4月になったので猫撮影の基本の話をしよう、の第2弾だ。前回(「構える高さを工夫すると猫写真は大きく変わる! 新年度なのであらためて猫の撮り方ノウハウをご紹介」)は、撮るときの”高さ”の話をした。子供を撮るときにしゃがんで子供目線で撮るように、猫を撮るときも高さを意識しようという話。
今回は、”広角と望遠”。多くの人は近くの猫は広角で、遠くの猫は望遠で、みたいにシンプルな使い方から始まってると思う。それはそれでいいんだけど、広角と望遠にはもっといろいろな違いがあるのだ。
同じ猫を顔の大きさがだいたい同じくらいに写るよう、広角と望遠で撮り比べてみた。焦点距離でいうと28mmと70mmだ。スマホのメインカメラと望遠カメラくらいの違いと思っていい。
大きく違うのは2点。ひとつは、猫の顔と体のバランス。広角のほうが顔が大きく見える。遠近感が強く出るからだ。もうひとつは、背景の広さ。これはもっとわかりやすくて、遠くから望遠で撮るよりも、近くから広角で撮ったほうが背景が広く入る。
さらに、もっと望遠の300mm相当で撮った同じ猫がこちら。カメラが違うので「相当」と付いちゃうけど、同じ猫かい? というくらい顔の大きさが違う。
望遠になればなるほど遠近感が薄れるので、結果として顔が小さく、体が大きく写るのだ。
広角だと「顔でけー」と感じるのだけど、望遠になると「顔ちっさ」になる。同じ猫なんだけどね。
もうひとつ、チェックしたいのは顔の形。今度は24mmと90mmで比べてみた。
同じ猫なのに、顔が全然違う。広角のほうが鼻がでかくて、前に出てて面白い顔になる。それが望遠にすると、顔の形がすっきりして美猫っぽい。
広角で近づいて撮ると親しみやすい感じの顔になり、望遠でちょっと離れて撮ると少し客観的でカッコいい感じになる。しかも、望遠は背景が整理されて、どこで撮ったかがわからなくなるのがいい。これなんか超望遠で撮ったのだけど、背景は道路だけですっきりしている。
逆に、広角のよさは背景の広さ。猫がいる風景自体を捉えるのにいい。冒頭写真がそれだ。田舎町で出会った、人懐こい白猫兄弟(だと思う)である。背景がいい感じに入ることで、猫がそこで生きてるーって感じになる。
ただし、注意しなきゃいけないことがある。撮影場所の特定回避だ。猫には猫の事情があるわけで、不用意にそこに猫がいることを知らしめるのはリスクがある。街にいる猫が公的に認められてるならともかく(例えば、尾道とか)、基本的に撮影場所が容易に特定できる写真は避けたい。背景を広めに撮るときは、そこにも気を配るべし。
家の中で撮るときも、背景に注意だ。Amazon箱に入った猫がかわいいと思って撮ったはいいけど、よく見たら宛名ラベルが貼ったままで、拡大したら住所がわかっちゃったとか、そういうのはヤバい。
まあ広角でぐっと寄って面白い写真を撮れるのは室内だけど、部屋は片付けておきましょうねって話だ。
広角から望遠まで、その特性がわかって使いこなせば、猫写真のバリエーションはぐっと広がるのである。
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筆者紹介─荻窪 圭
老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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