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コミュニティの運営者や参加者の知見が集合!

8人のエキスパートがCMC_Centralで語ったコミュニティのパワーと勘所

2024年07月05日 09時00分更新

 2024年6月29日、コミュニティマーケティングのユーザーコミュニティであるCMC_Meetupは全国イベントであるCMC_Central 2024を開催した。会場となった愛知大学 名古屋キャンパスには、土曜日にも関わらず、約300名近くの参加者が集合。熱量高いイベントのイントロとなったパネルディスカッションをレポートする。

オープニングを務めた藤井さんとコジロウさん

コミュニティマーケティングの知見が名古屋に大集合

 「コミュニティマーケティングの実践者・成功者を増やす祭典」を謳うCMC_Centralは、全国で120回以上に渡って開催されているコミュニティマーケティングのコミュニティであるCMC_Meetup初の全国イベント。これまでCMC_Meetupで発信されてきたコンテンツが取りそろえられ、運営者や参加者が一同に介した。

 メインセッションは収容人数も多い愛知大学のコンベンションホールで開催。CMC_Meetupのダイジェストムービーの後、挨拶に立ったのはCMC_Central運営の総監督を務めた藤井麻由さんと運営のコジ ロウさん。アイスブレイクとして「どこから来たのか?」を会場に聞くと、地元名古屋や東京のほか、全国各地から参加していることがわかる。コミュニティの運営者のみならず、参加者もおり、さまざまな立場の人がコミュニティマーケティングに関心を持っていることがうかがえた。

CMC_Central実行委員会 総監督の藤井麻由さん

 実行委員のコジ ロウさんは対面で80回以上開催されているCMC_Meetupの実績をアピール。「これだけ回数を重ねてきたんだから、やっぱり1回集まりたいよねと。みんなが集まったらどうなるだろうと想像し、CMC_Centralが実現された」とコメント。また、総監督の藤井さんは「各地で盛り上がっているCMC_Meetupですが、なかなか情報の越境は難しい。各地で盛り上がっているCMC_Meetupを1ヶ所にまとめて、情報や知見を広げていくのが、CMC_Centralです」と説明した。

 サポーターと会場紹介の後に登壇したのは、CMC_Meetupの創設者でもあり、一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会の代表理事でもある小島英揮さん。早々に会場の参加者とともに写真撮影を済ませたあと、「キーパーソンと語るコミュニティマーケティングの未来予想図」と題して、ゲストスピーカーとともにイベントのイントロともなるパネルを披露した。

一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会 代表理事 小島英揮さん

 小島氏は10年に渡るコミュニティマーケティングの歴史を振り返り、CMC_Meetupで生まれたさまざまなフレームワークを紹介した。しかし、「10年経って『コミュニティマーケティング』の関心は高まっていると思ったが、まだまだ理解されていない」ということで、4月に一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会を立ち上げたことを紹介。コミュニティでの顧客同士での交流と情報発信により、顧客を理解し、育成し、顧客を創造する実現していきたいと抱負を語った。

8人のフェローが●●×コミュニティの関係を語る

 小島氏は、一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会が各分野に設けた8人のフェローとともに、あとのセッションの紹介にもつながるパネルに移った。最初はトレジャーデータ 執行役員 カスタマーサクセス本部長 坂内明子さん、Asana Japan マーケティング・リード 長橋明子さん、Datadog Senior Developer Advocate 萩野 たいじ(Taiji)さんが登壇し、SaaSやサブスクで重要なLTV(Life Time Value)とコミュニティの関係について説明した。

トレジャーデータ 坂内明子さん、Asana Japan 長橋明子さん、DataDog 荻野たいじさん

 エンタープライズ企業とコミュニティに関するセッションに登壇する坂内さんは、SaaSやサブスク以外にもコミュニティの価値が拡がっていると指摘。「顧客体験やお客さまの価値からコミュニティを作って、それをマーケティングやLTVに活かしていくという方向は強い」と語る。また、SaaSとサブスクとコミュニティに関するセッションに登壇する長橋さんは、「コミュニティって成果がわかりにくいと言われがちだが、コミュニティ経由の人の方が長く使ってくれるし、単価も高いことが明確。相関はあるけど、因果までは研究したい。B2Cの研究は多いが、B2Bはまだ少ない」と語る。そして、ニューヨークのイベントから戻って来られたという萩野さんは、「DevRelは、いままで認知を上げるというフェーズで活用されることが多かったが、最近はその先のフェーズでの活用に進んでいる。開発者の声を製品に活かすというサイクルも増えている」と語る。

 続いてB2C分野でのコミュニティについて語ったのは、ヤッホーブルーイング よなよなピースラボUnit Directorの佐藤 潤(ジュンジュン)さんと、パインバレー 代表取締役 CEO / 日本オムニチャネル協会 フェロー矢嶋 正明さん。小島さんはマーケティング界隈の動向を振り返り、プロダクトの機能価値創造を目指す「グッズドミナントロジック」から、モノをサービスの一部として体験価値の最大化を図る「サービスドミナントロジック」、さらには体験価値の向上をコミュニティ価値に結びつける「コミュニティドミナントロジック」へとシフトしている背景をまず説明する。

ヤッホーブルーイングの佐藤 潤さんと、パインバレーの矢嶋 正明さん

 20年以上のビームスでオムニチャネルを手がけ、現在はハーレーダビットソンのカスタムパーツを販売しているという矢島氏は、世界最大と言われるハーレーダビッドソンのコミュニティ「HOG」が価値創造に大きく寄与している点を指摘。車種や地域、パーツなどでさまざまなコミュニティに別れていることを引き合いに、「ビームスも実は30近くのプライベートブランドの集合体。それぞれのブランドにマイクロコミュニティができると、スパイクしやすい。モノからコト、コトから人への流れはB2Cの中にもあると思う」と語る。

 佐藤さんも、「コトから人への流れの中、自分がなにをやりたいのか、誰に相談したいのか、誰を応援したいのかという思いは出てくる。そこを繋げて、安心して実現する環境を作りたい。企業がそこに入っていくときも、自分たちがなにをやりたいのか真摯な向き合い方が必要だと思う」とコメントした。お客さまと仲間になり、「より推される存在になりたい」というのが、佐藤さんの最近の想いだという。

 最後は「Community Takes All」を掲げたイノベーションや産業、社会全体とコミュニティの関係がテーマ。ここにはIT批評家の尾原 和啓さん、Snowflake シニアプロダクトマーケティングマネージャー兼エヴァンジェリストのKTさん、フジテック NPO法人CIO Lounge 友岡 賢二さんが登壇した。

IT批評家の尾原 和啓さん、SnowflakeのKTさん、フジテックの友岡 賢二さん

 IT批評家として国のAIプロジェクトや世界のコミュニティを支援する立場にある尾原氏は、「コミュニティを持つものが持続的な成長を手にする」とアピール。「イノベーションって0から1の瞬間より、1が生まれた後にそれを100に、1000にすることが大事。特にSaaSは多くの資金調達と血みどろの戦いを行なった末、バブルが崩壊してしまった。その後、むしろコミュニティを調達する方が持続的な成長につながるのではという動向になっている」と語る。実際にコミュニティ戦略を推し進めた結果、市場独占に至る企業もいるとのこと。それくらいのパワーを持つのが、Community Takes Allの意味だ。

 また、コミュニティを成長させるには、アウトプットやアクションの場所を提供するグロース(Growth)に加え、ユーザーが「はまる」フック(Hook)の仕掛けを自律的に持続させていくことが重要だという。TikTokが流行ったのは、「踊ってみた」「歌ってみた」を知り合いとやる体験の共有がはまる仕掛けとして機能したから。このHookにはユーザーの参加と活動継続を促すための投資、ユーザーがアクションを起こすトリガー、アクションの結果得られるリワードを継続的に回していくループがGrowthのループとは別に必要になると指摘した。

GrowthとHookの2つのループ

 フジテックの友岡さんは、エンタープライズがコミュニティに参加をする理由として、同じ立場のユーザーから挙がったオピニオンを得るためだと説明。「AWSが最初来たとき、本屋のクラウドは使えないとか、裁判のときにデラウェアに行くのかとか、散々言われていた。それに対して、(当時、東急ハンズだった)長谷川秀樹CIOが『つべこべ言わず、AWS使えばええやん』と言ったのが大きかった」と振り返る。もう1つの理由は、ユーザー同士が束になることの意味だ。「昔、Googleに対して日本にデータセンターを作ってくれと言っても、誰も聞いてくれなかった。大企業が束になって、声を届けないと意味がないと思った」と語る。

 数々のコミュニティを運営してきたKTさんは、尾原さんの話に関連し、企業側での責務について語る。「われわれ企業はコミュニティからさまざまなメリットを得られるのだから、きちんとリワード(報酬)を渡していかなければならない。でも、これは金銭ではダメ」と語る。リワードの1つとしては、たとえばアンバサダー制度などが挙げられるが、「このアンバサダーがどれくらいすごいことなのかも、周囲にきちんと示していかなければならない」とコメント。その上で、企業側とユーザー側がそれぞれ努力し、ループが回ることで、革新的なことが起こるとアピールした。

 最後、小島さんはめったに集まれないフェローたちと壇上で記念撮影。「さまざまなキーワードを紹介できたので、それを元にセッションを楽しんでもらいたい」とアピール、メインサポーターであるKEENのセッションが終了すると、複数の会場でテーマに沿ったセッションが開催された。セッションの一部は別稿でレポートする。

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