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DX銘柄2024発表、進行する日本のDX、しかし米国よりもここが足りない!!

2024年06月17日 08時00分更新

PoC地獄で疲弊、最初からやるという覚悟を

 伊藤委員長は、基調講演のなかで、企業が置かれた経営環境を「総合格闘技」と表現した。

 「経営が向き合あうテーマは様々である。DXを中心に、パーパス経営、ガバナンス、人的資本経営、脱炭素、ESGやSDGsなど多岐に渡り、現在の経営は、総合格闘技といえる状況にある」と指摘。その一方で、「デジタル化が進み、働き方改革とジョブ型雇用が進展し、生成AIがリスクとオポチュニティが混ざりあいながら広がっている。これはデジタル化を通じて、社会システムや企業、組織、人材、企業文化を変革すべきチャンスである」とも述べた。

 日本と米国の経営手法やITシステムの違いについても触れた。

 「米国では新たな経営手法が次々と開発されている。それに対して、日本は、かつての成功体験をもとに、システムの部分最適や複雑化が残り、全体最適化されたシステムへと脱却することができていない。業務にあわせたスクラッチ開発が多用され、カスタマイズが好まれ、システムがガラパゴス化している。しかも、それらが問題なく稼働しているため、経営者もレカジーという意識がない。また、たとえ気がついていたとしても、時間と費用が膨大にかかるため、刷新に着手せずに、経営者が問題を先送りしているという課題がある。経営層のコミットが薄いため、改修して使い続けたほうが安全だと判断する例も多い。デジタル部門を設置しても、経営者は明確な指示を出せない状況にある」と、日本の企業経営の数々の課題をあげながら、「シリコンバレーでは、変えることがデフォルトだが、日本では維持がデフォルトである。この設定の差が、日米の大きな差につながっている」と警鐘を鳴らした。

 昨今の状況から、米国企業がさらに一歩進んだ経営を開始していることも紹介した。

 伊藤委員長が指摘したのが、「米国ではCDOや、CDXOはいなくなってきた」という点だ。

 「以前は、CDOやCDXOが、DXの牽引役を務めていたが、ここにきて、取締役会全体でDXを進めていくという流れがあり、あえて牽引役は置かなくてもいいというムーブメントがある。それがCDOやCDXOを置かないということにつながっている。日本の企業では、ようやくDXに詳しい人を社外取締役として招聘するケースがでてきた。また、日本ではCDOやCDXOを懸命に増やしている状況にある。米国は次のフェーズに入っている」と、日米企業の差を示した。

 伊藤委員長は、DXレポートなどを通じて、DXは企業文化や風土を変革することが大事であることを提言してきたが、日本では、そこまで至らず、PoCで留まっている状況が多いと語る。

 「日本の企業ではPoCが林立しすぎており、それに疲れてしまっている。『PoC地獄』の状況にある」とし、「PoCの結果がよかったらやるということではなく、最初から、やるという覚悟を決めて実装していかないと、DXは進まない。そして、40代、50代、60代のノンデジタルネイティブを、いかにデジタル変革に巻き込むかが課題である」とした。

 また、「DX人材の研修は始まっているが、それがアウトプットにつながり、アウトカムにつながっている例は多くはない」と述べ、「日本では、社外学習や自己啓発を行っていない人の割合が52.6%に達し、世界のなかでも圧倒的に多い。勉強しない日本人と揶揄されている状況だ。これを変えないと人的資本経営といっても意味がない」と、人材育成の課題を示した。

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