IDEの仕様をCOMPAQが開示
普及を促進するも、独自に拡張するものが出てくる
IDEはまずCOMPAQのマシンに搭載されることになったわけだが、COMPAQはConnerだけからHDDを調達したわけではなく、ほかのHDDメーカーからも同じ仕様のHDDを調達している。これにともないIDEの仕様がCOMPAQからHDDメーカーに開示されることになった。
この結果として他のメーカーもIDEのHDDを手掛けるようになるわけだが、そうなると独自拡張を施すものが出てくる。HOST 16 BIT I/Oが怪しいというのはまさにこのあたりである。IDEは基本16bitでの転送で、これはIDEのコントローラーが16bit幅のISAカードなので、これに合わせているわけだ。
ただISAには8bitのXT互換動作モードもある。実際8bit幅のIDEコントローラーカードも実在している。ただこうなると、16bitでデータを受け取ってしまうとコントローラーカード側でこれを2回の8bit転送に分割する(逆に書き込みの際は2回の8bit転送をまとめて16bit幅にしてHDDに送り出す)必要がある。
これは面倒なので、8bitのIDEコントローラーを使う場合は、HDDからの転送も8bitに制限することで帯域を合わせようという仕組みで使われるのがHOST 16 BIT I/Oという信号である。この信号がない場合、HDDとのやりとりはDD0~DD7までの8bit幅で行なわれ、DD8~DD15は未使用になる。
確かCOMPAQのIDEコントローラーカードは全部16bit ISAだった記憶があるので、この機能を持ち込んだのはCOMPAQ以外ではいかと筆者は疑っている。DMAもそうで、これを利用するとコントローラーカードはISAバスに対してDMA転送でデータの送受信を行なう。このため、600ナノ秒よりもっと短い時間で転送が可能であり、HDDの転送速度をもっと引き上げることが可能になった。
ただこれも確かCOMPAQの当初のコントローラーカードにはなかった機能である。結果、多くのメーカーがIDEを独自拡張した製品(コントローラーカードとHDDの両方)を出すようになり、混乱し始めた。そこでANSIでこのIDEの標準化をしようという機運が高まる。
最終的にこれはANSIで1994年にX3.221-1994として標準化が完了した。先の表は、このX3.221-1994のドラフトから持ってきたものである。X3.221-1994では規格の名前をAT Attachment for Disk Drives、通称ATAと定めた(ATA-1ではない)。
ただし、続く1996年にはANSI X3.279-1996がAT Attachment Interface with Extensions(ATA-2)としており、1997年にはANSI X3.298-1997がAT Attachment-3 Interface(ATA-3)、1998年にはAT Attachment with Packet Interface Extension(ATA/ATAPI-4)と毎年のように新仕様が登場しており、こうした流れから最初のものはATA-1と呼ばれることも多い。
このATAシリーズ、最終的には2009年にANSIの諮問機関であるINCITS(International Committee for Information Technology Standards:情報技術規格国際委員会)からINCITS 452-2009としてATA8-ACS(ATAPI Command Set)がリリースされている。ただ世間的にはその前の2005年に出たATA/ATAPI-7でATA/ATAPIの利用はほぼ終わりになっており、この後はSerial ATAへの移行が進んでいる。
実際製品という観点でも、一部のメーカー(主にMaxtor)くらいしかATA-7を採用したメーカーはく、ほとんどのメーカーは2002年に出たANSI INCITS 361-2002で策定されたATA-6への対応を最後に、SATAへの移行をスタートしている(ATA-8で策定された167MB/秒の転送モードは、コンパクトフラッシュでのみ採用された)。
ただこのATA-X(X:1~8)と言う呼び方はあまり一般的ではなく、EIDE(Enhanced IDE)と呼ぶ方が一般的だった。これは正式名称ではないのだが、こちらの方が通りが良い。ただATA-4以降になると、実際に速度がどの程度かわかりにくくなってきた。それもあってATA-4をUltraATA 33、ATA-5をUltraATA 66、以下UltraATA 100/133などと呼ぶのが一般的になっていた。
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