アメリカの映画スタジオ、コロンビア・ピクチャーズが100周年を迎えた。その長い歴史の中で数多くの作品を生み出してきたが、スタジオの象徴でもある本編前を彩るロゴについて紹介したい。
コロンビア・ピクチャーズは、ハリーとジャックのコーン兄弟と、親友のジョー・ブラントにより1918年に設立した前身の会社から改名して1924年1月10日に創立。1929年に起きた大恐慌の影響を多くの中小映画会社も受けたなか、フランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』(1934年)がアカデミー賞で作品賞、監督賞など主要部門を総なめ。低予算主体のスタートから、アメリカのメジャースタジオの一角へと躍り出ることに。
『戦場にかける橋』(1957年)、『クレイマー、クレイマー』(1979年)、『ガンジー』(1982年)など、これまで計12作品がアカデミー賞最優秀作品賞に輝き、最多受賞数を誇るスタジオとなり、コメディ、ラブストーリーからシリアスなもの、社会問題に切り込んだ先駆的な作品まで、次々と名作を誕生させてきた。
そんな数々の作品のオープニングを飾る“ロゴ”と呼ばれる映像。アメリカの他のスタジオや日本でもどの会社が製作したのかが一目でわかるものとして親しまれているが、コロンビア・ピクチャーズではトーチを持った女性が現れる。その姿はアメリカの自由の女神像に似ていて女神と言われることも多いものの、正式には“コロンビアレディ”という。1989年に日本のソニーに買収され、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのグループ会社となってもコロンビア製作のものはSONYロゴに続いてコロンビアレディのロゴが登場する。
コロンビアレディは何度かモデルチェンジしている。当初はトーチではないものを持っていたり、身につけている布がアメリカ国旗の時代があったり、色が変わっていったり。創立100周年を記念した特設サイトでは、動画で代々のコロンビアレディがまとめられているのでチェックしてみてほしい。
オープニングロゴのなかには、その作品のオリジナル展開を見せるものがある。古くは1950年代の作品からあるのだが、ここではRakuten TVで配信しているものを紹介していこう。
トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスが共演し、地球上に生息するエイリアンを監視する組織のエージェントの活躍を描いた『メン・イン・ブラック』シリーズ。第2作の『メン・イン・ブラック2』(2002年)では、コロンビアレディが持つトーチが最後に劇中に登場する記憶消去のアイテム、ニューラライザーのような光を放ち、続編を待ちわびたファンは歓喜した。監督とキャストを一新した4作目となる『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(2019年)のコロンビアレディは、エージェントたちと同じようにサングラス姿になる。
第91回アカデミー賞長編アニメーション賞に輝いた『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)では、SONYロゴがアップになってピクセルアートのようになるのに続いて、コロンビアレディの体がカラフルやモノクロになったり、アニメになったり、原作コミックを思わせる仕上がりでワクワクする。途中で、1965年の西部劇映画『キャット・バルー』のオープニングロゴでコロンビアレディが変身したアニメで、両手に持った銃をぶっ放すウェスタンスタイルで登場するのも、知っていると一段と楽しい。
人類の大半が人喰いゾンビとなった世界をコメディ要素も交えてロードムービー的に描いた『ゾンビランド』(2010年)の続編『ゾンビランド:ダブルタップ』(2019年)においては、なんとコロンビアレディが襲い掛かってきた2体のゾンビをトーチで思いっきり殴り倒す展開に。満足げにひと息ついて、いつものポーズに戻るのがクスっと笑える。
クエンティン・タランティーノ監督×レオナルド・ディカプリオ×ブラッド・ピットと豪華な組み合わせでヒットした『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)。1969年に起きた女優が巻き込まれた事件をベースにハリウッドの光と闇に迫った同作では、現在主流となっているコロンビアレディがまとった布が青ではなくてピンクで、バックでアナログレコードをかけるときのような音がするなど、どことなく物語の60年代のような雰囲気だ。
そのほか、スマホの中の絵文字の世界を描いた『絵文字の国のジーン』(2017年)では、コロンビアレディをスマホで撮影してその顔に絵文字スタンプを押すというスタイル。小さな青い妖精たちのアニメ映画『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』(2017年)では、実はコロンビアレディが立て看板で、その後ろにいたスマーフ村唯一の女の子スマーフェットが足元にあったキノコをトーチのように掲げてポーズをとる愛らしい姿を見せる。
1分にも満たない描写で、ともすれば見逃してしまいがちなロゴ。でも、その後に始まる映画の世界へと気持ちを誘ってくれるともいえる。定番のものにはスタジオの歴史を、遊び心が加えられたものにはその楽しさを堪能しながら、本編への時間を過ごしてはいかがだろうか。
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