週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

EVなのにドリフト!? 変速ショックもあるヒョンデ「IONIQ 5N」に新 唯も興奮!

2024年05月04日 15時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) モデル●新 唯(@arata_yui_)編集●ASCII

ヒョンデ

ヒョンデ/IONIQ 5N(900万円前後を予定)

 今夏、我が国に「BEVの黒船」第2波がやってきます。そのスポーツモデルはやけどするほど熱く、BEVの可能性と方向性のひとつを示していました。ご紹介しましょう、ヒョンデ「IONIQ 5N」です。価格は約900万円と高級車クラスですが、なぜこの価格になったのでしょうか。

韓国生まれドイツ育ち、速そうなヤツはだいたい友達「IONIQ 5N」

 「IONIQ 5Nって、デカいSUVでしょ? そのスポーツモデルって何?」。誰もが最初そう思うことでしょう。筆者も最初「どうせ大して変わらないでしょ?」とタカをくくって、メディア試乗会の会場へ。

ヒョンデ

JooN Park Vice President Head of N Brand Management Group

 試乗会場では、この日のために来日したヒョンデのNブランドグループのトップであるJooN Parkさんがお出迎え。クルマのレビューの前に、「Nブランドとは何か?」というところから話を進めましょう。

 ヒョンデの高性能モデルとして、Nブランドが誕生したのは2012年頃のこと。グローバルR&Dセンターがある「ナムヤン(南陽)」と、Nモデルの走行性能を評価する技術研究所があるドイツのニュルブルクリンク(Nürburgring)の頭文字が由来になります。「N」のロゴは、道路やサーキットのS字カーブをモチーフにされているのだとか。

ヒョンデ

ラリージャパン2023の会場の様子。手前にヒョンデのブースがある

 N部門は、モータースポーツ参戦と高性能車の開発がメイン。モータースポーツはWRCのトップカテゴリー、Rally 1に参戦中で、昨年愛知県で行われたラリージャパン2023でも、トヨタスタジアムの入り口に大きなブースを展開していたのは記憶に新しいところです。

 世界的にスポーツモデルの開発やモータースポーツ活動は、メルセデスならAMG、BMWならBMW Mモータースポーツ、ルノーならアルピーヌというようにグループ子会社が行なうのがトレンド。ヒョンデの場合も似たように、子会社のヒョンデ・モータースポーツ有限会社(Hyundai Motorsport GmbH)がモータースポーツ活動を行ない、そこで得た知見と技術をNブランドに注いでいるのです。

ヒョンデ

Nブランドの構成

 Nブランドの商品構成は、モータースポーツをトップとして、その技術を市販車に落とし込むためのローリングラボというコンセプトカー作成、次にハイパフォーマンスのNグレード、Nグレードの入り口といえるNライン、そして一般車というピラミッドになっています。今回紹介するIONIQ 5Nは、Nグレードに属します。

ヒョンデ

IONIQ 5Nのパフォーマンス

 まずはIONIQ 5Nの概要について。四輪駆動で最高出力は650PS、0-100加速は3.4秒、最高速度は260km/hが公称値。日本で販売している市販のIONIQ 5の最高出力はフロントモーター95PS、リアモーター210PSなので、まったくの別物! 「どうせ大して変わらないでしょ?」とタカをくくっていたことを猛省したのでした。

ヒョンデ

 IONIQ 5Nは、モータースポーツ(WRC)由来の四輪駆動技術によるコーナーリング性能、サーキットで長時間走行できるというバッテリー技術、日常での扱いやすさがセールスポイントです。

ヒョンデ

韓国ではIONIQQ 5Nのレースが開催されているのだそう!

 驚いたのは、IONIQ 5Nのカップカーを製造し、ワンメイクのEVレースを開催していること! BEVのモータースポーツというとフォーミュラEが思い浮かびますが、市販車で行なうのは聞いたことがありません。

ヒョンデ

 「バッテリーの熱対策は?」とか「モーターが熱ダレしないの?」とか色々と課題が頭をよぎるわけですが、Nの技術チームはこれを解決しているとのこと。さらに予選用といえる「スプリントモード」と、レース用の「エンデュランスモード」を用意し、細かく調整をしているのだそうです。IONIQ 5Nは真の「サーキット走行もできるBEV」と語気を強めにアピールしていました。

ヒョンデ

 「BEVでモータースポーツ走行をする」にあたり、ヒョンデはワンペダル動作を提案。強烈な回生ブレーキをかけるとともに荷重移動をするというから驚きです。その制動量は一般道で急ブレーキをかけた状態に近い0.6G! もちろん回生量を任意で設定できます。

ヒョンデ

シャーシを補強やステアリングのギア比を変更

ヒョンデ

サスペンションを変更。車高も前が15mm、リア20mmダウン

 サーキット走行を視野に入れていることから、車体の強化をはじめ、ほぼすべての領域で再設計。サスペンションの取り付け方法を変え、可変ダンパーを最適化。最低地上高をダウンさせるなど、その範囲は留まるところを知りません。

ヒョンデ

 バッテリーにも手が加えられ、エネルギー密度を上げたほか、冷却システムも刷新。安全性も高められているとのことで、「ココまでやるのか?」と、いい意味で呆れます。

ヒョンデ

 いい意味で呆れたのは、これだけではありません。「単なる速さ」ではなく「クルマとしての楽しさ」も併せて追及しているのです。それは何かというと「音」と「振動」。車両の内外にスピーカーを取り付けて、アクセル開度に合わせてエンジン車のような音、EVレーシングカーのような音、戦闘機のような音の3種類を用意。

 さらにシフトチェンジ時のショックを、回生ブレーキを使って疑似的にシミュレート。よってドライバーは普通のクルマっぽい感覚で運転が楽しめるのです。

ヒョンデ

JooN Park氏

 単なるSUVのスポーツグレードとどまらない改変が行なわれたIONIQ 5N。JooN Parkさんは「単なる速いクルマだけでなく、運転の楽しさを提供したいんです」と、その目的を語ります。そして「電気自動車はツマラナイ、という声を払拭したいんです。電気だからこそできる、新しいクルマの楽しみを提案したい」とも。その想いは熱く、大きな声と身振りを交えながら「運転の楽しさに国境も言葉も関係ありません。クルマ好きなら、楽しいという共通の言葉で伝わるハズです」というではありませんか。

ヒョンデ

 その想いは日本法人にもいえるようで、日本国内で何度もテストを重ねて日本向けに調整をしたのだそう。日本独自の路面に合わせたと自信をみせていました。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事