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インテルCPUを安全に使える設定?「Intel Baseline Profile」のパフォーマンスを検証【暫定版】

2024年05月15日 17時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

噂の設定も含めて検証する

 Intel Baseline Profileを適用することにより、Coreプロセッサー(第14世代)の性能がどの程度変化するかを検証する。

 今回の検証環境は以下の通りだ。Core i9-14900Kを筆頭にCore i5-14600KまでのK付きモデル3種類と、Core i9-14900の合計4モデルを準備した。IccMAXやPL2の上限適用で性能が下がることは明らかだが、Core i9-14900Kと14900の差がどの程度縮まるのか、も検証していきたい。Secure BootやResizable BAR、メモリー整合性やHDRといった設定は一通りオンとした。

【検証環境】
CPU インテル「Core i9-14900K」
(24コア/32スレッド、最大6GHz)、
インテル「Core i9-14900」
(24コア/32スレッド、最大5.8GHz)、
インテル「Core i7-14700K」
(20コア/28スレッド、最大5.6GHz)、
インテル「Core i5-14600K」
(14コア/20スレッド、最大5.3GHz)
CPUクーラー NZXT「Kraken Elite 360」
(AIO水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「ROG MAXIMUS Z790 HERO」
(Intel Z790、BIOS 2202)
メモリー Micron「CP2K16G56C46U5」
(16GB×2、DDR5-5600動作)
ビデオカード NVIDIA「GeForce RTX 4080 Founders Edition」
ストレージ Micron「CT1000T500SSD8JP」
(1TB M.2 SSD、PCIe 4.0)
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」
(1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2)

 そして、各CPUに対して次のような設定でベンチマークを実施する。Intel Baseline Profileを適用した設定のほかに、一部ネットで噂されている「PL1=125W、PL2=188W」設定を追加したものも準備した。ただ、Core i5-14600Kの場合Intel Baseline Profileを適用するとPL2=181Wとなるので、PL1のみ125W設定とした。

 またCore i9-14900の場合、Intel Baseline Profileからさらに設定を変更した条件ではテストしていない(Intel Baseline Profile適用時点でPL1=65W、PL2=219Wとなる)。

・BIOS 2202の工場出荷設定(ASUS Multicore EnhancementがAuto。MTP無制限)
・ASUSによるIntel Baseline Profileを適用したもの(グラフ内では「IBP」と表記)
・Intel Baseline Profileを適用した上で、PL1=125W、PL2=188Wを適用したもの(「IBP/125/188」表記)

K付きが無印に負けてしまう?

 CPUの馬力検証の定番「CINEBENCH 2024」から検証を始めよう。デフォルトの10分間走らせてスコアーを計測するモードを使用している。

CINEBENCH 2024:CPUのスコアー

 予想通りMTP無制限のスコアーに比べ、Intel Baseline Profileを適用したK付きモデルはとマルチスレッドのスコアーが2~7%低下。そしてさらにPL1/PL2を絞る設定にすることでMTP無制限設定時よりも最大20%以上スコアーが低下する。

 Intel Baseline ProfileかつPL1/PL2を絞った時のスコアー低下率はCore i9-14900Kが最も顕著であり、下のモデルになるほど緩和される。上位モデルほどPL1/PL2の限界を攻める設計になっていたと考えれば妥当な減り方といえる。ただ、PL1/PL2の設定値を絞ってもCore i9-14900KがCore i7-14700KやCore i5-14600Kに負けることはない。このあたりちゃんと序列は護られるようだ。

 ただ、Core i9-14900Kと14900を比較すると、格下のはずのCore i9-14900の方がMTP無制限時のスコアーにおいて14900Kを上回っている点に注目したい。これはBIOS 2202適用後にCore i9-14900だとPL1が4095Wになる設定(前述)の影響と言える。この整合性のない設定が続くとは考えにくいため、今後のBIOSでは是正されるものと思われる。

 だが、Intel Baseline Profileを適用するとPL1/PL2の設定値が65W/212Wに絞られるため、マルチスレッドのスコアーはCore i5-14600Kにかなり近づく。今回試したいずれの設定もインテルの最終的な推奨設定になる保証はないが、もしPL/PL2を253Wより下げる設定が推奨されれば、インテル製CPUに対する評価は大きく変わらざるを得ない。

 次に「Handbrake」を利用したCPUエンコード時間を比較する。再生時間約3分のH.264@60fps動画をプリセットの「Super HQ 1080p30 Surround」でMP4形式にエンコードする時間、およびその際のフレームレート(1秒あたりに処理できるフレーム数)を計測する。

Handbrake:「Super HQ 1080p30 Surround」を利用したエンコード時間

Handbrake:エンコード時のフレームレート

 設定を変えるほどに徐々にエンコード速度が遅く、フレームレートも落ちてくるのはCINEBENCH 2024と同傾向だ。CINEBENCH 2024におけるCore i9-14900の大金星がHandbrakeでは発生していないが、それでも無印とK付きがほぼ変わらない時間で処理を終えている点は注目に値する。

 ただ、Core i9-14900はIntel Baseline Profileを適用することでCore i5-14600K並の性能に落ち込んでしまうことがここまでの検証から明らかになった。Core i9-14900はKなしなのでIntel Baseline Profile(またはそれに準ずる緩和策)を適用する必要性がない、となればK付きモデルの価値はがた落ち(倍率アンロックとわずかなクロック差のみ)だ。

 また、Intel Baseline Profileを適用する必要性があるならば、KなしモデルはCore i9/i7/i5のブランディングを破壊してしまう程の大幅な性能減は避けられない。この矛盾をどう解決するのか、それとも安定性確保という建前の下で矛盾は無視されるのかは謎である。

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