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〈後編〉Aiming小川文也さんインタビュー

『陰実』のDiscordが熱い理由は、公式ではなく「公認」だから!?

アニメとゲームでコミュニティーを分けなかった理由

まつもと あらためてうかがいたいのですが、“アニメとゲームでコミュニティーを分けなかった理由”は何でしょう?

小川 分けなかった理由としては、やはりこのコミュニティーを『陰の実力者になりたくて!』という“作品の”ファンが集まる場にしたかったからです。

 先ほどお話したように、Discordの大きな利点は同好の士を見つけられることだと思っています。「カゲマス」はあくまで『陰の実力者になりたくて!』を元にしたゲームなので、我々は「カゲマス」が好きな人=『陰実』を好きな人だと思っています。

 であればこのコミュニティーは『陰の実力者になりたくて!』を好きな人が集まる場であって、「ゲームだけ」などと分けるよりは、すべてを統合したコミュニティーとして最初からあるべきじゃないかと判断しました。

 コミックしか読まない人が来ても良いし、アニメで『陰実』を知った人がいても良い、ゲームしかやらない人がいても良い。ともかく『陰実』が好きならOK! という思いで作ったわけです。

まつもと もはやこの公認Discordもメディア展開の1つになっていて、かつファンコミュニティーそのものもミックスされている、という状態がすごく面白いですよね。

小川 これは版元さんの協力がないと絶対に成しえないものだと思っています。特にDiscordは先ほどから何度か話題に出ている通り、まだ一般認知度が低めのサービスです。『何となく存在は知ってるけれど、触ったことはないし、なんだかアングラなイメージもあるよね』みたいな人がまだ多い。

 そんななかで理解と協力をしてくださっている、特にアニメや原作の制作に携わられている方々には本当に感謝してもしきれないと思っています。

まつもと 運営のある種のコストをAimingさんが担っていらっしゃる。でも、そこに原作やコミック、アニメのコミュニティーもあって、版元や製作委員会、そして御社もそこに手間をかけるだけの価値があると認めている、と。よく考えると珍しい状態ですね。

小川 最初は「Discordって何ですか?」というところから始まりましたが、今では「非常に大事な場だと思っている」というお声をいただいていたりしています。

 もちろん最初期から公式サイトにDiscordへのリンクを置いてくださったりと、協力的に動いていただけていました。

まつもと 確かに、Discordへのリンクは珍しいのでインパクトありましたね!

公認Discordに『陰実』情報を集約

まつもと たとえば、X(Twitter)の場合はエンゲージメントなどさまざまなKPIが分析しやすいわけじゃないですか。Discordにはそういった評価やデータを吟味したうえでの取り組みはあるのですか?

小川 ナイルさんから定期的に訪問者数や発話数といったデータのレポートをいただいています。たとえばアニメ放送中は話題が豊富にあるので発話数が上がりますし、そうじゃないときはどんな話題をこちらから提供しようか? と考えながら運用させていただいています。

まつもと では最後に、『陰実』はDiscordの熱量を見てもわかる通り、これから盛り上がっていく作品ですが、小川さんの立場から今後についての抱負や目標があれば。

小川 Discordの部分にフォーカスしてお話させていただくと、『陰の実力者になりたくて!』という作品は今後、まだまだ大きくなる作品だと思っています。Discordはそんな作品の“総合コミュニティー”という立ち位置ですので、作品と一緒にコミュニティー自体も成長させたいなと。

 そのためには、ファンが増えたり集まったりするだけに留まらず、きちんと関連情報が集約される場所にしていきたい。ゲーム情報はもちろん、アニメ側にご協力いただいているグッズ展開情報や店舗タイアップのような、常に追い続けないと気づきにくい情報まで、『ここに来れば整理されているから便利だ』と思っていただける場所になれればと。

まつもと X(Twitter)は情報があっという間に流れていってしまい、履歴も追いにくかったりするわけですが、話題ごとにチャンネルを設定できてアーカイブもされるDiscordはファンコミュニティーとしてメリットだらけですよね。本日はありがとうございました。

前編はこちら

筆者紹介:まつもとあつし

まつもとあつし(ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー・研究者)

 IT・出版・広告代理店、映画会社などを経て、ジャーナリスト・プロデューサー・研究者。NPO法人アニメ産業イノベーション会議理事長。情報メディア・コンテンツ産業に関する教育と研究を行ないながら、各種プロジェクトを通じたプロデューサー人材の育成を進めている。デジタルハリウッド大学院DCM修士(専門職)・東京大学大学院社会情報学修士(社会情報学)。経産省コンテンツ産業長期ビジョン検討委員(2015)など。著書に「コンテンツビジネス・デジタルシフト」(NTT出版)、「地域創生DX」(同文舘出版)など。

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