わいせつ目的で16歳未満に映像を要求する行為は処罰の対象に
グルーミングの性的被害、若者の10人に1人が経験あり。場所はX、LINE、インスタ多し
知らない人からのチャットはX、LINE、インスタで
グルーミングとは、性的な目的を持って大人が未成年を信頼させ、騙す行為のこと。2023年7月、通称「グルーミング罪」(十六歳未満の者に対する面会要求等罪)が施行された。16歳未満の者に対して、わいせつの目的で面接などを要求したり、わいせつな映像の送信を要求したりする行為は処罰の対象となっている。
グルーミングの実態はどうなっているのか。15~24歳の男女を対象としたチャイルド・ファンド・ジャパンの「若者を対象としたグルーミングに関する調査結果報告書」(2024年6月)を見てみよう。
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「知らない人からチャットを受け取ったことがありますか」という質問に対し、全体の約35%が「ある」と回答。男女とも18歳以上になると半数以上が受け取ったことがある状態だ。被害は多く決して他人事と言えないこと、被害は女性に限らず男性も気をつける必要があることがよくわかるだろう。
知らない人からチャットを受け取ったのはいつ頃か聞いたところ、「高校生のとき」の割合が高いが、「中学生のとき」も少なくない。小学生・中学生でチャットを受けとる場合は男性が比較的多く、高校生以降は女性が多くなっている。
知らない人からチャットをもらったことがあるSNSは、「X(Twitter)」という回答が多いが、「LINE」の割合も高い。LINEは、未成年の間では不特定多数とやり取りできるオープンチャットの人気が高く、そこから交友関係が始まっていることも多いのだ。なお、女性では「Instagram」も目立つ。
グルーミング被害経験率は9.5%。男子の被害者も
調査では、自分の裸や下着姿の写真・動画を知らない人に送ったり、公開サイトにアップロードした経験についても聞いている。経験した割合は5%前後程度と少ないが、年齢が上がるにしたがって増える傾向にある。送ったり、アップロードしたりした時期は、「高校生のとき」が多いものの、中学生や小学生という回答もある。
オンラインで出会った相手にグルーミング行為、「性的なトピックに関する会話をされた」「性的な画像や動画を送られた」「性的な自画撮りを送るよう頼まれた」などの性的被害を経験した人は9.5%と約1割に及ぶ。
なお、男女ともグルーミング被害経験は中高生のときが多いが、高校生以降のことも。相手から接触されたSNSは、InstagramやXなどの匿名で不特定多数とつながれるアプリという回答が多い。ただし、男女ともに15~17才の回答者はLINEがほかの年代に比べて高くなっている。
ほとんどの子どもは要求に対して無視やブロックなどができているが、要求に応えてしまった例もある。要求に応えた理由は、「相手のことが好きでうれしかったから」「怖くて逆らえなかったから」が各29.4%で最多だ。
かなり低年齢の頃から、知らない成人からコンタクトをされたり、グルーミング被害に遭っているのが実態だ。X、Instagramだけでなく、低年齢の子どもも利用するLINEでの被害も少なくないことは見逃せない。
対策として、まずLINEではオープンチャットを使わないようアドバイスし、「プライバシー設定」から「メッセージ受信拒否」をオンにして、友だち以外からのメッセージを受信拒否設定をしておくといいだろう。
どのSNSでも、知らない人とやり取りしないこと、会わないことなどを約束させたうえで、困ったことがあったら相談するように伝えてあげてほしい。
著者紹介:高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、監修、講演などを 手がける。SNSや情報リテラシー教育に詳しい。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)、『できるゼロからはじめるLINE超入門』(インプレス)など著作多数。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などメディア出演も多い。公式サイトはhttp://akiakatsuki.com/、Twitterアカウントは@akiakatsuki
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