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自動化や管理を見据えたコンソールやAPIも大きな魅力

IoTのニーズを完全網羅 ソラコムの通信サービスはこう選べ

2024年07月01日 09時00分更新

 「スイングバイIPO」を実現したソラコム。そのIoTプラットフォームを支える大きな柱は、創業時から展開するIoT向け通信サービスだ。シンプルな3G/4G SIMからスタートしたSORACOMのサービスだが、今では「SORACOM IoT SIM」と呼ばれるグローバル対応のSIM、そしてLPWAや5Gまで多種多様なサービスを展開。サービスラインナップとその価値をソラコムのメンバーたちと再整理していく。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ 以下、敬称略)

ますます身近になるIoT通信サービス その要件とは?

大谷:まずはソリューションアーキテクトとして、ユースケースや顧客の声に応え続けてきた今井さんに話を聞きます。IoTの通信ってなにが必要なんでしょうか?

今井:その質問の前にお話ししておきたいのは、IoTがかなり身近になっているという点です。

今までIoTというと製造業のFA(ファクトリーオートメーション)やスマートメータリングのようなイメージがあったと思うのですが、われわれの事例ではMIXIの子どもの見守りGPS端末やLuupの電動マイクロモビリティのシェアリングサービス、日本瓦斯のガスメーターの自動検針などさまざまな場面で採用されています。驚くべきことに、今時の自販機やタクシーはSIMが複数載っているのが、当たり前だったりします。つまり、IoTってインダストリアル(特定産業)の用途だけではなく、すでに自分たちの周りにあるんです。

ソラコム ソリューションアーキテクト 今井雄太氏

大谷:コロナ禍で「リモート」ということに焦点が当てられ、IoTはますます加速したように思えます。

今井:デバイスに通信が必要となった場合、どんな通信があるのかという課題があります。

まず思いつくのはWi-Fiでしょう。われわれの事例だと、ヤマト運輸さんの「クロネコ見守りサービス」でも使われている通信付きのIoT電球「ハローライト」があります。

利用する際におじいちゃんやおばあちゃんにWi-Fiの設定をわざわざしてもらうのかというと、実は設定や管理が大変なんです。そこで出てくるのがスマートフォンでも使われているセルラー通信です。セルラー通信なら、あらかじめデバイスにSIMを搭載しておけば、設置して電源を入れたらすぐに通信が使えます。SIMごとに秘密鍵があるので、通信もセキュアです。

大谷:なるほど。「セルラー通信いいよね」という話の次に来るのが、いわゆる「人向けの通信」と「モノ向けの通信」ってどこか違うのか?という話です。

今井:はい。そもそも、ケータイやスマホのサービスって人が利用するのが前提なので、契約の際に本人確認が必要だったりとか、ギガバイト単位での契約だったりします。でも、数分に1回位置情報をアップロードするようなIoTの使い方の場合、数十ギガ数千円というプランがフィットしないことが多いはずです。

そこでIoT向けの通信プランという考え方が生まれてきます。たとえば回線の数を大量に調達できたり、小容量の通信でも使いやすい。こうしたIoTのニーズに応えた通信サービスをソラコムが提供しているわけです。

特定キャリア向けSIMから開始…機能強化を続けるSORACOM IoT SIM

大谷:では、ソラコムの通信サービスのプランを紹介してください。というか、創業時から振り返ってもらった方がわかりやすいですかね。

松井:もともとはどんな用途でも使えるプランからスタートし、その後エッジの効いたプランが登場してきます。めちゃくちゃ小容量のプランとか、大容量のプランとか。また、LTEの進化にあわせて、LTE-M(省電力のLTE通信)や5Gなど対応するデバイスも変わってきているので、そういったデバイス対応前提で新しいプランを増やしています。

ソラコム プリンシパルエンジニア CTO of Japan 松井基勝氏

今井:僕がソラコムに入社したときは、NTTドコモ回線の白いSIMしかありませんでした。もっと言うと、白くもなかった(笑)。

松井:ピンクの水玉でしたね。どこかのタイミングでMVNO事業者はこの白いSIMになったんです。

今井:2017年に、いわゆるIoTSIMと呼ばれる黒いSIM、世界中で使える「plan01s」が出ました。その後も、KDDI回線を採用したSIMや、容量や使う目的に合わせたプランも増えてきました。

大谷:SORACOM IoT SIMの方がすでに割合多いんでしたっけ?

今井:割合としてはすでに半分を越えてます。

大谷:基本的にはキャリアとデータ容量でサービスが分かれてるわけですね。

今井:確かにそうなんですけど、ソラコムでは、まず日本だけで使うのか、日本を含むグローバルで使うのかを確認します。

松井:今では少ないですが、ソラコムを始めた当初はSIMロックがかかっているデバイスも多かったので、NTTドコモしか使えない、KDDIしか使えないというのが多かった。でも、SIMロックがなくなった今となっては、もはやキャリアは選ばなくて済みます。つねに数枚持っておき、つながりやすい方を使うというやり方でもOKです。

SORACOM IoT SIMの選び方

グローバルでも利用可能なIoT SIMであれば、通信プランを書き換えられます。日本では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3キャリアに対応できます。見た目は同じSIMだけど、中身はどんどん進化しています。

大谷:先日のトヨタの取材でも同じ話が出てましたね。同じ工場でも、工場自体が広いので、場所によって通信が入るキャリアが違うという話です(関連記事:これぞテクノロジーの民主化 トヨタのカイゼン文化にフィットしたSORACOM)。

松井:同じことは海外でも起こっており、たとえばAT&Tがつながりやすいところ、T-Mobileがつながりやすいところなど、地域ごとに異なっています。どこかのSIMだけを使うというのは、現実的ではありません。だから、ひとつの国で複数のキャリアにつながる「マルチキャリア」対応は、SORACOMを選ぶ大きなメリットです。

今井:私たちのSIMはローミングを使っています。そのためお客さまからは「現地のキャリアと直接契約した方が安いですよね」と言われることがあります。

でも、AT&Tだけ使える地域だけで使うならともかく、AT&Tが入らないところ、北米だけじゃなくて、カナダや南米でも使いたいといった場合に、いちいち現地キャリアと法人契約して、SIMを差し替えますか?という話です。トータルの管理コストを考えると、SORACOMのようにグローバルでマルチキャリアで使える方が断然便利です。

プラン選びは利用地域、通信容量、ユースケースで選択せよ

大谷:プラン選びはまずどこからスタートするのでしょうか?

今井:使いたい国・地域を選択し、次に通信容量という話になります。

ただ、通信容量に関しては、事前に把握するのは難しいのが正直なところ。どれくらいのトラフィックが発生して、どれくらいのコストがかかるのかといった、IoTの通信に知見をお持ちの方は少ないのが現状です。実は技術的に長けているテックカンパニーでもデバイスと通信に関してはそういう状況です。

さらに、デバイスの挙動がブラックボックスというケースももあります。海外のOEM製品をつかったGPSトラッカーやスマートロックなど、実際に運用しようにも、どれくらいのトラフィックが発生するかは、把握できない場合も多いわけです。

だから、通信容量を飛ばして、ユースケースを考えます。モビリティサービスなのか、セキュリティカメラなのか、GPSトラッカーなのかを聞いていただくと、ソラコム社内のノウハウを元に、だいたいこれくらいという通信プランの見積もりができます。

松井:最近ではソラコムにも蓄積した知見を生成AIに学習させて、お客さまに最適な提案を回答できるようになってきています。いずれオンラインで最適な通信プランのセレクションをお手伝いできるかもしれません。

大谷:ユースケースとしては「普段は通信なし」というパターンもあるんですよね。

今井:そうですね。漏水検知みたいな仕組みだと、漏水を検知しない限りは通信が発生しません。AEDとか、機械の故障検知も、なにかあったときだけ通知が行くので、当面通信しない可能性もあるわけです。この場合は、当たり前ですが通信量が極小です。

逆にデータ量が多いのはカメラ。音声や動画を流しっぱなしという用途は通信量が多いですね。

データ通信量のイメージ

松井:特にわれわれの出しているplan-DUは、上りと下りが非対称。上りに最適なプランなので、用途となるとやはりカメラデータのアップロード。そして最近はこのカメラの用途がすごく増えています。

松下:人向けの通信プランはクラウドのコンテンツをダウンロードして楽しむのがメインですが、IoTの通信、むしろ現場の情報をクラウドにアップロードするのがメイン。そういう使い方に料金を特化させているのは、IoTに特化した通信と言っている所以です。

大谷:カメラの需要が高まっているのは、なぜですか?

松下:カメラは人の目と同じようにリモートから映像で見られるので、直感的に使いやすく、分かりやすいんですよ。以前、農業のおじさんにお話を聞いたとき、「センサーの数値なんか見ても分からない、目で見て判断してるのと同じことを効率化できないか?」と相談されたことがあります。まだデジタルが浸透していないような業界の人でも、直感的にIoT活用できるのが利点ですね。もちろん、市場全体を見ると、そもそもカメラ自体の価格がかなり落ちて、ソフトウェアも進化して使いやすくなっているという背景もあります。

ソラコム エバンジェリスト 事業開発マネージャー 松下享平氏

松井:あとはAIですかね。そもそも撮影した動画をクラウドにアップしたところで、人が全部見られるわけではないので、AIの進化がさらにカメラ活用を後押ししています。

大谷:プラン選びのポイントはなんでしょうか?

松井:まずは300MB分の通信が含まれているplan-D 300MBというプランで試してみることをオススメしています。価格面やデバイスの対応状況という点で合うのではないでしょうか。

今井:まずは「試してください」というメッセージですね。「すべての用途がこれでOKです!」というプランがあればいいのでしょうが、ソラコムとしては、まずお客さまに試してもらい、検証した結果からさまざまなプランを検討してもらう方がよいと考えています。

その点、ソラコムのメリットはいろいろなサービスプランを持っており、どのSIMも一枚から買える点です。気に入ったら、ユースケースにあったプランを選定して、SIM自体も1000~1万枚規模で買ってもらえばいいし、eSIMを選ぶ方も増えてます。

いろんなユースケースをカバーできるSIMの方が割高にはなりがちです。でも、「日本でLTE-Mを使いたい」とか、「10年に1回通信するか」みたいなユースケースにあったプランも用意しています。

松下:プラン選びで失敗したくないという心配事に対し、実際に少額で試せるというのは、ソラコムの一つの特徴だと思います。違っていたら、別のプランに変えられます。より最適化しやすい。

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