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日本の半導体メーカーが開発協力に名乗りを上げた次世代Esperanto ET-SoC AIプロセッサーの昨今

2024年06月03日 12時00分更新

ET-SoC-2は予定通りなら2025年後半にサンプル出荷開始
次世代のET-SoC-3は2026年後半出荷とのことだが間に合うのか?

 さてここからが将来製品のロードマップである。ET-SoC-1はチップ内にすべての機能を搭載しており、ここにはPCIeやメモリーコントローラーなども含まれていたが、ET-SoC-2以降はすべてチップレットになり、I/O類やメモリーコントローラーなどは外部のチップレット任せとなる。

ET-SoC-2では倍どころではない数字になっているが、これは2GHz動作の場合の数字だからで、実際にはもっと低い。ET-SoC-1の方も動作周波数はずっと低めである

 ET-SoC-1では1088個だったET-Minionが、ET-SoC-2ではチップレット1個あたり256個になる計算で、ほぼ4分の1に減るわけだが、性能は4倍になるから「同じ動作周波数ならば」性能は同等と言う計算だ。

 ちなみに上の画像で示すように、ET-SoC-2は9クラスター(うち有効なのが8)、ET-SoC-3は16クラスターとなる。クラスター内部に関してはET-SoC-2とET-SoC-3で基本的には同じ、という話であった。ただET-SoC-2は12個のDie-to-Die I/Fを持つ一方、ET-SoC-3は16個となる。

ET-SoC-2は12個のDie-to-Die I/Fを持つ。このD2D I/Fがどこにつながるのかがはっきりわからないが、おそらくクラスター同士をつなぐNoC(Network on Chip)に接続されるのだろう

ET-SoC-3では規模が単純に倍になる

 Die-to-Die I/FはUCIeを利用しており、転送速度は32Gbpsとのこと。0.2~0.3pJ/bitで、1Tbitのリンクでも消費電力は0.5W程度との試算が出ている。

1GHz動作だと4nmが2.2TFlops/W。ET-SoC-2が1GHzで65.5TFlopsなので、消費電力はおおむね30W程になる計算だ。ET-SoC-2は133.1TFlopsだが、こちらは8TFlops/Wになるから消費電力は16W強まで落ちる

 気になる動作周波数と消費電力であるが、推定で言えば1GHz動作が4nmで440mV、2nmなら250mV程度で可能になる、としている。また2GHz動作ではそれぞれ650mV/350mVということで、この2GHzの数字はわりと普通で、通常の4nmよりやや低い程度であり、ELVのメリットがまるで生かせない。おそらくは1GHz動作が標準的な数字ということになるだろう。

 ただ実際の構成案を見ると、これでもまだ消費電力が多すぎる。実際には350mVあたりまで下げることを想定しているようだ。

ET-SoC-2の構成案。これはあくまでも例であって、まだDRAMコントローラーやPCIe/CXLのチップレットをどこが提供するのかなど未確定の部分も多い

業界的には4nmまで0.75V、3nm以下も0.7Vと電圧が下がらないのに、Esperantoは4nmを350mV、2nmは250mVまで下げることで低消費電力を狙う

 話が前後するが、Esperantoでは第2世代のET-SoC-2を4nm、第3世代のET-SoC-3を2nmで製造することを予定している。このうち第3世代は冒頭で述べたようにRapidusで製造されるのだが、第2世代はどうもSamsungのSF4が利用されるようだ(SF4Eかもしれないが、そこまでは確認できなかった)。

 まだET-SoC-2はテープアウトに至っていない(もうすぐらしい)が、2025年後半にはサンプル出荷を予定している。それはいいのだが、ET-SoC-3は2026年後半のサンプル出荷としている。Rapidusの正式なオペレーション開始は2027年度であることを考えると、さすがにこれは厳しくないだろうか? というのが正直な感想である。

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