ソフトバンクは3月27日、ワイヤレス電力伝送(Wireless Power Transfer、以下「WPT」)の技術を商用環境で検証できる施設「ワイヤレス電力伝送ラボ」(以下「WPTラボ」)の見学会をメディア向けに開催しました。
◆WPTラボは2024年度中に一般公開予定
WPTラボは、2023年12月に東京・江東区のテレコムセンタービル内に設営された施設。まずは、ソフトバンクおよびパートナー企業が開発中の装置やシステムの検証に活用し、2024年度中を目処に、さまざまな企業や団体が気軽に活用できるオープンラボとしての運用を開始される予定です。
WPTには3つの方式があり、ソフトバンクが現在研究を進めているのが「空間伝送型」という方式。この方式では3つの周波数の利用が想定されていますが、WPTラボでは920MHz帯を使用。天井に複数の送電アンテナがされていて、対応デバイスでの受電を検証できる環境が整えられています。
◆完全ワイヤレスでの受電を体験できる
現在は、ソフトバンクとパナソニックホールディングスが共同で開発した、ストラップ型受電装置と温湿度センサーでの検証が進められています。ストラップの部分がアンテナで、受信した電波がRF回路を経由して電源回路に給電される仕組み。見学会では、バッテリーレスで温湿度データが取得するデモンストレーションを披露していました。
920MHzでは、トラッキングデバイス、スマートタグ、電子棚札、各種センサーなどが給電の対象になるとのこと。WPTにはトラッキングデバイス「Tile」に電源回路を組み込んだ試作品も置かれていました。CR2032のような一般的なボタン電池で動くデバイスも検証に用いることができるそうで、アップルのAirTagでの実験も予定しているとのこと。商用モデルでは、二次的なバッテリーを搭載し、ワイヤレスで充電することも想定しているそうです。
920MHzのワイヤレス給電は、アンテナから10m程度の範囲に送電でき、その範囲内であれば、複数台を同時に充電できるとのこと。スマートフォンやスマートウォッチへの充電は難しく、ソフトバンクの長谷川氏によると「ワイヤレスイヤホンがぎりぎりのライン」だそうです。
◆ソフトバンクがWPTに注力する狙いは
新しいプラットフォーム構築をするため
将来的にWPTが普及すると、勝手に充電されないための仕組みが必要になります。あらかじめ登録したデバイスだけが受電できたり、受電の量に応じて課金したり、携帯電話と同じようなプラットフォームを構築する必要が生じます。ソフトバンクがWPTに注力する狙いはそこにあるようです。
ケータイの電波と同じように、電気を受信できる日が近づいているようです。
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