唯一の新たな取り組みは、リサーチセンターの開設
これに対して、唯一、新たな取り組みとして発表されたのが、研究拠点であるマイクロソフトリサーチを、東京に設置することである。
マイクロソフトリサーチは、1991年に、マイクロソフトの基礎研究機関として、本社がある米国ワシントン州レドモンドに設置。その後、英国・ケンブリッジ、インド・バンガロール、米国・ニューヨーク、カナダ・モントリオールなどにも展開している。
アジアでは、中国・北京に、世界3番目の拠点として、1998年にマイクロソフトリサーチアジアを開設。2018年には上海にも拠点を開設している。今回の東京への設置は、マイクロソフトリサーチアジアによって新設されることになる。名称は、マイクロソフトリサーチ東京が有力といえそうだ。
これまでにも、北京の研究拠点に、日本人研究者が在籍していた時期があったほか、日本の大学および学術界とは、過去20年間で200以上の研究テーマを共同研究してきた長年のつながりがある。2023年11月には、マイクロソフトリサーチアジアと東京大学が、東京・本郷の東京大学安田講堂で、「AI Forum 2023」を共同開催し、これをマイクロソフトリサーチアジアの設立25周年記念イベントにひとつに位置づけていたほどだ。 日本初となるマイクロソフトリサーチの東京の拠点は、1年以内に設立されることになりそうで、Embodied AIやロボティクス、Societal AI、ウェルビーイングを中心にした研究活動を行うほか、科学的探究を通じて、日本が直面する社会経済的課題の解決に寄与する分野にもフォーカスするという。
米マイクロソフトでは、「今回の日本への研究拠点の開設は、日本に対する長期的なコミットメントを反映したものである。イノベーションで世界をリードしていく日本のポテンシャルをマイクロソフトが強く信じていることを示した」と述べている。
さらに、研究連携を加速するため、今後5年間で、東京大学、慶應義塾大学、カーネギーメロン大学のAI研究パートナーシップに対して、それぞれ1000万ドル(約15億円)分のリソースを提供することも発表した。
米マイクロソフト エグゼクティブバイスプレジデント 最高技術責任者のケビン・スコット氏は、「マイクロソフトリサーチのグローバルな拠点が日本に拡大し、世界レベルの研究活動が日本の多様な思考や才能にも貢献でき、その恩恵を私たちも受けられる」と述べている。また、東京大学の藤井輝夫総長は、「マイクロソフトリサーチアジアの新たなラボが東京に設置されることに伴い、東京大学とマイクロソフトとの 20 年を超える連携が新たな段階に進む。研究コミュニティのさらなる発展と、優れた人材育成をリードし、ともに歩んでいけることを期待している」とのコメントを発表している。
なお、2023年10月には、世界で 6 拠点目となるイノベーション創出拠点「Microsoft AI Co-Innovation Lab」を神戸市に開設しており、川崎重工業と神戸市との連携により、AI や IoT を活用したイノベーション創出と、産業振興を目指した活動を開始している。こうした本社主導での拠点が、日本国内に相次いで設置されていることも、日本に対するコミットメントの表れといえる。
マイクロソフトの日本への投資が加速しているのは明らかだ。それを岸田首相の訪米にあわせて行われた会談で発表したのは、日本での話題づくりにも大きく寄与したといえる。AI時代における日本市場の重要性を、米マイクロソフト自らが表明した格好だ。
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