AMDがRadeon PRO W7900 Dual SlotとRadeon Instinct MI 325Xを発表
2024年6月3日、AMDはCOMPUTEX 2024に連動し基調講演を開催、さまざまな発表を行なった。コンシューマー向けGPUについての発表はなかったものの、プロフェッショナル/ データセンター向けGPUについて言及があった。本稿は事前に共有されたブリーフィングや資料の中から、プロフェッショナル向けGPUの製品発表についてまとめたものである。
RTX 6000 Adaをコスパで上回る!
3499ドルのRadeon PRO W7900 Dual Slot
RDNA 3世代の「Radeon PRO W7000シリーズ」は、2023年4月に発売したプロフェッショナル向けRadeonだ。すでに「W7900」を筆頭に「W7500」まで5モデルが展開済みだが、特にフラッグシップである「Radeon PRO W7900」は48GBものGDDR6を搭載した大規模なAI処理には理想的なモデルだ。ただ複数枚挿してGPUごとに異なる推論をさせるような運用をする場合、肉厚なカードゆえに枚数が稼げないという欠点があった。
そこで登場するのが7月19日より3499ドルで発売となる「Radeon PRO W7900 Dual Slot」。文字通り2スロット厚に収まるようクーラーやブラケット部分の設計を見直したモデルだ。詳細な動作クロックなどは発表されていないが、192基のAIアクセラレーター(RX 7000シリーズで言うところのAI Matrix Accelerator)で123TFLOPSのFP16演算性能を出せるという点や、TBP(Total Board Power)295Wという仕様から、従来の3スロット仕様のW7900と同じであると推察される。
このW7900 Dual Slotはワークステーション筐体に1枚でも多く強力なビデオカードを搭載したいというニーズに応えるものである。例えば3スロット厚のW7900ではスロット配置の関係で2枚しか装着できないマザーであっても、2スロットのW7900 Dual Slotならば3枚装着できる、という話だ。
となると冷却が心配になるが、AMDは1台のワークステーション筐体にW7900 Dual Slotを4枚挿しした状態での動作を確認しているという。例えばソフトウェアコーディングに際してローカル環境で巨大な学習モデルを利用した大規模言語モデルを使うことで生産性が高められるが、GPUを複数搭載することでGPUごとに異なる推論処理を並列で実施できる。スロット厚を抑えることでワークステーション筐体にGPUパワーを集中させることが可能になったわけだ。
W7900 Dual Slotはライバルである「RTX 6000 Ada」「RTX 5000 Ada」に対し“1ドルあたりの性能”、つまりコストパフォーマンスにおいて最大2倍程度出せるとAMDは主張している。Ada 5000が4000ドル、Ada 6000に至っては6800ドルと高額であるため、それより安価なW7900やW7900 Dual Slotの方が「CUDAを使わないなら」お得というわけだ。
また、AMDは同社が推し進めるGPUコンピュート用のプラットフォーム「ROCm」のアップデートについても言及した。次にリリースされる「ROCm 6.1」では「Tensorflow」が追加されることにより、より多くのAIフレームワークの開発が可能になるという。また「WSL 2(Windows Subsystem for Linux 2)」のサポート(まだベータ段階だが)を受けることで、ROCmがWindows上で利用可能になる。
さらに、マルチGPUサポートも追加され、マルチユーザーソリューション向けのAIワークステーション構築も可能になる。無論今回発表されるW7900 Dual SlotもROCm 6.1をサポートする。
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