第234回
JACの整備部門をつないだkintone、心がけたのは業務とアプリのシンプル化
日本エアコミューターはkintoneで「世界一の整備チーム」を目指す
kintoneユーザーによる事例・ノウハウの共有イベント「kintone hive 2024 fukuoka」が開催された。
本記事では、トリを務めた、JALグループの航空会社である日本エアコミューター 臼﨑南海氏、西上正浩氏によるプレゼン「今と未来、繋ぐ~結いの空~」をレポートする。
「ドゲンかせんないかん」 チームワーク崩壊の危機はkintoneに託される
日本エアコミューター、通称JACは、JALグループに所属する航空会社のひとつだ。鹿児島県内の離島を中心に、大阪や兵庫、島根、愛媛、福岡、沖縄を就航している。
“地域の翼”として離島ネットワークを支えるJACだが、JALと比べると小さな企業だ。JALの391人乗りのジェット機に対して、JACでは48人乗りの「ATR」というプロペラ機を運航。社員数はJALの約1万3000人に対して、JACは421人だ。しかし、JALにも負けていないのが、kintoneの利用率。JACは、社員全員がkintoneのアカウントを保有する、kintoneのリーディングカンパニーである。
JACでは、運航を担うパイロットや客室を担当するキャビンアテンダント、バックオフィスである企画・総務部など、さまざまな職種の社員がいるが、kintoneの導入が始まったのは、整備部門からだ。飛行機が安全に飛ぶための点検・修理が主な業務である。
整備部門は、保有するATRにおける“世界一”の整備チームになることを目標に掲げている。同部門は、現場の整備士からなる整備部と、臼﨑氏と西上氏が所属するデスクワークの管理部で分かれており、何よりも重要だというのが双方のチームワークだという。
しかし、実際は整備部と管理部が日々言い争い、「世界一なんて夢のまた夢」と西上氏。原因は一言でいうと情報の分断だったという。
たとえば、臼﨑氏が担当する部品調達においては、予期せぬ部品交換に対応する「クリティカルパーツオーダー」という業務がある。整備士がメールなどで発注依頼書を送付し、臼﨑氏が紙で印刷して控えを戻す。そして、さまざまな承認を経て、発注されるといった流れをとる。同業務の問題は、情報が紙やメールで分散されていたことだ。
整備士からは、毎日大量の進捗の問い合わせが届き、臼﨑氏はひたすら調べるしかなく、緊急性も高いため他の業務はできず、結果残業続き。“コールセンター”のような日々で、仕事の消化で手一杯だった。とはいえ困っているのは現場。その状況は理解しつつも、チームワークは崩壊していたという。「私たちも望んでこうなっていたわけではありません。整備も管理のチームも一生懸命やって、変わらなきゃと思っていましたが、なぜだかこのような状況に陥っていました」と臼崎氏。
整備部門の救世主となったのは、JALからやってきた新しい整備管理部長の中井氏だ。「ドゲンかせんないかん」と思わずつぶやく状況の中、同氏が解決の糸口として見出したのが、JALでも利用実績のあったkintoneだ。変わりたいという整備部門の気持ちと、変えるための仕組みを用意するkintoneがマッチしたという。
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