週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

ソリッドなステンレス筐体とK2HDサウンド、iFi audioの「Go bar 剣聖」

2024年04月21日 17時00分更新

 iFi audioのGO bar 剣聖のデモ機を借りて実際に試してみた。2022年に発売された「GO bar」をベースにしたスティック型のUSB DACで、JVCケンウッド(ビクター)の誇る「K2HD」技術を採用している。3月27日に発売されたばかりで、価格は8万5800円。

 K2HD技術とは、ビットの拡張/帯域幅の拡大などによって音源データをリサンプリング/アップスケールする技術だ。切り捨てられていた高い周波数領域を復元をする処理も行われる。

 実機を手に取ってみると、剣聖という文字が刻まれたステンレス製ボディは硬質感があり、オリジナルGo barに比べてるとずっしりとした手応えが感じられる。ボタン配置は同じだが、剣聖ではデジタルフィルターモードに加え、独立した音量プラスボタンでK2HDモードのオン/オフが可能となっている。

 イヤホン端子はバランス駆動用の4.4mm端子と一般的な3.5mm端子の2系統を備えている。逆側(下側)にUSB Type-C端子があり、付属ケーブルを介してAndroid、iPhone、PCなどに接続できる。小型ながらiFi audioの特徴的な技術がほぼ全て搭載されているのも特徴だ。Panasonic OS-CONをはじめとした高級パーツを使用しているのもハイエンドモデルらしいところだ。

 iPhone 15 Pro MaxにUSB Type-Cケーブルで接続した。試聴にはqdcのハイエンドイヤフォンである「White Tiger」を使用した。White Tigerは高感度イヤホンなので、背景にうっすらと残留ノイズが聴こえる。IE Match機能をオンにするとその背景ノイズはすっと消える。このIE Matchは高感度になりがちなマルチBAドライバー機を使う際にとても効果が高い機能だと思う。

 サウンドは純度が高くクリアなiFi audioらしいもので、オリジナルモデルよりも明瞭でS/N感がよく感じられる。透明感があり、ドラムスの鋭いパンチも楽しめる。全体的な音傾向は付帯音が少なく、ニュートラルかつフラットなモニターサウンドだ。

 ジャズヴォーカルとウッドベースだけのシンプルな曲では、ウッドベースのピチカートがとても歯切れよく鮮明に感じられる。音の曖昧さが少ないので響きの力強さもしっかりと伝わってくる。女性ヴォーカルの声は着色感は少ないが、解像力が高いために声が艶やかに感じられる。

 K2HD機能をオンにして曲の同じ部分を聴き比べてみると、細部の厚みが増して音楽全体がより豊かになるように感じられる。また、多少音圧が増すような重みも音に加わる。音質が一段グレードアップしたかのようだ。逆にK2HD機能をオフにすると、音楽全体が軽く薄くなるように感じられる。K2HDの効果は聴覚的にもかなり大きい。

 特にストリーミングの圧縮音源を聴いている時の効果が高いように感じる。元の音源の品質が低い曲を高性能イヤホンで聴くと甘く濁った音になりがちだが、K2HD機能によって音の透明感が上がり、すっきりとした端正な音になる。これをオフにすると、音質の低下がロスレス音源よりも大きいように感じられる。非可逆圧縮の音源の方がK2HD機能の効果が高いと感じられる。

 iFi audio独自の「XBass」機能をオンにすると、低音が増すが誇張感はそう強くない。低音を強調する機能は他社にも多くあるが、ほとんどはデジタル領域で調整するものだ。iFi audioのXBassはアナログ的に低音を強調するのがポイントで、Go bar 剣聖では、自然に低音が増すその効果がよく分かる。素の音は正確なモニター基調なので、曲によってはXBass機能で自然に低音を強調することで、より心地よいものになる。

 オリジナルのGO barよりもS/N感など、基本的な音質が改善され、新機能K2HDによって音の厚みや重みが加えられるという2点が大きな改良点のように感じられる。また、IE MatchやXBassなどiFi audioオリジナルの機能も効果的だ。スティック型のUSB DACでハイエンドタイプを探しているユーザーに勧めたい製品だ。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事