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AIは漫画家の玉手箱なのか……

実録:AIで描く漫画の実際 ~AIで今風の手描きっぽい漫画を作ってみる

2024年05月29日 13時00分更新

文● 野火城 編集●ASCII

1/AIモデルの選定

 いつものように、漫画のシナリオ、ネームを考えます。今回は「兎と亀」をベースに、GPU購入の話にします。

 今風の漫画絵を生成するのに最適な画像AIは、SDXLアニメ系モデル、Novel AI、niji・journey辺りでしょう。第1回で主に使ったDALL・E3は、プロンプトの通りはピカ一ですが微妙に絵柄に古さがあるので、今回のテーマには向きません。

 Midjourneyとniji・journeyは構図力も画力も高いので参考資料として使うには最適なのですが、自分は特に商業でこのモデルは使用しない事にしています。何故ならプロンプトに含めなくても版権デザインが紛れ込みやすいためです。

 例えば「剣を持った青年」を出してもらうとします。青年はオリジナルのデザインだったとしても、剣だけ版権のデザインがモロに出る、みたいな挙動がMidjourneyやniji・journeyでままあります。

 最近のソシャゲなどはキャラが多く、自分自身がソシャゲの版権デザインを網羅できている自信がないため、そのような版権が出ても気付けない可能性がある。特に商業で使用するにはリスクが高く、自分の手には余る、というのが理由です。

 ただこれは結構前の話で、今はそこそこ改善されているようです。このような理由で素人が最初からnijiを商業で使うのはお勧めしませが、nijiもキャラクターリファレンスなどの機能が増えているため、使いこなせばローカルのような使い方ができると思います。

 そんなわけで、今回は商用可能ライセンスの今風の絵が出せるSDXLアニメ系AIモデル複数を使い分ける事に決定。

2/キャラLoRAを作成

 LoRAとは、画像を数十~数百枚追加学習するだけで、大規模な画像生成AIに追加学習した分のみの画風・デザインの絵を生成できるように適応させる技術です。これにより、少ない学習データでも、AIがそのキャラクターを理解し、新しいポーズや表情で描けるようになります。(※Claude 3 Opusによる要約)

 キャラをSDXLで安定して生成するため、前回の漫画からキャラを抜き出し、浦AI太郎と亀のLoRAを作りました。油絵の画風は反映したくなかったため、白黒画像のみで学習しています。浦AI太郎は13枚、亀は15枚で学習しました。

 こちらの画像を学習して浦AI太郎LoRAを作り…

 できあがった浦AI太郎LoRAを使用して生成されたのが下図です。完全に同じキャラが出るとはいきませんが、似た特徴と画風が出やすくなります。

 無許可で個人作家さんの画像を集中学習するなど、悪いイメージがつきがちなLoRAですが、正しく使えばAIの安全な運用を助けてくれるとても便利なものです。

 例えば自分の絵のみで学習したLoRAを使えば、生成画像が自分の絵やデザインに寄り、大規模画像AIモデルをそのまま使用するより、著作権を侵害する恐れのある絵が生成される確率(故意に出そうとしなければ元々かなり低い)が大幅に減るでしょう。悪い面だけでなく良い面も検証し、画像AIの安全な活用に繋げたいです。

 

(次ページ:漫画に使う画像を生成)

 
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