ファーウェイが米国のトップレベルの大学の研究に資金を出していることが明らかになった。米国でのファーウェイは出入禁止と言えるほどの状態にあり、一部の大学は同社との共同研究を停止している。では、どういう形で出資しているのだろうか?
研究開発も雇用もファーウェイ頼みだった欧州
2018年冬、英エジンバラ大学に行った。仮想通貨のイベントだったのだが、驚いたことは2つ。ギリシャからの留学生が多いこと、ファーウェイが同大学に共同ラボを持つなど、積極的に出資していることだった。ギリシャからの留学生は、彼/彼女たちと話すうちに同国の経済危機から仮想通貨に注目が集まったのだと納得した。同時にファーウェイはここにもいるのか、と思った記憶がある。
研究資金はどの国の研究者、大学にとっても重要な課題だ。特に欧州は潤沢に資金が集まる仕組みがない。エジンバラに行った数年前、ドイツ・ミュンヘンでファーウェイが開催したイベントで、同社がいかに地元の研究活動を支援しているのかという話を聞いた。そのときに一緒だった欧州の記者は、「ファーウェイは研究資金や雇用をしてくれる。欧州にはそんな資金力がある企業はないから」と自嘲気味に話していたことを覚えている。
エジンバラ訪問から1〜2年でファーウェイと西側諸国との関係は急速に悪化した。英国の例では、米国とファーウェイの問題が表面化し始めた2019年、名門オックスフォード大学がファーウェイからの研究費を受け付けないことを発表した。もう一つの名門、ケンブリッジ大学は昨年末、2016年からの合計でファーウェイから2600万ポンド(50億3000万円)以上を受け取っていることがわかり、話題となった。
EUが展開する研究開発プロジェクトへの関与も問題となっている。EUが2021年から2027年までHorizon Europeとして展開するR&Dプログラムでファーウェイからの研究費が含まれていた。Horizonには6Gなどの研究が含まれる。
光・フォトニクス技術学会のOpticaのコンペに
ファーウェイが出資
さて本題に入ろう。ファーウェイが米国の大学などが進めている研究に出資しているという報道は、5月2日にBloombergが発信したものだ(https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-05-02/huawei-secretly-backs-us-based-research-with-millions-in-prizes-through-dc-group)。
ファーウェイと米国はよく知られているように、同社向けに米国の先端技術を用いた製品を輸出することを禁止している状態だ。そのファーウェイが、どのようにして米国の大学の研究に出資しているのか。Bloombergによると、ファーウェイはワシントンの独立研究財団(Optica Foundation)を通じて、研究のコンペの賞金を提供していたのだという。
Optica FoundationはOpticaの基金だ。Opticaはその名前から推測できるように、光やフォトニクス技術の進化、応用、普及などを目的とした学会で、設立は1916年。それまでOSA(アメリカ光学会)と呼ばれていたが、2021年に名称変更した。
ファーウェイが関与しているコンペは「Optica Foundation Challenge」。フォトニクス技術を使っていることなどが条件で、今年は選ばれた10の研究者にそれぞれ10万ドルの研究資金が授与される。合計で100万ドルだ。ちなみに、今年のChallengeは5月21日が締切。まさに応募受付中だ。
Bloombergが入手した内部文書から、ファーウェイは2022年から、その唯一の資金提供者になっていることがわかった。コンペなので世界中の科学者から研究プロジェクトの応募があり、ファーウェイは出資者としてその情報にアクセスできる。
2023年の10人の受賞者の所属校を見ると、南カリフォルニア大学、ハーバード大学、ヴァンダービルト大学と米国の3つの大学、2つのカナダの大学、ドイツ、フランス、コロンビア、ペルー、香港からそれぞれ1大学となっている。
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