エミュレートでもCore Ultra 9 185H の78%が出た!
ついにベンチマーク解禁の「Snapdragon X」搭載「Copilot+PC」=「ASUS Vivobook S 15」実機レビュー
本日6月18日、Qualcommの次世代AI機能を搭載するプロセッサー「Snapdragon X」を搭載する「Copilot+PC」が各社から発売された。今回レビューする「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」もそのひとつ。ASUSから日本市場で初めて発売される「Copilot+PC」となる。
Vivobook S 15は、NPU単体の処理能力が45TOPSで、CPU、iGPU、NPUを合わせた処理能力が75TOPsを実現したプロセッサー「Snapdragon X Elite」を搭載。専用のWindows Copilotキーを搭載することで、AIアシスタント機能「Windows Copilot」を素早く呼び出せるほか、ASUS AIアプリケーションも用意される。
今回ASUSより試用機を借用したので実機レビューをお届けする。ただし、記事執筆時点において最新のアップデートが提供されていない可能性があり、製品版とは異なる場合がある点には留意してほしい。
ASUSクラムシェルノートPCの最新仕様に
ついにSnapdragon X 搭載
「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」はOSに「Windows 11 Home 64ビット」、プロセッサーに「Qualcomm Snapdragon X Elite X1E-78-100プロセッサー」を搭載。12コア、最大3.4GHz、Qualcomm Adreno GPU、Qualcomm Hexagon NPUである。
メモリーは16GB/32GB(LPDDR5X-8448)、ストレージは1TB(PCIe Gen4 x4接続SSD)を搭載している。日本向けにはメモリー16GB版(22万9800円、6月下旬)と32GB版(24万9800円、6月18日)が発売される。
メモリー以外のスペックは2モデル共通だ。ディスプレーは15.6型3K OLEDで2880×1620ドット、16:9、120Hz、0.2ms、水平170°/垂直170°、タッチ非対応、ペン非対応を採用。ディスプレー上部にはプライバシーシャッター付き207万画素赤外線(IR)カメラを内蔵。サウンド機能はステレオスピーカー(1W×2)、アレイマイクを装備している。
インターフェースはUSB4(データ転送、映像出力、本機への給電)×2、USB 3.2 Gen1 Type-A×2、HDMI×1、microSDメモリーカードスロット×1、3.5mmコンボジャック×1を用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 7、Bluetooth 5.3をサポートしている。
本体サイズは352.6×226.9×14.7~15.9mm、重量は約1.42kg。70Whのリチウムポリマーバッテリーを内蔵しており、ディスプレー輝度150cd/m²でフルHD動画を連続再生した際のバッテリー駆動時間は約18時間と謳われている。
「Copilot+ PC」の機能は
どうなっているのか
「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」最大の特徴は「Qualcomm Snapdragon X Elite X1E-78-100プロセッサー」を搭載した「Copilot+ PC」であることだ。
それを外見で示すのは、AIアシスタント機能「Windows Copilot」をワンプッシュで呼び出せる「Windows Copilotキー」の存在だ。この新設されたキーを押せば、どんな作業をしているときでも「Windows Copilot」のウインドーを呼び出せる。
ただ記事執筆時点で「Copilot+PC」はまだ完全ではない。まず「Copilot+PC」のイチオシの機能であった「Recall(回顧)」の搭載が未実装だった。また、「Copilot+PC」はNPU搭載プロセッサーを採用することで、デバイス内でAI処理を実行できることが売りであるが、筆者が試したかぎりでは「ペイント」アプリで「Cocreator」を実行したときと、「カメラ」アプリ作動中以外にNPUは使用されなかった。なおASUSのAI対応アプリ「StoryCube」でも、記事執筆時点ではNPUを使っていないようだ。
さらに現時点では、サードパーティー製アプリがいつNPUに対応するか具体的な日程はアナウンスされていない。「Copilot+PC」の優位性を明確にアピールできるように、マイクロソフト、ASUS、アプリメーカーが積極的に情報公開することを期待したい。
日本語キーボードはキーピッチが実測19.2mm、キーストロークが実測1.5mm。タッチパッドは実測130×84.5mmが確保されている。一部キーが密着し、テンキーが隣接しているため、テンキーなしのキーボードを使っている方は少し慣れが必要だ。
15.6型3K OLEDディスプレーは輝度や色域など細かなスペックは公表されていないが、ディスプレーの設定には「HDR」の項目が用意されており、YouTubeでHDRコンテンツを再生できることを確認した。「Copilot+PC」としては優先順位が低いのかもしれないが、せっかく高解像度、高画質のOLEDを搭載しているのだから、もっとアピールしたほうがよいと思う。
ウェブカメラはRGBカメラとIRカメラが独立しており、室内灯下でも明るく、自然な発色で撮影できた。ちなみに前述のとおり「カメラ」アプリ起動中にNPUの使用量が増えているので、なんらかの画像処理が施されているようだ。
ついにSnapdragon Xを計測!!
Snapdragon 8cx Gen 3搭載機の427%!
エミュレートでもCore Ultra 9 185H の78%が出た!
最後にベンチマークを実施してみよう。今回比較対象機種としてはARM系プロセッサーの「Qualcomm Snapdragon 8cx Gen 3」を搭載した「ThinkPad X13s」と、Core Ultra 9 185Hを搭載する「ASUS Zenbook DUO」の結果を見てみた。
まずCPU性能だが、エミュレーション機能で実行した「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は11892pts、CPU(Single Core)は1114ptsとなった。ThinkPad X13sはCPU(Multi Core)が2785pts、CPU(Single Core)が583ptsだったので、「ASUS Vivobook S 15」はCPU(Multi Core)で427%相当、CPU(Single Core)で191%相当のスコアを記録したことになる。
ちなみに、Core Ultra 9 185Hを搭載する「ASUS Zenbook DUO」では、「CINEBENCH R23」のCPU(Multi Core)は15161pts、CPU(Single Core)は1803ptsとなった。Snapdragon Xはエミュレートながら、最速Core Ultraに対してMulti Core で78%、Single Coreでも62%まで出ているのは、さすが、Qualcommの自信作である。
3Dグラフィックス関連ベンチマークで「ThinkPad X13s」と比較できるのが「ファイナルファンタジー:暁月のフィナーレベンチマーク」。Vivobook S 15は9880、ThinkPad X13sは5328なので、Vivobook S 15は185%相当のスコアだ。
Core Ultra 9 185Hを搭載する「ASUS Zenbook DUO」は3DMarkのTime Spyは3731、Fire Strikeは8195、「ファイナルファンタジー:暁月のフィナーレベンチマーク」は1920×1080ドット、標準品質、ノートPCで12294だった。 「ASUS Vivobook S 15」はTime Spyが1898、Fire Strikeは6180だったので、Core Ultraの51%、75%、80%まで出ていることになる。こちらも、x86エミュレートでここまで出ているのはさすがだ。
ストレージはPCIe Gen4 x4接続SSD「MTFDKBA1T0QFM-1BD1AABGB」が搭載されており、「CrystalDiskMark 8.0.4」のシーケンシャルリード(SEQM1 Q8T1)は5045MB/s、シーケンシャルライト(SEQM1 Q8T1)は3611MB/sとなった。PCIe Gen4 x4接続SSDとしても平均以上のスコアで、体感速度の向上にも貢献しているだろう。
AI関連ベンチマークとしては「UL Procyon」のAI Computer Vision Benchmarkを実行したところ、1679というスコアが出た。
バッテリー駆動時間については、ディスプレー輝度とボリュームを40%の状態でYouTube動画を連続再生し、バッテリー残量が100%から10%減るまでの時間を計測したところ1時間11分秒となった。つまり単純計算では、同じ条件でフル充電から動作させると11時間を超えて動作することになる。
PC好きなら
「Copilot+ PC」はいま買うべし
「ASUS Vivobook S 15 S5507QA」は従来のARM系プロセッサーより大幅にパフォーマンスが向上している。Snapdragon 8cx Gen 3搭載機の427%相当のCPUスコアということは、エミュレーションで動作させるx86系のアプリについても実用的に利用できる可能性が高い。もちろんネイティブで動作させるアプリでも処理性能向上を期待できる。実際、「Davinci Resolve」の動画編集(Davinci Resolve Magic Mask effectのTrackingスピードの比較)において、Snapdragon X Elite搭載機は「Core i7-1360P」搭載機よりも4.5倍高速に動作したとのことだ。
現時点で「Copilot+PC」対応機に機能がすべて実装され、またサードパーティー製アプリのNPU対応が進んでいるわけではない。しかしVivobook S 15には、「Copilot+ PC」の先進機能が真っ先に搭載されるし、NPU対応アプリが利用可能となるのも早いはずだ。AI PCの利便性をできるだけ早く享受したいのであれば、Vivobook S 15を始めとする「Copilot+PC」対応機は魅力的なマシンなのである。
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