週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

インテルCPUを安全に使える設定?「Intel Baseline Profile」のパフォーマンスを検証【暫定版】

2024年05月15日 17時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集● ジサトラユージ/ASCII

「Intel Baseline Profile」によるパフォーマンスの違いを検証する

 インテル製CPUは複数のブースト機能(Turbo Boost/TBM 3.0/TVB)を利用してクロックを引き上げることでパフォーマンスを出すよう設計されているが、そのブーストをどの程度維持できるかというパラメーターがある。第12世代のインテル Coreプロセッサー以降はPBP(Processor Base Power)やMTP(Maximum Turbo Power)と呼ばれるものであるが、マザーボードのBIOS設定内ではそれぞれPL1、PL2とも呼ばれている。

 インテルの公式スペックではPBP (PL1)<MTP (PL2)となっているが、現実のマザーボード、特にパフォーマンス志向の強いZ系チップセット(Z690/Z790)を搭載したモデルではPBP=MTPが推奨値となった。

 しかしこれまでの慣例から、実際のマザーボードではMTPは実質無制限(4096W)扱いで出荷されることが慣例化している。MTPの定格値を越えてアクセルをまだ踏めるから引き上げれば性能も上がってWin-Winだ、という暗黙のルールがあったわけだ。ただ、全てのマザーボードがMTP無制限で出荷されているわけではないし、だれもこの設定を強要していない、という事は強調しておく。

インテルの資料より抜粋。第12世代よりKつきモデルにおいては、PBP=MTP運用ができるようにすることが推奨になった。だが、実際はMTPをもっと盛っても動作し性能も上がるため、MTPは無制限に

インテル公式(https://ark.intel.com/)に掲載されているCore i9-14900Kのスペック。PBP 125W、MTP 253Wであると表記されているが、実際の運用でこれに準拠しているケースは(筆者が観測する限り)非常に少ない

 今年に入りCore i9-13900KやCore i9-14900Kといった高クロックモデルを使用しているユーザーからゲームが落ちるなどの不具合報告がネット上に増えてきた。これに監視インテルも調査を行い、以下のような「暫定発表」がドイツメディア(igor'sLAB)に掲載された。

igor'sLABに掲載されたインテルの暫定発表(原文:https://www.igorslab.de/intel-veroeffentlicht-das-13th-and-14th-generation-k-sku-processor-instability-issue-update/から抜粋)

●根本的な原因は特定されていない

●不具合の出た環境(インテル 600/700シリーズのマザーボード)において、CPUが高電圧・高クロック環境に長時間さらされることを制限する保護機能が無効にされている
・Current Excursion Protection (CEP)の無効化
・IccMAX Unlimited bitの有効化
・Thermal Velocity Boost (TVB)/Enhanced Thermal Velocity Boost (eTVB)の無効化
・Cステートの無効化
・電源プラン「究極のパフォーマンス」の使用
・PL1/PL2をインテルが定めた推奨制限を超えた値にしている

●インテルはシステムおよびマザーボードの製造元に対し、インテルの推奨設定に一致するデフォルトBIOSプロファイルをエンドユーザーに届けることを要請している
・インテルはデフォルトBIOS設定がインテルの推奨設定内で動作するようにすることを強く推奨する
・インテルはロック解除やOC機能の利用を警告する機能を実装することを強く推奨する

※暫定発表の詳細は原文を参照のこと

 マザーメーカーがインテルの推奨値を使わず、性能を引き出すための設定を先鋭化してきた点に一因がある、という主張とも読み取れる。前述のPL1=MTPやMTP無制限設定、そして先頃“Kなしモデルの性能向上”として出てきたBIOS(CEPが無効化されている)、さらにはCPUの電力・電圧制御もOC向けにカスタマイズして出荷するといった要素も裏目に出ているようだ。

 そしてこの問題の厄介な所は、すぐには顕在化しないということだ。最初はMTP無制限で問題なく動いていても、長期間運用し始めると発生し、CPU交換で改善する。つまり過酷な状況にCPUを曝露し続けることで、CPUが劣化してしまうことが示唆されている。

 こうした背景を受け、GIGABYTE/ASRock/ASUSは「Intel Baseline Profile」設定を盛り込んだBIOSをリリースし始めた。MSIはBIOSをリリースしていないものの、Intel Baseline Profileにするためのガイド(https://www.msi.com/blog/improving-gaming-stability-for-intel-core-i9-13900k-and-core-i9-14900k)を掲載している。どの手法においてもCPUをよりマイルドな状態で運用する。根本原因が判明するまで、とりあえずこれで様子をみろ、という事のようだ。

編集部注:なお、インテルは「Intel Baseline Profile」の使用を推奨しているわけではないという報道も一部見られます。また、インテルはこの問題の最終調査結果を5月中に発表するという報道もなされています。その詳細が明らかになった場合は、改めて記事などでフォローする予定です。(2024/5/23 10:55追記)

 前振りが長くなったが、本稿ではこのIntel Baseline ProfileがCore i9-14900Kをはじめとする第14世代K付きモデルの評価にどのような影響を及ぼすのだろうか? という点を検証する。なお、インテルが最終的に出すであろう策とは異なる結論に導く可能性があることは承知の上で本稿を執筆している。タイトルに【暫定】とあるのはこのためだ。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事