。整備部門は掲げていた、世界一のATR整備チームになるという目標の最初の一歩を踏み出すことができた。
「発表タイトルにある“結い”という言葉には、人と人、そして想いをつなぐという意味があります。これからも私達は文字通り大空を飛んで、安心と安全、皆様の大切な出会いをつなぎます。私達の今とわくわくする未来をつないでくれたkintoneと一緒に」(西上氏)
九州・沖縄地区の代表に輝いたのは………
ここまで6社のプレゼンが終わり、kintone hive 2024 fukuokaのファイナリストが、参加者の投票によって決められた。見事、九州・沖縄地区の代表に輝いたのは………日本エアコミューターの臼﨑氏と西上氏!2人は、サイボウズの年次イベント「Cybozu Days」内で開催されるkintone AWARDグランプリへの出場を決めた。
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