第777回
Lunar Lakeはウェハー1枚からMeteor Lakeの半分しか取れない インテル CPUロードマップ
Lunar Lakeは3nmプロセスのN3Bを採用
Intel 3はネイティブ1.2Vで動作するトランジスタを追加でサポートするのだが、その1.2V出力トランジスタの信頼性が「業界標準である動作寿命10年をサポートする」と書いてあり、逆に言えばIntel 4までの通常電圧トランジスタの寿命は? となるわけだ。講演では当然そのあたりには触れていない。
言ってみればIntel 4はIntel 3の先行試作プロセス的な位置付けと考えるのが妥当だろうし、そうであればMeteor LakeしかIntel 4を使わないというのも納得できる。
したがって、本来ならIntel 3あたりを使いたかったのだろうが、こちらはXeon 6向けにまず予約が入っており、Lunar Lakeの量産に使えるほどのキャパシティがなかったのだろう。それでも他に使えるプロセスがなければ、Xeon 6の量産スケジュールを調整するなどして無理やり突っ込むしかなかったのだろうが、ここで幸運にもTSMCのN3Bが空いていた。
TSMCのN3BはTSMCとしては3nmの最初のプロセスで、2022年末に量産がスタートするものの、当初全量をAppleが予約していた。ところがこのN3B、歩留まりが非常に悪いという欠点を抱えており、それもあってAppleは途中でこのN3Bプロセスの契約を解除し、Apple自身もN3Eプロセスへ移行した、という話は昨年10月に話題が出ている。
N3EはN3Bの改良型というか、本来は廉価版という位置づけであり、N3Bが25工程でEUV(極端紫外線)を利用するのに対し、N3Eは19工程に削減。さらに配線層をダブルパターニングからシングルパターニングに改めたという話が聞こえてきている。
ちなみにこのダブルパターニングからシングルパターニングへの更新、さすがに全配線層ではないだろうとは思うが、配線がN3Bより太くなったものと思われる。そもそも一般論としてM6やM7以上なら普通はシングルパターニングで実装できるからだ。
その分実装密度が下がりそうな気もするのだが、結果から言えば歩留まりが大きく向上(N3Bは試作段階での歩留まりが55%程度だったが、量産に入ってからも60%台だったという話を聞いている:N3Eは試作段階からもっと歩留まりが高かった)し、ダブルパターニングの廃止やEUVの工程数削減などで生産コストも下がり、それでいてなぜか性能も上ったそうで、それはみんなN3BよりN3Eを使いたがるわけである。
この結果N3Eは大人気であり、AMDですら今年提供できるN3Eプロセスの製品はTurinベースのEPYCだけで、Ryzenなどは引き続きN4での提供となっている。本当ならインテルもN3Eを使いたかったのかもしれないが、こういう事情で利用は不可能である。そこに来てN3Bの生産枠が余っているという話であれば、歩留まりの低さには目をつむってでも使わざるを得なかった、というあたりが正確なところかもしれない。
ただ実はこれ、けっこう厳しい話である。Lunar Lakeのパッケージはほぼ正方形に見えるが、微妙に縦長(27×27.5mm)である。なぜわかったかというと、パッケージに搭載されているLPDDR5Xの寸法が7×12.4mmだからで、ここからの推定である。
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